ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

読売新聞にコメントしました

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読売新聞2024/04/24「デジタル庁の「デジタル認証アプリ」迷走…オンライン利用履歴、政府に集中するリスク」にコメントしました。

 

デジ庁の認証アプリ、現時点の情報で概要や課題をまとめるのは難しいと思っていましたが、かなりきっちりまとめられた良い記事だと思いました。私のコメントは、ある意味当たり前のことしか言っておらず、役に立たずにすみません。

 

認証アプリにせよ、マイナカードにせよ、「法改正しないでいいのか」という疑問が寄せられることがあります。現状だと、新たに権利義務を生じさせるものではなく、かつ法律に書いていないことは改正しないで良い場合が多いので、そういう意味では「法改正するかしないか」は技術的事項であるようにも思います。

ただ、「法改正しないでいいのか」という疑問の裏には、「重要な事柄なのだから、行政判断だけで政策を転換させるのではなく、立法府で議論すべきだ」という意見があると思うのです。それはその通りだと思います。

ただ、「重要事項だから法改正する」という風に、現状の立法実務はなっておらず、「法改正しないでも違憲・違法ではない」という意味で言えば、「法改正しなくてもよい」ので、そうすると、広く議論する場は、有識者会議・マスコミ・経済界・法改正に限らない議員による活動などを通して、広く議論がなされるべきであり、これまでの霞ヶ関で多くの場合はそのように対応されているものの、認証アプリにせよマイナカードにせよ、そのような対応がなされていないように見え、どうなのかなと思うところがあります。

又は、そもそも論として、重要事項は法改正すべきであって、それは社会的議論を通して、「こういうことは必ず立法措置又は法改正をせよ」というような合意形成をするとか。

 

まあ、公務員とすると、「立法措置は作業量が多くて大変だから、立法措置はできる限りしたくない。とはいえ、重要事項は行政のみでやりたくない」から、有識者会議・マスコミなどと議論をして政策形成・調整を図っていくというのが、通例だと思うのですが、マイナンバーやデジタル関連はそのような取り組みが見えてこない部分があり、「ん?」と思うところもあります。あとは、有識者会議を設置するにしても、あまり仕事をしたくない公務員からすると、とやかく言われたくないし、作業量増やしたくないので、わかっていない人に委員になってもらって、公務員の意見を全て通す形で政策形成したいというような場合も考えられ、それはどの省庁でもあるといえばある話で、コロナの時など、有識者会議と厚労側の対立の話も聞こえてきましたが、本来は、政策形成をどういう議論を通して、どう議論に透明性を持たせてやっていくかを、ちゃんと考えるべきであり、公務員の良心にのみ委ねる時代は、終焉を迎えつつあるのかもしれません。

 

私、東京都の委員もやっているのですが、都を見ていると、本当に古き良き時代の霞ヶ関風の感じで、有識者会議もきっちり機能しているように思います。中央官庁、なんかちょっと、昔の霞ヶ関とかなり違ってきているように何年も前から思います。大物官僚OBなどに、この点について原因と対策を考えてほしいものです。