1.概要
上記の報道記事、タイトルが誤解を生む表現です。
マイナンバーと口座を紐づける議員立法というと、預貯金口座とマイナンバーの紐づけの完全義務化かと思ってしまいます。
ただ単に、特別定額給付金のために申請した口座情報をマイナンバーに紐づけて、今後の支給の際にも使えるようにするということですね。
それ以外の個人情報って、住所、氏名、性別、生年月日、世帯員情報ですから、すでにマイナンバーと紐づいていますよね(住基情報でしょう?)。だから、今回の法律で新たに紐づくもんじゃないでしょう。
2.課題(自治体間でのやりとり)
(1)今住んでいるところの自治体しか情報を持っていない
でも、今回の口座情報って、各自治体でしか情報持ってないんですよね? 国で持っているわけではないですよね?
次に何らかの給付をする際、今住んでいる自治体から引っ越して別の自治体の住民になっていたら、その新しい引っ越し先の自治体はその人の口座情報を知らないから、自治体間で口座情報をやりとりする必要が出てきます。
(2)口座情報のやりとりの方法は?
まあ、マイナンバーがあれば、「マイナンバー〇番さんの口座情報を教えて」って、2020年4月〇日時点の居住自治体に問い合わせれば、可能ではありますが、そのやりとりをどうやってするのか。2020年4月〇日時点の居住自治体をどうやって調べて、口座情報の授受をどうやってやるのか。
これ、紙でやってたら、やってられないぐらいの件数の可能性あるし、遅いですよね。だからシステムでやるはずですが、今、そういうシステムないですよね?
住基法改正して、本人確認情報の中に口座情報も入れるんでしょうか? 住基ネットで、口座情報をやりとりさせるんですか? それとも情報提供ネットワークシステム?
(3)時間が経過したら、使える口座ではなくなっているかも?
口座情報の保管は永年保管ですか?
例えば、次回の給付が1か月後ならまだいいですけど、例えば10年後20年後だったときに、今回の口座は休眠口座になっている可能性もありますよね? あと、10年後20年後だと今生まれていない人も生まれていて、その人への支給はどうするのか?
未成年者なら親へ支給するとしても、20歳だと未成年者じゃないですよね?
あと、世帯単位はやめてほしいですよね。
今回は世帯主への支給だけど、今の世帯構成と次の給付の際の世帯構成が変わる可能性ありますよね? 例えば、今、親と一緒の世帯に入っている子が、結婚して世帯主になったり、別の世帯の世帯員になったりすると、今の親という世帯主の口座には振り込めないですよね?
今夫婦の家庭が離婚したとしても、世帯主変わりますよね?
あとは、次回の給付が10年後20年後だったときに、銀行が支店統廃合していて、今の支店がなくなっていたり、銀行自体が合併されていたりすることもありますよね。まあ、その場合は、「A支店→C支店へ」とかっていう一括変換ルールを銀行から教えてもらえれば変換できそうですけどね。
(4)口座を変更したいというニーズはどうするのか?
あと、個人個人で、もうその口座使ってないからやめてほしいとか、そういうニーズもありそうですよね。その変更申請は受け付けるのかどうなのか。
3.水町意見(既存口座情報の活用か、個人による口座登録)
(1)迅速な支援のためのやり方
いろいろ考えると、はっきりいって、この議員立法ができても、活用できる可能性は低いので、やめた方がいいのではないでしょうか。
まずは、国民全員がマイナンバーで自分の口座情報を登録できるようにして、その際は支給が早いっていう仕組みを作った方が良いと思います。
あとは、前からブログで書いているように、国や自治体が既に持っている個人の口座情報使った方がずっといいと思います。
年金受給している口座は休眠口座ではないでしょうし、児童手当を受給している口座もそうでしょう。国民年金保険料や国民健康保険料の引き落とししている口座もそうでしょう。
(2)自治体ではなく国でやればいいのでは?
あと、今回思ったのが、なんで自治体で10万円給付することにしたんですかね?
国が一括でやれば、早くできたのでは? だって、すでにブログで書きましたけど、大規模自治体って印刷会社に委託するんですよね?申請内容のチェックもBPOしている場所もきっとありますよね?
だったら、国で一括で印刷会社に委託したほうが早いんじゃないでしょうか?
まあ、リーマンショックの時の定額給付金の場合は、窓口対応が基本だったので、国って窓口が持ってないので、自治体にやってもらうしかないっていうことなんだと思いますが、今回、窓口対応は基本やらないんですよね? 郵送かマイナポータルなら、国で一括で受け付けた方がよくないですか?
国から自治体にお金配る事務も発生しますしね。自治体じゃなくて国でやればよかったのでは?
そもそも、コロナ関連に限らず、全国一律のやり方でよい業務は、各自治体で個別にやるんじゃなくて、全国組織で対応したほうが、業務効率化・コスト削減につながるのでは?おんなじ仕事を2000団体でやるのって、意味ないと思います。で、自治体は地方特性による創意工夫の部分をやってもらった方がよいのでは?
法定受託事務とか自治事務とか、そのあたりについてあまり勉強できていませんが、そもそも地方自治体の業務の在り方っていうのを、もっと機動的にするっていうか、どの自治体でも共通でやっているところは、国がやればいいのでは、又は全国組織でやればいいのでは、と思いますが、ダメなんですかね。
(3)法律論(マイナンバーをきちんと活用して効果が出る法律論にして!)
そもそも、なんで閣法じゃなくて議員立法なのか。閣法だとできないって、内閣府かどこかが言ったんですかね?じゃないと議員立法にならないような気も。
ちゃんと、マイナンバーをきちんと活用して、効果が出るように閣法で作るべきだと思います。
そして、内容も上記のような内容じゃなくてね、9条4項と3項の間に、以下のような条項を足せばいいだけでは??
「災害その他公益上特に必要と認める場合として政令で定めるときは、公益上必要な必要な限度で個人番号を利用することができる。」
っていうか、19条16号と9条5項で対応しろよ!!!、とも思いますけど。
非常に重大な危機的状況なんだし、マイナンバー法が使いづらいとか言ってないで、やるべきことを淡々とやって、マイナンバー法だって、使える条項をちゃんと使えばいいのに! 別表第一に規定するとしても、特別定額給付金って法律の根拠がないんですか? それでも法制局には官邸からの圧力が効くんですよね? だったら別表第一に載せればいいんじゃないですか? つーか、別表第一主務省令がそもそも書きすぎなんですよ。ちゃんと使えるようにしてほしい。それか、19条16号・9条5項でとりあえず対応しろ!、と思っちゃいますけどね。
まあ、恒常的に19条16号っていうのはよくないかもしれませんけど、立法化までの間は当面19条16号にして、その後、私が提案したような9条3項と4項の間の条項でも足せばいいのではと思います。
つーか、立法府と行政府なんですから、法解釈と立法化は、そもそもの仕事なんじゃないんですか?
もっと困った人に迅速な支援ができるよう、もっとちゃんとマイナンバーを使ってほしい。
マイナンバー法もちゃんと正しく理解してほしい。