ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

公的機関の実証事業の改善点

公的機関(国や自治体)の実証事業を見ていて思った要改善点をブログに書いていきます。

 

実証事業は、国ではよく実施されています。新しい取り組みを自治体などが実施する際に、国費等を使って費用面を補助して、優良事例について他自治体への展開等を考えるような事業です。国が国費を使って自治体等をフィールドにして行う実証事業のほか、自治体が自治体予算を使って行う実証事業、研究機関が国費等を使って他団体にて実施する実証事業など様々なものがあります。

 

民間で言えば、研究予算や投資予算を使って新規事業を立ち上げたりすることってあると思うのですが、それとの違いとしては、費用が国費等で賄われることと、費用を払う側(主に国)と新しい取り組みを実施する側(主に自治体等。民間企業の場合もあり得る)が異なる点です。

 

問題① 成果が出なくても、継続的な成果検証が行われづらい

民間が研究予算や投資予算を使って新規事業を立ち上げた場合、その成果はそれなりに厳しく問われると思います。今後何年間で売り上げいくらとか、営業効果があるのか等々。

それに対して、公的機関の実証事業の場合、成果報告書は提出されるし、成果報告会が開催されることも多いですが、実際問題、あまり厳しくは検証されない場合がそこそこあります。

もちろん新しい取り組みなのでうまくいかない場合も多いと思いますが、そうは言ってもレベル感がいろいろあり、「え?これでこの金額と期間使ったの?」というようなかなりのレベル*1のものが見られる場合もあります。それでも特に検証はなしというか、「良かったね、そうかそうか、シャンシャン」で終わりがちです。

結局、実証事業の公募があって、選考があって、選ばれたら、その金額を満額そのままもらえるわけですね。金額だけではなく、人事評価とかにも響かないわけです。そうすると、選ばれてさえしまえば、おざなりにやってしまう実証事業もなくはないのですね(良くない話ですが)。やっぱり大事な国費等を使っているわけですから、あまりにも「え?これでこの金額と期間使ったの?」というような低次元のものと、「すごい成果だ!」という次元のものが、ほぼ同じ国費等をもらえるっていうのもおかしな話で。

選考をちゃんとやるべきですが、そのほかにも、成果に応じた加算金額や成果に応じたインセンティブを付与するといった、成果主義も加味した方がよいのではないでしょうか。

 

まあ、それは実証事業だけじゃなくて、国の取り組み全般もそうかもしれません。もちろん民間と違ってすべてがすべて成果を観念できるのかはわかりませんが、公的機関がソフホーズコルホーズになってしまってはどうしようもないので、公的機関がお金を使ったり、人を使ったりしたことで、どういう効果があったのか、その効果(=社会にどう役立ったか)によって、公的機関・労働者側にインセンティブを付与するような取り組みがあった方が良いように思います(良い取り組みには次年度以降の予算を加算する、良い取り組みをした人の人事評価を上げる、良い取り組みをした企業に公共調達上の加算点等をつける等)。

 

問題② 1年間の実証と言いながら期間が短すぎる

1年間あれば、そこそこのことができるように思いますが、実証あるあるで、期間が短すぎるのです。

実証は定期的にやるわけですから、年度初めの4月から契約できるようにすればいいのに、上期はなんとなく準備的なことをやって、実際の契約は秋冬とかで、実際の作業期間は1~3か月なんていうものも見られなくはありません。

さすがに作業期間が1~3か月じゃ、大したことはできません。もっとちゃんと何月までに誰が何をやるという計画を決めて、実際の作業期間を長くとるような改善が必要でしょう。

公共発注もそうですね。年度ぎりぎりになって、秋冬の発注で、作業期間が1~3か月なんていうと、大した成果物が出ませんので。

 

このブログに書いたような正論をいうと、関係各所から嫌われるのですね。嫌なこと言ってますもんね、私。

でも、やっぱり公僕なわけで、税金で事業をやっている以上、もう少し効果検証とか期間をきちんととるとかやっていくべきだと思い、私としてはこういうことを言っていくべきだと思って言っていますが、これを言うことで私自身は他人に嫌われて損をして、なんら得をしないという。これを言ったところで、誰も私の言うとおりに改善なんてしてくれないから、納税者として得っていう言い方も変ですが、そういうものもなく、仕事上は他人に嫌われてマイナスしかないし、なんら得はないという。

こういうことをやっているから、私はだめなんでしょうねえ。最近、本当に嫌になります。

*1:大変失礼で恐縮ですが、高レベルではなくあまりに低レベルという意味です。