ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

週刊誌取材を受けてコメント掲載しないように要請しました

胸がドキドキするぐらい、びっくりすることがありました(悪い意味で)。

 

週刊誌の取材を受けたところ、なんか取材の時から、「一体何が質問したいことなんだろう?」と謎な印象はあり、雰囲気もいつもの新聞・雑誌の取材とはかなり違っていて不思議な感じでしたが、取材対応を終えました。

普通の取材時は、記者にはこちらに聞きたいことがあって質問を受けるのです。具体的な質問がない場合は、ブレストというか、いろいろな話を聞いて記者がその制度の概要とか課題を理解したくて、取材をするので、そういう感じになるのですが、今回はそういう雰囲気は全くなく、何を聞きたくて、どういうコメントにするんだろうと非常に謎でした。若干の不安はありました。

 

その後、記事のゲラが出てきてみたところ、私の思っていたのと全く違う内容だったのでした。

私は、マイナンバー制度が大好きで、制度がもっとよくなってほしいという観点で、課題を述べたり、法律上の話を述べたりしています。ところ、そのゲラでは、その制度を全否定というか、超絶ダメ出しをしていて、その文章の中に、私がコメントとしてさらに制度へのダメ出しをして、私が政策を馬鹿にして笑っているようにも読めるような構成になっていたのです。よくありますよね、週刊誌の記事で、コメントしている人が「何にもわかってないよね笑」とかって「」コメントで言うやつ。私から見たイメージ的にはそんな感じ。

 

私がマイナンバー制度の課題を言ったり文句を多数述べていたり、「こうしろ」「ああしろ」「ここの検討が足りない」と言っているのは、制度を全否定しているわけではなくて、もっと良くなってほしい、もっと世の中の役に立つ制度になってほしいからなんです。

私の趣旨とコメントがあまりに違うので、修正してもらおうかとも思いましたが、この週刊誌というか記者の方のテイストだと修正も多分難しいだろうな、と。私が「こう修正してください」といっても、私の意図を汲んだと言いながら、制度全否定的なコメントのままで終わるオチが見えていすぎる…。

外部者からの全否定コメントが欲しいなら、私じゃなくて、反対派の方に取材に行けばいいのに。なぜ私のところに?全否定の記事だっていう話も聞いてなかったし。反対派のところに取材にいけば、いくらでも否定してくれるのでは?なぜ私のところに???謎。なんなら、私、反対派の先生ご紹介できますが。

 

マスコミの場合、記者さんの思うストーリーがあって、それに沿う外部者コメントが欲しいんですよね。それは新聞でもビジネス誌でもそうです。だから被取材者は気を付けなければいけない。しかし、記者さんのストーリーに沿わないコメントをする人に、無理に記者さんのストーリーに沿うコメントをさせようとして、「仮に問題があるとしたら、何になるのか」「もしももう一度一から作り直すとしたら、どうしますか」といった問いかけで出てきた答えを、「だからこの制度はおかしい」というコメントにするというのは、倫理上良くないと思います。

そもそも、私に取材せずに、反対派に取材すれば、いくらでもダメ出しコメントがもらえるはずです。最初から「制度に疑問を感じているので制度の課題を教えてくれ」と取材依頼をかければいいのです。そうではない風を装うのはいかがなものかと思います。

 

そして、私のコメントを削除してほしいと私から編集部に電話をかけましたが、

電話に出た人「私、事務員なので、そんなこと言われてもわからないので困ります。編集者と話してください」

私「では、わかる方に代わってくれませんか」

電話に出た人「タイトルを言ってください」

私「タイトルは教えてもらってないのでわかりません」

電話に出た人「ゲラ持ってるんですよね?」

私「一部しかもらってないので、タイトル書いてませんが、マイナンバー関連です」

といって、編集者に代わりました。

 

編集者「私は聞いたことをそのまま書きました。違いますか?」「時間をかけて取材をして記事にしているので、今から削除となると穴埋めしなければならないけれども、こちらも時間をかけているので」「修正ではだめなんですか?」

私「メールに、修正要望をもらっても全部反映できないとあるけど、修正意見を出したら修正してもらえるんですか?」

編集者「地の文は直せません。「」コメントも字数があるので、必ずしもご要望通りに修正できません」

私「字数を●字以内というご指定をいただければ、その範囲で修正コメントを考えますが、字数制限を満たしていれば、こちらの要望通り修正してくれますか?」

編集者「地の文と「」コメントがあまりに違うとできない」

 

これは、修正ではだめそうだなと思って、削除してほしいといっても、できないという話だったので、責任者に代わってくださいといっても代わってくれないので、電話を切って、代表電話にかけなおしました。

代表電話に出た方に用件を伝えたら、またまた編集部に回されそうになったので、経緯を話して法務部かどこかにつないでほしいと言ったら、法務ではないけれども編集でもない方が出てこられて、話を聞いてくださり、編集者の上司に連絡してくださり、無事、コメントが掲載されないことになりました。

 

あー、びっくりした。

週刊朝日の取材を前受けた時とは全然違いました。週刊朝日は、新聞の取材よりも穏当っていっちゃおかしいかな?すごい穏やかな感じで、記事も正統派で良い記事でした。

週刊誌っていっても、カラーが全然違うんですね。これからは、週刊誌の取材はビジネス誌以外受けないことにしようと思いました。

 

