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弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

【マイナンバーQ&A】本人からマイナンバーを受け取る際に本人確認として何をするべきか


本人からマイナンバーを受け取る際に本人確認をしなければならないそうですが、具体的には何をすればよいのですか?



1.本人確認義務

アメリカの社会保障番号(SSN)、韓国の番号などでは、なりすまし被害が報道されています。
番号ができたので、番号だけで本人だと判断できるよ、としてしまうと、なりすましが懸念されます。
つまり、「私マイナンバー123456789012の水町雅子です」と言って、そのマイナンバーが水町雅子のものであれば、「あなたは水町雅子さんですね」としてしまうと、マイナンバーと名前が他人に知られてしまえば、勝手になりすまされてしまう恐れがあるわけです。

そこで、日本では、なりすまし防止のために、マイナンバー単体による本人確認が禁止され、マイナンバーを受け取る際は、別途本人確認を行うことが義務付けられています(番号法16条)。


2.本人確認としてやるべきこと

では、この「本人確認」とは何でしょうか。
私が私であることを証明する、これはある意味哲学的深淵に入り込むようなテーマでもありますが、ここではマイナンバーに限った本人確認を考えたいと思います。

マイナンバーを提供するときに、「その人がその人自身であること(実在確認・身元確認)」がまず必要です。私が区役所に行ったとして、区役所側で私が水町雅子であることを確認するということです。もしかしたら関係ない人が私になりすましている可能性があるので、そうでないことを確認します。

次に、マイナンバー違いがないことも確認します(マイナンバーの真正性確認)。なぜなら、私はもしかしたら不正をしたくて、「水町雅子ですが、マイナンバーは098765432123です」などと、偽りのマイナンバーを言うかもしれないからです。そこで、私が申告しているマイナンバーが私のマイナンバーであることも、確認します。

つまり、マイナンバーを受け取ったら、実在確認としてその人がその人自身であること、そして真正性確認としてその人のマイナンバーに違いないことを確認することが求められます(番号法16条)。


3.本人確認の具体的方法

(1)総論

では、具体的には何をすればよいのでしょうか。
①個人番号カード1枚を見る、②通知カード+免許証などを見る、③マイナンバーが記載された住民票の写し+免許証などを見る、④その他の方法に、大別されます。

但し、従業員などからマイナンバーをもらう際は、人違いの可能性がほぼないので、①個人番号カード1枚を見る、②通知カード1枚を見る、③マイナンバーが記載された住民票の写し1枚を見る、④その他の方法が認められます。


(2)個人番号カード1枚

相手が個人番号カードを持っていれば、本人確認は、この個人番号カードを見るだけで足ります(番号法16条)。
なぜなら個人番号カードは身分証明書になるものなので、ここに書かれた氏名・住所・生年月日・顔写真を見れば、その人自身であること(実在確認)ができます。
また裏面にはマイナンバーが書かれているので、ここに書かれたマイナンバーを見れば、本人が申告しているマイナンバーに間違いがないことが確認できます(マイナンバーの真正性確認)。

1枚で済んで便利ですが、個人番号カードは全員が所有しているカードではありません。
希望者が取得しているカードですので、相手方が個人番号カードを持っているとは限りません。
もっとも、企業にしてみれば、相手方に個人番号カードの取得を促すなどの措置をとってもよいかもしれません。


(3)従業員等の特例

相手が本人確認済の従業員等の場合は、通知カードやマイナンバーが記載された住民票の写し1枚を見れば、本人確認が完了します(番号法16条・施行令12条1項1号・施行規則3条5項・国税庁告示8)。
もっとも、従業員の場合は、採用時に本人確認が行われていることが前提になります(国税庁告示8−1、内閣官房FAQ Q4−3−1−2)。

もっとも、厚労省告示が出ていないので、社会保障関係のマイナンバー手続で、これでよいかどうかは、実は確定していないという問題は残ります(以下、同じ)。


(4)通知カード

相手方が本人確認済の従業員等でない場合は、通知カード1枚では本人確認は完了せず、あわせて身分証明書などの確認が必要です(番号法16条・施行規則1条1項各号、財務大臣等特例(施行規則1条3項))。


(5)住民票の写し・住民票記載事項証明書

相手方が本人確認済の従業員等でない場合です。個人番号カード、通知カードでなくても、マイナンバーが記載された住民票の写し又は住民票記載事項証明書と身分証明書などを確認すれば、本人確認が完了します(番号法16条・施行令12条1項1号・施行令12条1項2号・施行規則2条・3条2項・3条4項)。


(6)その他

相手方が本人確認済の従業員等でない場合です。個人番号カード、通知カード、マイナンバーが記載された住民票の写し又は住民票記載事項証明書がない場合は、市町村の住民基本台帳の確認等の方法が認められています(番号法16条・施行令12条1項1号・施行規則3条1項・施行令12条1項2号・施行規則2条・3条2項・3条4項)。
つまり、生活保護などを受けるときに、どうしても自分のマイナンバーがわからない(といっても、住民票に記載されますが)という場合は、マイナンバーを申請書などに記載せずとも、市町村側で調べてもらえばよいということになります。マイナンバーの未記載による生活保護などの申請受理拒否はできません。

