ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

マイナンバー法改正概要

第204回通常国会に提出されている、マイナンバー法改正案等の概要

 

 

1,公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案

概要と水町感想
  • 番号法改正というよりも、政策の中身は、「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」に規定されている。実効性はない法律だろう。コロナでマイナンバーが役にたたなかったわけで、それを役立たせるよう改善するための法案とは思えない。法案作れば、「やった感」は出るかもしれないけど、結局、スピーディーに困っている人を支援するために、どうあるべきかという議論がなされていないと感じる。
  • 個人は、公的給付の受取口座を登録することが「できる」(法3条1項)。
    →水町コメント:義務ではなく、任意。しかも希望制。
  • 登録は、銀行口座番号等と個人番号を内閣総理大臣に申請して行う(法3条2・3項)。変更申請も可能(法4条)。抹消申請も可能(法7条)。
    →水町コメント:おそらくマイナポータル経由か? こういっちゃ悪いが、法文の書き方がイケてない。変に「公的給付支給等口座登録簿は、その全部を磁気ディスクをもって調製する」なんて書く必要ある? デジタルでやるって書きたかったんだろうけど、電子情報処理組織を使用して云々といった普通の書きぶりでいいのでは?紙登録も受け付けたかったからってこと?「その全部を磁気ディスクをもって調製する」って、書き方がイケてないと思うのだけれども。まあ用例見てないからなんともいえないけど、用例上仕方ないのかな。
  • 行政機関、独立行政法人等、地方公共団体、地方独法、地方公共団体情報システム機構、情報提供ネットワークシステムを使う人(情報照会者及び情報提供者)が、他人の口座番号を知っている時等は、その他人の同意があれば、内閣総理大臣に他人の口座番号を教えることができる(法5条1項)。
    →水町コメント:同意制なんですが、実際問題として、どのように同意を取得するつもりなのか?
  • 希望者個人による登録申請、変更申請、修正届出は、政府が自分でやるだけではなく、金融機関に委託できる(法8条1項)。
    →水町コメント:金融機関窓口で、下の方に書いた「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案」に基づく届け出と同時に、公的給付を受けるための口座登録も、一緒にやってもらおうっていう話? 金融機関、結構大変じゃないか?
  • 預金保険機構は、政府と金融機関の連絡をやったり、個人番号の確認業務をやったりする(法12条1項)。
    →水町コメント:下の方に書いた「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案」と合わせて、番号関連を預金保険機構にやってもらおうっていう改正だろうけど、国家公務員法上の守秘義務を負っている国家公務員の方でやった方がよいのでは、という議論もあるのでは? 法律確認してないけど、預保も守秘義務が法律上あるのかな。国家による管理を避けるという意味で預金保険機構がやるのか? でもどうせ、行政機関はマイナンバーを利用するわけだし。国の省力化??? 国は預金保険機構にお金を払うらしい(法15条1項)。
  • 口座等に変更や誤りがあったときは、届出する義務が個人にかかる(法6条1項)
    →水町コメント:現実問題、届出義務の履行が徹底されるとは思えない。こういう実効性に乏しい義務をかけるってどうなの?努力義務にしておいた方が立法としては良いのでは?
  • 行政機関等(行政機関、地方公共団体独立行政法人等、地方独法、J-LIS、情報提供ネットワークシステムにつながる人)は、公的給付の支給等(公的給付、一定の年金給付、貸付、税や保険料等の徴収金の還付金)で必要があれば、内閣総理大臣から口座情報の提供を受けられる(法9条)。
  • 行政機関は、マイナンバーを使って、給付要件の判定をしたりすることが可能になる(法10条1項)。
    対象は、特定公的給付に限定。
    特定公的給付とは、①個別の法律の規定によらない公的給付のうち、②国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある災害若しくは感染症が発生した場合に支給されるもの又は経済事情の急激な変動による影響を緩和するために支給されるものとして内閣総理大臣が指定するもののこと。
    →水町コメント:マイナンバー法9条改正をした方が良いと思いますが、この法律でマイナンバーを公的給付のために利用できるとしたということですね。でもこれだと、災害が起こっても、給付のためにしかマイナンバーが使えず、援助とか避難とかには使えないので、やはり私が提案している通り、マイナンバー法9条の改正の方が良いのでは?
  • 「公的給付の支給等」の定義が謎ではある。2条2項1号は、かなり幅広い給付を言っていて、2号は年金?(これに該当するものは具体的にどのような年金か?)、3号は貸付、4号は税の還付金と過誤給付金。
  • 個人番号利用事務・情報提供ネットワークの利用のために、番号法は以下の改正をするのみ。
  • 別表第一・第二改正(附則8条)
    別表第一・第二改正(附則9条)
  • 番号法改正)施行日は公布日、ただし附則9条は2年後
国会における主な議論
  • ○岸本委員 あくまでもこの法律案では預金者の付番の申出は任意であります。預貯金者がマイナンバーを付番した口座ができるわけですけれども、一方で、いや、もうやはり私はマイナンバーにひもづけるのは嫌だと思ったときに、付番の取消しを希望する場合も出てくるかもしれません。そのときに、どうやったら取消しができるのかという取消し手続について、この法律案には何も条文がございません。任意で登録できる、取り消すときはどうするんだ、これがありません。
     EUのGDPR、一般データ保護原則では、あくまでも自己情報コントロール権ということがうたわれております。私どもの同僚議員もこの審議の中で自己情報コントロール権については随分と質疑があったと考えております。とても大事なことです。
     附帯決議等々でも、与野党でいろいろとせめぎ合いがありましたけれども、この自己情報コントロール権の観点から考えた場合にこの点をどうお考えになるのか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

