ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

預貯金付番(マイナンバーと口座の紐づけ)の目的の整理

預貯金付番について議論する際には、どの目的で預貯金付番を実施するのかという前提を誤らないことが必要。皆が自分の好きなように、前提を共有しないで、議論していると、どの話をしているかがわからず、話が発散しやすい。預貯金付番については特にそのような事態が生じやすいので、預貯金付番の目的を4つに大別して整理した。

 

図表 4 預貯金付番の目的

目的

法整備の状況

社会保障・税・災害対策事務の目的

Ø 社会保障・税・災害対策のうちマイナンバーを利用することが法律又は条例で認められた事務手続の範囲内で、預貯金口座を検索・管理し、行政機関が迅速・正確に税金の還付口座や保険料の支払口座を特定したり、国民の口座登録申請手続に係る手間を削減するなどの目的。

Ø 税務調査、社会保障の資力調査のため等のマイナンバー活用は、本来はこの①社会保障・税・災害対策事務のためのものと考えられる。

 

Ø 番号法制定当初から認められている(但し、番号法別表第一主務省令に規定が必要)

 

Ø 平成27年改正で認められた

金融資産把握

Ø 今後の少子高齢社会では、高齢者の負担を一律横並びで低くすることは困難と考えられ、高額所得者、高額資産家等には高齢者であっても負担能力に応じた負担を要請することも考えられる。その際、所得については税務当局において把握しているが、資産の中でも特に金融資産については国等において把握する術がない。本人の申請のみで資産額を把握するのではなく、必要があれば本人の申請した資産額が正確かどうか把握できる方法としてマイナンバーを活用する目的。

 

Ø 認められていない

Ø 「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」が2021年に成立し、希望者のみマイナンバーを登録し、金融機関は、口座開設その他主務省令で定める重要な取引を行おうとする場合には、預貯金者に、説明の上、マイナンバーと口座の紐づけの意思を確認することとされた。同法律施行後も、金融資産把握目的でのマイナンバー活用は引き続き認められていない。

迅速な給付・支援

Ø 国民から都度申請を受けずとも、必要な給付・支援を迅速に実行する目的。

 

 

 

 

 

 

 

Ø 番号法制定当初から、①社会保障・税・災害対策事務の目的の範囲内であれば、迅速な給付・支援のためのマイナンバー活用も可能。

Ø 「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」が2021年に成立し、希望者のみマイナンバーと公的給付の受取口座を登録することができる。

④その他

Ø   金融機関における顧客管理の正確化・効率化目的

Ø   金融機関破綻時の預貯金者保護

Ø   民事執行手続時等における債権者財産の特定

 

Ø 認められていない

 

Ø 平成27年改正で認められた

Ø 認められていない