ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

国と地方、国と民間企業がもう少しフランクに話せないのか

今日は、仕事をしている中で感じた、国が政策立案する際に、もっとフランクに地方公共団体や民間企業が意見を言えないのかなあ、という点について、ブログに書きたいと思います。個人的な駄文です。

ただ、いわゆる世間的に言われている、「お上に物が言えない」「官僚はダメだ」的な話を書くつもりは全くありません。

 

国で働いていたときに思ったのは、政策を決めるうえで、「現実」ってすごく大事だということです。当たり前のことですが、この「現実」というのが、非常に膨大なパターンがあるわけです。

「国は現実が見えていない」というのは、この「現実」の種類が非常に多いので、それを把握するのが難しいということと同義ではないかとも思うのです。

「現場に混乱なく新しい政策が根差すようにしよう」と一言でいうのは簡単ですが、この「現場」というのが、数百パターンぐらいあるわけですね。ある業界にとっての常識的な現場はこう、別の業界にとってはこう、個社ごとの違いをさらに考え出すと、さらにいろいろある、自治体はこう、NPOはこう、一般社団はこう、個人事業主はこうとかって。

で、この様々な「現場」の実情・意見を、国の政策に盛り込むための手段の一つ目が、①いわゆる検討会的なもの=国の会議。

ここで、業界団体とか代表者の方が出席されて意見を述べることで、調整を図ってきたっていうのが、これまでの国のやり方だと思うのです。

 

例えば、経団連経済同友会、商工会議所、新経連、知事会、市長会、町村会など。医療系だったら、医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会など。

 

昭和の時代だったらこれでよかったのかもしれませんが、しかし現在は、「現場」が目まぐるしく動いているのか、「現場」ごとのパターンが多すぎて業界団体等では集約しきれないのか不明ですが、団体に国がご意見を伺っても、国の方で「現場」の状況をすべて把握できるわけではないという状態が起こっているように思います。

 

ちょっと違うかもしれませんが、10月から消費税10%になるっていうのに、キャッシュレスの政策、全然全貌が見えませんよね。これもキャッシュレス決済手法が多種多様で、また中小事業者であるお店側も多種多様で、業界団体に属していないところも多いし、業界団体で意見を取りまとめてその方向でみんな動こうとかいう時代じゃないから、

「国」ー「団体(産学官)」ー「業界団体」ー「個社」

っていう流れで、政策がすーっと検討出来たり流れたりできないっていうのが、昭和との違いじゃないかなって思うんですよね。護送船団方式的なところだと、

国ー業界団体ー個社

と、すーっと流れて行っていたのかな、と。まあ昭和の実情をよく知っているわけではないので、あくまで想像にはなりますが。

 

また、様々な「現場」の実情・意見を、国の政策に盛り込むための手段の二番目として、業界団体を通したり通さなかったりしますが、②個社ごとの意見・質問・苦情などが多数国に届くわけですね。これらを見ながら、「現場」を把握していくっていうことになると。

 

しかし、この個社ごとの意見っていうのが、現実をあまり表していないことがあるんですね。尖った意見というか、「全面反対!」という意見が多数寄せられて、実質的に内容のある意見などはあまり来ないというのが、現実です。さらに、この「全面反対!」というか、非常にお強い意見が多すぎて、これらの対応をしていると「公務鬱」になりそうなので、受け手側の公務員側もつらいし、しかもこの対応をしても、「現場」は見えないし、という。

いわゆる、世間的平均的な方があまりいらっしゃらずに、非常に強い意見を持った方が多くいらっしゃる傾向があるので、こういうことがあるんだと思います。サイレントマジョリティーの声を聞かないと、良い制度にならないと思うのですが、国で働いていると、声の大きい非常に強い意見を持った方の声が非常に大きくて、っていうところもあるかと思います。

私、本当に、公務鬱になるんじゃないかと思ったことが度々ありましたが、まあ、前に勤めていた法律事務所の方が過酷な環境だったんで、公務鬱にはならずにすみました。

 

なので、昭和的な「現場」把握手法

①会議、②個社からの意見・苦情

っていうやり方だけではもう限界なんじゃないかと思うんです。

①会議だと、地方公共団体が思っている意見が国に言えない、個社が思っている意見が

国に届かないっていう風になりがちだし、②個社からの意見・苦情だと、世間的平均的な方があまりいらっしゃらずに、非常に強い意見を持った方が多くいらっしゃる傾向がある、と。

 

私が政策立案したPIAについて言うとですね、「現場」「現実」の声を聞きたくて、いろいろやってみましたが、全然うまくいかなかったんですね。

手法①会議

これだと、逆に会議に出席された方は、サイレントマジョリティーとは正反対のご意見で、「PIAをもっと厳しく厳格にすべて完璧に実施するべき!海外はもっと優れている!日本ももっと強くやっていくべき!」というご意見をおっしゃられる自治体の方がいらっしゃったりするわけです。