    ○平井国務大臣 先生にはいつも大変鋭い御指摘をいただきまして、ありがとうございます。
     本法律案では、個人番号の取得に当たって、預貯金者の意思を適切に確認するため、個人情報保護法において一般的に求められる利用目的の本人通知又は公表にとどまらず、預貯金付番を行った場合の利用目的を詳細に説明することを、具体的な説明事項を列挙をして規定しております。
     一方、登録を受けた個人番号の取消しについては、本法律案は付番のメリットを充実させることにより預貯金口座への付番を促進するものであること、現在の預貯金付番制度においても登録された個人番号の撤回について法令やガイドラインで定めていないことから、本法案では付番の取消しに関する手続を想定していないということになるんだと思います。
     もとより、利用目的を超えて金融機関が個人番号の利用を行う場合等には、預貯金者は個人情報保護法に基づいて登録した個人番号を取り消すことができるという、これは個人情報保護法の第三十条の一項ですが、こうした取扱い、トータルで見ると、EUのGDPRの規定に照らして遜色ないものではないかと考えております。
  • ○木原委員長 この際、内閣提出、デジタル社会形成基本法案に対し、松本剛明君外四名から、自由民主党無所属の会立憲民主党・無所属、公明党の共同提案による修正案、松本剛明君外三名から、自由民主党無所属の会公明党日本維新の会無所属の会の共同提案による修正案及び今井雅人君外一名から、立憲民主党・無所属提案による修正案が、また、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案に対し、今井雅人君外一名から、立憲民主党・無所属提案による修正案が、また、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案に対し、足立康史君外一名から、日本維新の会無所属の会、国民民主党・無所属クラブ共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。
  • ○岸本委員 ただいま議題となりました預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
     預貯金口座への付番を推進すべきとの政府原案の方向性には賛成をいたしますが、政府原案はあくまで預貯金者の意思に基づきこれを進めるものであります。しかし、情報の管理を効率化し、情報を共有することで給付と負担の適切な関係の維持に資するとのマイナンバー制度の基本的な考え方に立脚すれば、全ての預貯金口座への付番を強力に進めるべきであり、そのためには、預貯金者の積極的な意思に基づくものではない場合でも、預貯金口座への付番を進める必要があると考え、本修正案を提出いたしました。
     以下、本修正案の主な内容について御説明申し上げます。
     第一に、金融機関について個人番号の提供を受ける義務を規定しております。金融機関は、少額の取引を除く金融に関する取引を行おうとする場合には、一定の事項を説明した上で、預貯金者の本人特定事項を確認するとともに、個人番号の提供を受けなければならないこととしております。この際、預貯金者が本人特定事項の確認に応じないとき又は個人番号の提供をしないときには、金融機関は、預貯金者が確認に応じ、かつ、個人番号の提供をするまでの間、取引に係る義務の履行を拒むことができることとしております。
     また、金融機関が預貯金者の個人番号の提供を受けた場合には、他の金融機関が管理する当該預貯金者を名義人とする預貯金口座について、預貯金者の意思にかかわらず、預金保険機構を経由して付番がされる仕組みとしております。
     第二に、預貯金の内容等に関する情報の適切な管理について規定しております。金融機関が個人番号により検索することができる状態で管理している預貯金の内容等に関する情報については、その漏えい、滅失又は毀損の防止などの適切な管理のための措置を講じなければならないこととしております。
     第三に、預貯金の内容等に関する情報の提供記録の作成及び保存の義務を定めております。行政機関の長等は、金融機関に対して、個人番号を利用して管理されている預貯金口座に係る預貯金の内容等に関する情報の提供を求め、又は金融機関から情報の提供を受けたときは、当該情報の提供を求めた金融機関の名称等に関する記録を作成し、保存しなければならないこととしております。
     あわせて、金融機関が行政機関の長等に対し、個人番号を利用して管理している預貯金口座に係る預貯金の内容等に関する情報を提供する場合においても、その情報提供に関する記録を作成し、保存しなければならないこととしております。
     以上が、本修正案の趣旨であります。
     何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  • ○木原委員長 これより採決に入ります。
     内閣提出、デジタル社会形成基本法案及びこれに対する各修正案について採決いたします。
     まず、今井雅人君外一名提出の修正案について採決いたします。
    ○木原委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
     次に、松本剛明君外四名提出の修正案について採決いたします。
     本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    ○木原委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
     次に、松本剛明君外三名提出の修正案について採決いたします。
     本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    ○木原委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
