ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

10万円給付に関して今後発生しそうな問題

10万円給付に関して今後発生しそうな実務問題。整理した文章ではなく、個人的な雑感メモです。

 

〇国・自治体に求められること

  • 国)口座名義人が世帯主でなければならないかどうかを確定する
    →Yesなら、その旨を周知徹底して、申請フォームや申請様式上で明記しないと、世帯主以外の名義口座を申請してしまった人が、「この口座ではだめです」と後から言われてしまい、迅速な給付が受けられなくなってしまうし、自治体側の工数が増加する。
    →Noなら、詐取防止対策の検討(世帯員以外の口座にも振り込めるとしたら)
    自治体)上記の周知徹底への協力
  • 国・自治体)世帯主が誰かわからない人への案内方法を確定する。
  • 国)直感的にわかりやすい申請フォームや申請様式にする(大事!)
  • 国)代理人による申請が認められる範囲を確定する(任意代理人も無制限に可能なのか。使者ではなく代理人構成にするのか等)
  • 国)代理権確認方法を確定する
    →世帯員(家族)以外も任意代理人になれるとする場合、詐取防止対策の徹底
    任意代理人の場合は、委任状を要求するか。法定代理人の場合は、自治体側で戸籍を確認するのか等。
    →代理権確認を厳格に市民側に要求しすぎると、「コロナで外出自粛の中、戸籍を取りに市役所に行くのか?」などの問題が発生する恐れ。他方で、代理権確認をルーズにしてしまうと、10万円を他人に詐取されるおそれ。自治体によってこの辺りの運用が違うと良くないので、国として明確にした方が良い。
  • 国)銀行振り込み以外が許される場合の確定
    →銀行口座を持つ支店が遠い場所だったとしても、ATMで引き下ろせるのでは? 

〇関連資料リンク

https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/gyoumukanri_sonota/covid-19/kyufukin.html

https://www.soumu.go.jp/main_content/000683986.pdf

〇銀行口座の名義人が、おそらく世帯主名でなければならないことに関連して

  • まず、口座名義人が世帯主でなければならないことに関して、是非をめぐって、意見が出そう。
  • 世帯主が妻又は夫で、世帯主以外の名義の口座に入金したい場合はダメ。申請書に間違って記入したりマイナポータルで間違って入力すると、申請エラーになって、訂正したりしなくてはならず、住民・自治体側双方の手間と時間がかかる。
    →解決策としては、マイナポータルの場合は、世帯主名義でなければ、申請時にはじく処理をして、「世帯主名義の口座でないといけません」と大きくエラー表示したほうが良い
    →紙申請の場合も、申請書様式のところに、大きく赤字か何かで「世帯主名義の口座でないといけません」と書いておかないといけない
  • 銀行口座名義が旧姓、屋号付き等の場合、入金できないと思われるので、上と同様の対応が必要。
  • 世帯主が誰かわからないという方がいて、住民・自治体側双方の手間と時間に
    →この場合、電話で世帯主を教えてよいか問題が発生する。本人に「うちの世帯主は〇〇ですか?」と聞いてもらい、「Yes/No」だけ答えれば、大体検討はつくはずなので、世帯主名を答えるのではなく、そういう方法を取るとかもあるかも。
    →正式には、住民票を発行してもらい、世帯主を確認してもらうことになる。マイナンバーカードがあればコンビニで取れるが、ないと郵送で住民票の交付申請が発生するので、その案内をしないといけない。
    →世帯主って、今の日本社会で夫婦(+子)の世帯だと、「父親/夫」であることが大多数なのだろうか*1。そうでない場合はごく少数なのか? ひとり親世帯で「母親」しかいない場合は、「母親」になる? 3世帯同居で、家父長制的な考え方から「祖父」が世帯主だったとしても、その祖父がお亡くなりになった後はだれが世帯主になるのか? ひとり世帯はご本人が必ず世帯主か。住基の担当者に聞かないとわからない。検索すればわかるの? 世帯主変更申請をやれば、世帯主は変えられる。

〇申請の仕方がわかりやすいかどうか

  • 容易な操作性が重要。住民はパソコンに慣れている方ばかりではないので、行政手続等のデジタル化にあたって、住民が便利さを実感できるようにするためには、スマホなどでストレスなくマニュアルも読まずに簡単に操作できるかどうかが、非常に重要になる。なんとなくタップしていけば、自分の目的が達成できるぐらいであると、住民から見た利便性が向上する。