手法②個別の意見・苦情

これだと、「PIAなんかいらない!」「いますぐ法律を廃止しろ!」「国のくせに威張るな!」「今すぐ謝れ!」みたいな、非常に強い意見が多数寄せられてですね、私、国家公務員だったんで、成立した法律に則って仕事をしなければならないというか、それが仕事なわけですが、「PIAは実施しないようにしろ!」と言われましても、別法をすぐに成立させて、「PIAの実施義務」を廃止しないとそんなことはできないわけですおね。しかもさっき成立した法律で「PIAの実施義務」がかかっているわけですから。今すぐそれを廃止する法律が通るって、現実的に考えて、ありえないですよね。もしそうしたいなら、廃止する理由が具体的に説明できないといけないわけで。

だから、それよりも「現場に負荷がかからない形で効果的なPIAを実施するための方策」を考えたいので、ぜひいろいろ教えて下さいって言っても、「具体的にここが無理!」とかっていう意見は教えていただけないんですよね。

 

だから、私の中では、自分が対応してきた意見を考えると、「PIAなんていらない!」という意見が、自治体の99%の意見だと、はっきりいって思っていたわけです。

それが、国を辞めて弁護士に戻ったらですね、意外と皆さん、ものすごく真剣にPIAに取り組んでらっしゃったりするわけです。もちろんぐだぐだなPIAも中にはありますが、中には、「え?ここまで丁寧にやっているの?」「え?ここまで活用できるの?」みたいな取り組みも結構いっぱいあります。

 

で、今日、来たメールを見ていたら、こんなに丁寧にPIAのために資料を作成していただいたりしてるんだなーとかって思って、私が国にいたときに多数寄せられた、「PIAなんかいらない!」「いますぐ謝れ!」みたいな意見が自治体の99%が思っていることではないんじゃないかなって、弁護士として自治体と接すると思ったりもして。

 

もちろん、現状のPIAだと、意義が薄いわりに現場に過負荷がかかるっていう問題があって、それは私としても重々認識していて、改善していけるよう私にできることはやっていきたいと思っているのですが、

私が思った以上に、非常に丁寧に熱心に真剣に取り組んでいらっしゃる方が多数いらっしゃって、複数団体を拝見していても思うので、たぶん、そういう方は結構いらっしゃるんだと思うんです。

 

だったら、国で政策検討している際に、そういう方のご意見をいっぱい伺えれば、もっともっと最初からもっと良い制度にできたのになーって、すごく思って。

今はそれなりに人脈ができたので、今、PIAの政策立案するんなら、この方たちに意見を伺おうとかっていうのが少しずつわかってきましたが、そういう個人的な対応じゃなくて、PIAだけじゃなくて、国の政策立案で、もっと国と、こういう具体的な建設的な方をつなげるような方策があれば、もっともっと日本が良くなるのになと思いました。

 

あと、個人情報保護法についても、これまでいろいろ考えてきましたが、国にいたときに受けるご相談って、やっぱり国には皆さんフランクにはご相談しないですよね。弁護士になってみると、すごくフランクに、内容まで相談受けたりするんで、そういうご相談を通じて、「個人情報保護法のこういうところがよくなればいいのにな」って私の中でも具体化できたりするんで、今私がやっているようなことが、国でもできれば、もっと国の政策立案・検討・施行も、スムーズになって、良い方向に行くんじゃないかなって思ったりしています。

 

じゃあ、具体的にどういう方法があるかというと、いわゆる、直接意見が出せる目安箱的なものが、よく上げられると思うんですけど、目安箱やっちゃうと、上記②の個社ごとの苦情的なものと変わらないと思って。

 

要は、①会議だと、格式高い会議だし、「自治体原課」-「自治体とりまとめ課」-「地方3団体」ー「地方3団体の代表としてご発言される方」という、階層が非常に深く、なかなかそういう中でフランクな意見を言える環境にはない。

②個社からの意見・苦情だと、自分から「はい!はい!」って積極的にアプローチしていく声の大きい方じゃないと、なかなかそういう方法を取りがたい、っていうことじゃないかと。

 

自治体や民間企業から見たら、簡単に意見が言えるようになっていないと、なかなかフランクな意見は言えないので。企業だと、消費者が自社製品とかについてTwitterとかSNSにどうつぶやいたかを分析するマーケティングやっていますが、それの国版みたいなのがあるといいのかな。でも、SNSに、自治体や民間の詳細を記載するわけにはいかないでしょうから、それだと「現場」感覚は必ずしもわからないような気も。

 

どうすればいいんですかね。デジタルPMOみたいなところで、簡単に多数の意見が出せて、その意見を機械分析して、ってやるんですかね。それじゃやり方として弱いような気もするし。デジタルPMOみたいにクローズドな世界で公開ってやっても、声の大きい人がいくつも質問書きそうだし、どうやればよくなっていくのかっていうのは、難しいですね。。。

 

 

③試行

試行がいいですかね。やる気のある少数の団体さんで試行する。これ、ちょっとずれますが、経産省産業競争力強化法でやっているような意味合いですね。

ただ、試行っていっても、入札とかかけると、まったく内容のない試行とかになったりするんで、なかなかどういう方に試行に参加していただくか、が非常に難しく、それが肝だったりするかな、と思います。

 

いい方法を引き続き考えた行きたいなと思っています。