     次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
    ○木原委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
     次に、内閣提出、デジタル庁設置法案について採決いたします。
     本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    ○木原委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
     次に、内閣提出、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
     まず、今井雅人君外一名提出の修正案について採決いたします。
     本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    ○木原委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
     次に、原案について採決いたします。
     これに賛成の諸君の起立を求めます。
    ○木原委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
     次に、内閣提出、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案について採決いたします。
     本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    ○木原委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
     次に、内閣提出、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
     まず、足立康史君外一名提出の修正案について採決いたします。
     本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    ○木原委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
     次に、原案について採決いたします。
     これに賛成の諸君の起立を求めます。
    ○木原委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  • ○森田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。
     案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
        デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案及び預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案に対する附帯決議(案)
      政府は、デジタル改革関連五法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。また、政府は、地方公共団体における運用等についても次の事項の趣旨にのっとり行われるよう、必要な助言を行うこと。
     一 デジタル改革関連法案の要綱等に多数の誤りがあったこと及びその事実が判明した後、直ちに国会に報告しなかったことを深く反省し、再びこのようなことが起こらないよう、再発防止策を徹底すること。
     二 デジタル社会形成基本法の施行に関し、以下の事項について配慮すること。
      1 本法は国民に義務を負わせるものではないことに留意すること。また、事業者に課される努力義務は、事業者に過度な負担を課すことのないよう十分留意すること。
      2 本法第十条の「デジタル社会」の形成に当たっては、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用により個人の権利利益が害されることのないようにするとともに、高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保を図ること。
      3 本法第二十九条は地方公共団体に「共同化及び集約」の義務を負わせるものではないことに留意すること。
      4 地方自治に重要な影響を及ぼすと考えられる施策について重点計画を作成するときは、地方六団体のみならずその他の関係者の意見を幅広く聴取すること。
      5 本法の運用に当たっては、デジタル化の推進が国民を監視するための思想信条、表現、プライバシー等に係る情報収集の手段として用いられることのないようにすること。
      6 デジタル化の推進に当たっては、年齢や障がい、経済的状況、地理的条件等にかかわらず誰もが不自由なく行政とのやり取りを行える機会が得られるよう必要な措置を講ずるとともに、地方公共団体等の窓口における対面業務、電話対応等、従来の機能を求める国民のニーズに十分配慮すること。また、これらの条件にかかわらず誰もが不自由なく事業者のサービスを利用できるようにするため、事業者の責務として自ら必要な取組を行うよう促すこと。
      7 地方公共団体のデジタル化を推進するに当たっては、各地方公共団体による独自の自治事務の遂行を妨げることのないようにすること。また、地方公共団体のシステムの共同化又は集約を行うに当たっては、適切な財源措置を講ずること。また、国が提供するシステム及び地方公共団体のシステムの改修作業が短期間に集中し、システム改修を行う事業者への過度な負担が生じないよう計画的に作業を推進すること。
      8 国の行政機関、独立行政法人地方公共団体の機関及び地方独立行政法人等の行政機関等(個人情報の保護に関する法律第二条に定める行政機関等をいう。以下同じ。)が保有するデジタルデータについては、データの性質を踏まえつつ、その管理を外部に委託した場合を含め、データを国内に置くなど個人情報の保護に関する法律の趣旨にのっとり適切な管理を行うこと。