なお、システムを使用して取得する場合は、番号法16条・施行規則4条が根拠法令になります。


4.通知カードなどにプラスする身分証明書など

では、3(4)(5)で記載した、通知カードなどにプラスする身分証明書などとは、何を確認すればよいのでしょうか。

(1)通知カードにプラスする身分証明書

  • 運転免許証、運転経歴証明書(交付年月日が平成二十四年四月一日以降のものに限る。)(施行規則1条1項1号)
  • 旅券(施行規則1条1項1号)
  • 身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳療育手帳(施行規則1条1項1号)
  • 在留カード又は特別永住者証明書(施行規則1条1項1号)
  • 官公署から発行され、又は発給された書類その他これに類する書類であって、通知カードに記載された氏名及び出生の年月日又は住所(以下「個人識別事項」という。)が記載され、かつ、写真の表示その他の当該書類に施された措置によって、当該書類の提示を行う者が当該個人識別事項により識別される特定の個人と同一の者であることを確認することができるものとして個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの(施行規則1条1項2号)
    • 国税の場合の具体例(国税庁告示1)
      • 写真付身分証明書等(学生証、社員証等)
      • 書類送り付けパターン(プレ印字申告書、マイナンバー提供依頼書(国税庁例4)など)
      • 税理士証票
      • 写真付公的書類(戦傷病者手帳等)
      • 符号認証(暗証番号、生体認証、バーコードなど)
      • プレ印字申告書関連書類(確定申告のお知らせハガキ、所得税の予定納税額の通知書など)
  • 以下の二以上の書類
    • 健康保険証など(国民健康保険、健康保険、船員保険後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証、私立学校教職員共済制度の加入者証)(施行規則1条1項3号イ)
    • 国民年金手帳(施行規則1条1項3号イ)
    • 児童扶養手当証書又は特別児童扶養手当証書(施行規則1条1項3号イ)
    • 官公署又は個人番号利用事務等実施者から発行され、又は発給された書類その他これに類する書類であって個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの(通知カードに記載された個人識別事項の記載があるものに限る。)
      • 国税の場合の具体例(国税庁告示2)
        • 写真なし身分証明書等(学生証、社員証、資格証明書など)
        • 写真なし公的書類(印鑑登録証明書、戸籍謄本、戸籍抄本、住民票の写し、住民票記載事項証明書、母子健康手帳
        • 国税等の領収証書等
        • 本人交付用税務書類(源泉徴収票、特定口座年間取引報告書など)

法16条の以下の太字の部分です。
(本人確認の措置)
第十六条  個人番号利用事務等実施者は、第十四条第一項の規定により本人から個人番号の提供を受けるときは、当該提供をする者から個人番号カード若しくは通知カード及び当該通知カードに記載された事項がその者に係るものであることを証するものとして主務省令で定める書類の提示を受けること又はこれらに代わるべきその者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。

(注)財務大臣等特例は施行規則1条3項


(2)マイナンバー付住民票の写し・住民票記載事項証明書のプラスする書類

  • 運転免許証、運転経歴証明書(交付年月日が平成二十四年四月一日以降のものに限る。)(施行規則2条1号・1条1項1号)
  • 旅券(施行規則2条1号・1条1項1号)
  • 身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳療育手帳(施行規則2条1号・1条1項1号)
  • 在留カード又は特別永住者証明書(施行規則2条1号・1条1項1号)
  • 官公署から発行され、又は発給された書類その他これに類する書類であって、令第十二条第一項第一号に掲げる書類に記載された個人識別事項が記載され、かつ、写真の表示その他の当該書類に施された措置によって、当該書類の提示を行う者が当該個人識別事項により識別される特定の個人と同一の者であることを確認することができるものとして個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの(施行規則2条2号)
    • 国税の場合の具体例(国税庁告示4)
      • 写真付身分証明書等(学生証、社員証等)
      • 書類送り付けパターン(プレ印字申告書、マイナンバー提供依頼書(国税庁例4)など)
      • 税理士証票
      • 写真付公的書類(戦傷病者手帳等)
      • 符号認証(暗証番号、生体認証、バーコードなど)
      • プレ印字申告書関連書類(確定申告のお知らせハガキ、所得税の予定納税額の通知書など)
  • 以下の二以上の書類(施行規則3条2項)
  • 官公署又は個人番号利用事務等実施者から発行され、又は発給された書類その他これに類する書類であって個人番号利用事務実施者が適当と認めるもの(施行規則3条2項2号)
      • 国税の場合の具体例(国税庁告示6)
        • 写真なし身分証明書等(学生証、社員証、資格証明書など)
        • 写真なし公的書類(印鑑登録証明書、戸籍謄本、戸籍抄本、住民票の写し、住民票記載事項証明書、母子健康手帳
        • 国税等の領収証書等
        • 本人交付用税務書類(源泉徴収票、特定口座年間取引報告書など)

法16条・施行令12条1項2号の以下の太字の部分です。
(本人確認の措置)
第十六条  個人番号利用事務等実施者は、第十四条第一項の規定により本人から個人番号の提供を受けるときは、当該提供をする者から個人番号カード若しくは通知カード及び当該通知カードに記載された事項がその者に係るものであることを証するものとして主務省令で定める書類の提示を受けること又はこれらに代わるべきその者が本人であることを確認するための措置として政令で定める措置をとらなければならない。
(本人確認の措置)
第十二条  法第十六条の政令で定める措置は、個人番号の提供を行う者から次に掲げる書類の提示を受けることその他これに準ずるものとして主務省令で定める措置とする。
一  住民基本台帳法第十二条第一項に規定する住民票の写し又は住民票記載事項証明書であって、氏名、出生の年月日、男女の別、住所及び個人番号が記載されたもの
二  前号に掲げる書類に記載された氏名及び出生の年月日又は住所(以下この条及び次条第三項において「個人識別事項」という。)が記載された書類であって、写真の表示その他の当該書類に施された措置によって、当該書類の提示を行う者が当該個人識別事項により識別される特定の個人と同一の者であることを確認することができるものとして主務省令で定めるもの

(注)財務大臣等特例は施行規則3条3項



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