  • そのためには、そこまで難しいことが求められるわけではなく、画面デザインや画面遷移を、直感的にわかるようにすることが大事ではないか。デザインを良くして、UXをよくすることが重要だが、費用をかけなくても、例えば、マイナポータル開発担当職員の身近な方に協力していただいて、「今のサイトだと、ここでやり方がわからなくなる」「ここで次の操作をやりたくなくなる」「どこをタップすればよいかわからない」などの生の声を聴いて、それを改善していくという方法も良いのでは。

  • これで、操作が簡単にスマホ等から申請ができるようになれば、「今まで紙で申請してたのってどうなの?」みたいになって、デジタルシフトが進展する契機になることも十分考えられるので、操作性については頑張ってほしい。
  • もちろん、マイナポータルトップ画面等に、大きく「新型コロナウイルス感染症特別定額給付金はこちら」などと書くと思われるが、「コロナ」っていう表記を入れずに「特別定額給付金」とかだけの表記に仮にしてしまうと、申請画面にたどり着けない人が出る可能性もあるので、用語の使い方は、一般市民から見てわかりやすいものにする必要がある。その意味で「ぴったりサービス」も、これが電子申請できるサービスだって、語感からはわからないと思うので、要改善ではないか。

代理人がよくわからない問題

  • どういう場合に「代理人」申請するのかがわからないという問題が、住民・自治体側双方に発生しそう。私もよくわからない。
  • オンライン申請の場合、マイナンバーカードを世帯主が持っていなくて、世帯員が持っている場合には、持っている世帯員が申請するしかないので、「代理」申請になるはず。あとは世帯主もマイナンバーカードを持っているが、マイナポータルの操作などをやりたくないので、やれそうな世帯員にやってもらいたいという場合。これは私としてはよく理解できる。ただ、一般市民にわかりやすく説明をしないと、混乱すると思う。世帯主が誰かわからない問題と、代理申請がわからない問題が絡んで、問い合わせが複数発生しそうな予感。さらにいうと、世帯主の意思の元、ただ手足としてマイナポータルの操作をする場合は、「代理人」ではなく「使者」では? ただマイナンバーカードが世帯員のものだと、さすがに「使者」ではないはず。
  • 郵送できずに、やむを得ず市区町村役場に行く場合は、代理申請になる場合も考えられる。
  • 郵送申請の場合、代理申請になる場合って、どういう場合なのか。郵送の場合で代理申請っていうのは何なのか? 世帯主が住民票住所地にすんでいなくて、世帯員が住民票住所地にすんでいる場合? その場合も、世帯主の意思の元、ただ手足として申請書を記入する代筆の場合は、「代理人」ではなく「使者」との構成も可能? 
  • さらに、代理申請の場合の銀行口座名義人はだれになるのか? 代理人? 世帯主? 意思表示の代理であれば、口座名義は世帯主? ただ受取まで代理することも法的にはできるはずだが、どうするのか?
    ただ、世帯員以外の任意代理人を認める場合に、受取先の銀行口座名義人を任意代理人可としてしまうと、詐欺・詐取などが起きないかも要検討。

 

〇手を挙げた人にしか給付しない問題

  • これは、マイナンバーや、行政手続の話ではなく、政治マターなので、私の領域ではないのでコメントしないが、いろんな意見が出る問題になりそうだと思う。

 

〇オンライン申請と紙申請の順序

  •  経費を削減するためには、オンライン申請(マイナンバーカードでマイナポータルにログインする方式)を受け付けてから、その後、郵送方式の受付(申請書の郵送)をした方が、申請書を郵送する郵送代が削減できます(→過去ブログご参照)。
  • しかしそれでは、オンライン申請を受け付けてから郵送開始になるので、郵送の人にとっては、金銭受取までの時間がある程度かかってしまうことになり、迅速な支援ができません。
  • そこで、現在考えられている手続としては、オンラインと郵送を同時に受け付けていき(マイナポータルのシステム開発の期間によっては郵送の方が受付が早いかも)、ただ、オンライン申請の方が、給付(金銭受取)までの時間を早くする方式のようです。
  • eTaxもオンラインだと、還付金の支払が非常に迅速なので、その方式と同様の考えの用ですね。

 

〇個人的感想

  • マイナポータル未接続団体が多すぎではないか。
  • マイナンバー登録と一緒で、なぜ本人確認書類をコピーしてちょきちょきはさみで切って貼りつけないといけないのか。あの書類様式をいい加減どうにかして!
  • 金融機関の口座を持っていたとして、その口座のある支店がすごく離れている場所でも、ATMから簡単に引き出せるはずでは??

*1:これを是としている意味ではなく、ただ単に現状としてはどうかという意味