      9 行政機関等が保有する情報のうち国民生活に有用なものについては、積極的にホームページ等で公表するなど国民が容易に活用できるようにするための環境整備について検討すること。
     三 デジタル庁設置法の施行に関し、デジタル庁への民間からの人材確保に当たっては、特定企業との癒着を招くことがないよう配慮すること。併せて、今後継続的に民間から有能な人材が確保できるよう人事及び給与の面で適切な処遇を図ること。また、デジタル庁の体制の整備に当たっては、政府全体として行政の肥大化につながり行政改革に逆行することのないよう、十分留意すること。
     四 デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の施行に関し、以下の事項について配慮すること。
      1 個人の権利利益の保護を図るため、自己に関する情報の取扱いについて自ら決定できること、本人の意思に基づいて自己の個人データの移動を円滑に行うこと、個人データが個人の意図しない目的で利用される場合等に当該個人データの削除を求めること及び本人の同意なしに個人データを自動的に分析又は予測されないことの確保の在り方について検討を加え、必要な措置を講ずること。
      2 地方公共団体が、その地域の特性に照らし必要な事項について、その機関又はその設立に係る地方独立行政法人保有する個人情報の適正な取扱いに関して条例を制定する場合には、地方自治の本旨に基づき、最大限尊重すること。また、全国に適用されるべき事項については、個人情報保護法令の見直しを検討すること。
      3 行政機関等が保有する個人情報の目的外での利用又は第三者への提供については、その要件である「相当の理由」及び「特別の理由」の認定を、厳格に行うこととし、行政機関等が行った判断の適否を、個人情報保護委員会が監視すること。
      4 行政機関等が個人情報を利用する際、個人が自己の情報の利用状況を把握できる仕組みについて、情報通信技術の進展を踏まえた見直しを検討すること。
      5 個人情報保護委員会による行政機関等の監視に当たっては、資料の提出及び実地調査を躊躇なく行うとともに、必要があれば勧告や報告の要求を遅滞なく行うことにより、監視の実効性を確保すること。
      6 大量に個人情報を保有している事業者が我が国の個人情報に関する法令を遵守するよう徹底するとともに、必要な場合には立入検査、報告徴収等の権限を躊躇なく行使し、遵守状況について監視すること。
      7 個人情報保護委員会が民間部門と公的部門における個人情報保護に関する業務を所掌することに鑑み、個人情報保護委員会の体制強化を図ること。
      8 学術研究目的における個人情報の取扱いについては、個人の権利利益を不当に侵害する場合は個人情報の取扱いに係る制限の適用除外とならないことに鑑み、要配慮個人情報を含む個人情報の適正な取得や提供等の保護の取組を強化すること。
      9 転職者等について事業者間で特定個人情報の提供を行う場合には、本人の同意を事実上強制することにならないよう、また転職者等が不利にならないよう、十分に配慮すること。
      10 地方公共団体情報システム機構が署名利用者の最新の住所情報等を署名検証者に提供するための本人の同意については、同意後に事情変更があることも踏まえ、同意の取消しを可能とするとともに同意の有効期限を設けるなど、慎重な運用を行うこと。
      11 地方公共団体情報システム機構において生成した署名利用者符号については、マイナンバーカードへの記録後に復元不可能な形で確実に廃棄されるよう、省令等において明記すること。
      12 移動端末設備用電子証明書が記録されている移動端末設備の譲渡又は紛失等によって、電子証明書及び署名利用者符号等が悪用されることのないよう、国は、これらを迅速かつ確実に失効・削除する仕組みを整備するとともに、移動端末設備の買取り等を行う関係事業者に対して電子証明書が失効済であること並びに電子証明書及び署名利用者符号等が復元不可能な形で削除済であることを確認するよう要請するなど、万全の措置を講ずること。
      13 地方公共団体情報システム機構において、情報システムに関する高度な専門的知識を有する人材の確保及び育成が円滑に図られるよう適切な支援を行うこと。また、同機構については、一層の情報公開を推進するなど、透明性の高い運営が行われるよう、必要な措置を講ずること。
      14 契約において書面の交付に代わり電磁的記録を提供する場合においては、契約内容に係る電磁的記録を消費者が容易に保存できる手段を確保する等、適切な取組を事業者に促すこと。
     五 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律の施行に関し、本法による預貯金口座の登録が、国民の資産把握のために用いられることがないようにすること。
     六 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の施行に関し、以下の事項について配慮すること。
      1 預貯金口座への個人番号の付番により個人資産が国により把握されることに対する国民の懸念があることに鑑み、税務調査等の法令に基づく調査以外で国が預貯金口座の利用状況を確認することがないようにすること。
      2 預金保険機構が本法の規定により提供を受けた本人特定事項、個人番号、口座情報等については、その目的のための使用を終了した後は、直ちに復元不可能な形で削除することを預金保険機構に徹底すること。
    以上であります。
     何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
    ○木原委員長 起立多数。よって、各案に対し附帯決議を付することに決しました
     

