神奈川県・消費者庁共催の個人情報に関する説明会で、いただいた質問です。
Q→「マイナンバーは、スーパーやコンビニで提示しないといけないのでしょうか。
マイナンバーカードを提示しないと、軽減税率の適用を受けられないのでしょうか。」
A→マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の3分野でしか、原則利用できません。
マイナンバーに類似する制度は古くは1970年の行政管理庁による事務処理用統一個人コードの検討に遡りますが、「国民総背番号制」などの批判があり、今般まで実現にはいたりませんでした。
その主な理由がプライバシー権を侵害する恐れがあるからです。
現代ではお客様番号、ログインID、お問い合わせ番号など、さまざまなジャンルで「番号」が使われていますが、それは氏名や住所などよりも、番号の方が、ご本人を特定するのが正確かつ迅速に行えるからだと考えられます。しかし番号のこの便利な特徴は、同時に、人のプライバシー権を侵害するリスクをも有しています。
氏名などでは同姓同名の可能性もありますし、外字・表記ゆれの問題などもありますが、番号を用いれば、正確にどの方であるかを特定することができるため、これを悪用すれば、他人の個人情報が大量に集約されてしまうという恐れも考えられます。
そこで、マイナンバーのプライバシー権侵害リスクを抑え、かつマイナンバーの効果を発現できるよう、マイナンバーを利用できる範囲を法律で厳しく限定しています。法令に定められた範囲かつ事務でしかマイナンバーを利用することはできないようになっています。
マイナンバーがオールマイティーなマッチングキーとなることを防ぐためです。
したがって、今の番号法の下では、マイナンバーは、民間企業が持っているであろうお買い物履歴などとは紐づきません。警察がもっている前科情報などとも紐づきません。それはなぜなら、法令で、そのような事務にマイナンバーを利用することが認められていないからです。
したがって、スーパーやコンビニでマイナンバーを提示する必要はありませんし、スーパーやコンビニは、購入履歴をマイナンバーで管理してはいけません。
ちなみに余談ですが、番号制度では「通知カード」というカードと「個人番号カード」という2種類のカードが導入されます。「通知カード」は全員に配られますが、「個人番号カード」は希望者にのみ配られます。
政府としては個人番号カードの普及率を上げたいところで、年金手帳や健康保険証との一元化などが言われていますが、行政庁は縦割りで、今ある事務を変えたくないという意見が強いので、そういったことの実現は難しいかもしれません。しかし軽減税率を受けるために個人番号カードが必要という施策をとれば、個人番号カードの普及率は圧倒的になりそうですね。比較法的に見れば、消費者がスーパーで買い物をするときも納税者番号を提示するという法制はあるので、論理的可能性としては、日本においても将来的に導入をという声はなくはないかとは思いますが、ただまあ、内閣官房も財務省も国税庁も、将来的にもやりたがらなそうな印象を受けます。
行政サービスを受けるときに、通知カードも個人番号カードも忘れた方は、住民票の写しをとることでOKとされますが、仮に消費者が生活用品を購入する際にもカードの携帯をお願いする法制とした際、忘れた方用に住民票の写しでよいとするのは、そもそもカードを持っていない人がなぜ住民票を持ち歩いているんだという疑問もありますし(行政サービスの場合は、市役所に行ってサービスを受けるだろうし、市役所で住民票をとれる)、スーパーをはじめと刷る産業界の負担と、消費者の不便と、国税庁の事務負担と、国民からの批判が考えられるし、とかいろいろ考えると、とっても内閣官房も財務省も国税庁も、番号制度が十分定着した後の「将来的に」であっても、やりたがらなそうな印象を受けます。税調とかに強くいわれたらまた別かもしれませんが、行政側からはこういう話には絶対にならなそうな気がします。