出版差止の仮処分とか不法行為請求訴訟とかしないといけないかと思いましたよ。訴訟にならずに、コメントカットしてもらえて、良かった。ただ、なんで私のところに取材に来たんでしょうかねえ。ブログを読んだと言ってましたが、ブログで批判的に書いていたのを見て、反対派と勘違いされたのか?反対派のコメントを取りに行けば、いくらでもダメ出ししてくれるでしょうに…。

 

私のコメントがあるからって別に記事にメリットがあるわけじゃないのに、私のコメントを無理に掲載して、私から出版差止の仮処分されたら、その雑誌社としても面倒ですよね。だったら、削除したほうが良いって、合理的なビジネス判断ならなると思うんですが、記者さんからみると、せっかく書いた文章を書き直すのが面倒だったのですかねえ。

私だってこの忙しい年度末に出版差止の仮処分やる暇ないですよ。でも、削除してくれないなら、やるしかないかも。

 

ちなみに、「時間をかけて取材しているからコメント削除できない」って編集者がいっていましたが、私も無料で取材を受けて時間をつかっているのですが。編集者の方はこれをやることでお給料なり委託料なりが発生しているので、記者さんにとっては有料のお仕事だと思うのですが、私は取材に応じても特にお金をいただくわけでもなく、取材を受けてお仕事が増えるということも特段現実ないように思いますし、取材の時間に別の仕事したほうが金銭的にはプラスになるのですが、社会の方に正しい情報を発信して、より良い制度になってほしいという意図で取材対応をしているのですが、なかなかなんとも…。

別に私なんぞ週刊誌にコメント掲載されても、有名人じゃないので、みんな読み飛ばすでしょうし、かといって知り合いは「水町がこんなこと言っているぞ」とか言いそうだし。

 

結局、一応、私の名前は一切出さないということをお約束していただけたのですが、発売後に記事をチェックしたほうがよさそうですよね。わざわざ買いに行かないといけないんでしょうかねえ。ネット記事で公開されれば、チェックできますが、どうなんでしょうか。

 

多分、記者さんに悪気自体はない。反対派に取材に行けばよかったのに、取材相手選定を間違えたというか、おそらくGoogle検索で上の方に出たとか、朝日新聞を読んだとか、よく考えずに取材相手を選定してしまって、自分のストーリー通りのコメントがとれなそうだけど、なんとかとって、なんとか文に仕上げたのに、削除ってなったら書き直すの面倒だなという話なんだと思います。

しかし、それでは、こちらは困ります。

 

前にもブログで書きましたが、最近はあまり考えすぎるとマイナンバー関連政策の検討があまりに論理的でないのでイライラするので考えないように、マイナンバーへの思いを抑えるようにしていますが、私はマイナンバーが大好きなんです。

HYあなたの「わかってほしい 私の思い すべてをかけてあなたを愛してる」という歌詞並みにマイナンバーを愛しているのです。なんかものすごく変ですが。それで、これからも生涯をかけてマイナンバー制度がよくなるように考えていきますって、資料でもいつも宣言しているわけです。この覚悟をもって、マイナンバー政策検討している人いますか?記事書いている方いますか。いるなら、ぜひ一緒にやりましょう。私はそれぐらいの覚悟と気持ちでやっています。

大切に、自分の心身を削って、作った制度なのです。社会の役に立ってほしいし、個人情報保護をやってほしいし、そういう気持ちなのです。なかなか、伝わらないのですが、まあしょうがない。

 

あと、「マイナンバー推進派」とかって言われたことがごくまれにあるのですが、マイナンバー推進は別にしていません。私は個人情報保護が大好きで個人情報保護をマイナンバー制度に組み込む仕事をやっているのです。あとはITをずっとやってたから、ITの中でマイナンバーをどう使っていくかという話をしていて、そこが好きなんであって、「マイナンバーで全情報を紐づけたい」というような意思は全くないし、でも「マイナンバーが大好き」って一般的には理解されづらい感情なのはわかりますし。

 

私は個人情報保護をやっているのです。マイナンバーによる個人情報リスクをいかに法的になくすか、マイナンバーの取扱いにいかに制約をかけるかという検討をしているのです。ただ、じゃあ廃止したいのかというとそうではなくて、重要な目的を達成するために必要な範囲内の適正利用はやっていってほしい。そのために構築されたわけだから。「必要な範囲」「適正利用」をどうルール設定するか、悪用をどう防止するかという話をしているんです、個人情報保護派の観点から。「マイナンバーで国民の情報を管理しよう」「みんなにマイナンバーカードを持たせたい」とかっていう意思は皆無です。マイナンバー制度を正しく説明しないと、誤解に基づく間違った情報が流通してしまっている傾向があるし、合目的的でない政策が打ち出されているようにも思うから、発言しているのであって。「国を叩きたい」「マイナンバーなんか意味ない、いらない、最悪」とも思ってない。なんか、この辺がうまく伝わっていないように思いますが、まあコロナ関連の医師の情報発信なんかを見ていても、発信者の意図を全然違って読む方はいるし、そんなもんなのかな、とも思います。