2,預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案

  • 番号法改正というよりも、政策の中身は、「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」に規定されている。但し、あまり実効性はないように見える法律ではある。預金保険機構と金融機関においては、それなりに実務への影響あり。
  • 義務化ではなく、あくまで希望制ではあり、希望者のみマイナンバーを登録(同法3条1項)
    →水町感想:今と変わらない。
  • 金融機関は、口座開設その他主務省令で定める重要な取引を行おうとする場合には、預貯金者に、説明の上、マイナンバーと口座の紐づけの意思を確認要(同法3条2項)。別の銀行についてもマイナンバーと口座を紐づける意思があるかどうか確認要(同法3条6項)。
    つまり、A銀行でマイナンバーを紐づけた場合、A以外の銀行でもマイナンバーを紐づけるかどうか、銀行側は確認する必要がある。なお、A銀行りんご支店でマイナンバーを紐づけた場合は、A銀行の別支店の口座は本人の特段の意思確認なく、マイナンバーと紐づけられることになる。
    ここで確認するのは、A銀行りんご支店において、
    ①「A銀行でマイナンバーを紐づけますか?」
    ②「A銀行以外でもマイナンバーを紐づけますか?」
    ③②がYesの場合は、全部の銀行ですか?それとも特定の銀行ですか?特定の銀行なら銀行名を言ってください、になる。
  • 承諾した人には、本人特定事項等の確認をしたうえで、紐づけ(同法3条3項)
  • 希望者は、自ら預金保険機構や銀行に、マイナンバー紐づけの申出ができる(同法3条1項、4条1項)
  • 災害時には、個人は、預金保険機構に、自分の口座番号とか銀行名・支店名を教えてくださいということができる(同法7条1項)
    →水町:災害時に自分の口座番号を知りたいというニーズってそんなにあるのか?
  • 相続人は、亡くなった方の全口座を預金保険機構に教えてくださいということができる(同法8条1項)
番号法改正は以下
  • 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律に基づく個人番号の利用を個人番号関係事務の番号法9条4項に例示として追加、別表第一改正(預金保険機構)(附則8条)
  • 施行は3年後(附則1条柱書)

3,デジタル整備法55条関係

  • 本人同意があれば、他社に移った元従業者の情報を当該他社に提供可(但し、税・雇用保険社会保険などの個人番号関係事務に必要な限度、19条4号)
  • 個人番号カードの作成手数料(16条の4)
  • J-LIS関係
    個人番号カードの作成はJ-LISとする明文規定の創設(16条の2)
    J-LIS役職員等の守秘義務(38条の3の2、罰則52条の2)
    個人番号カードの中期目標、計画、評価、財源措置(38条の8から13)
  • 別表第一・第二の改正
  • 施行日は、公布日(附則1条1号)、令和3年9月1日?(附則1条柱書)、戸籍法改正関係施行日(附則1条8号)

4,デジタル整備法56条関係

5,デジタル整備法附則

 

6,資料リンク

cyberlawissues.hatenablog.com