ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

マイナ保険証の今後

※あくまで私の個人的な予想です。8.3追記(下の方)

www.nikkan-gendai.com

 

上記記事を読んで今後を考えました。

 

1)保険証廃止を延期せず、資格確認証の期限も延ばさない場合

  • 保険証廃止後も、誤紐づけ、自己負担割合の誤り等が発生するように思われる。
  • その結果、医療窓口現場が混乱し、患者側も、自分はちゃんとマイナンバーカードを持参しているにもかかわらず、来院後にもう一度来院して正しい自己負担額を支払ったり還付してもらうなどの面倒な処理が発生しそう。
    (さすがに10割請求はないとしても)
  • そうすると、マイナンバー制度全体の評判が悪化し、「保険証廃止の廃止論」ではなく、(マイナンバーカードとマイナンバーの差異に関する周知不足から)「マイナンバー全体の廃止論」すら起こりかねないのでは
  • 「総点検で解決した/する」というようなことをもし述べてしまうと、「嘘つき」呼ばわりされかねない
  • 以上から、もし私がブレインなら、この案を採用するのは止めるよう進言します。
  • 政治家になったことも身近に政治家がいたこともないのでわかりませんが、役人になったことはあるので、言うと、役人の幹部が政治家にレクしているはずで、役人のレク・助言として、さすがにこの案はやめましょうというのが普通な気がしますが。
  • もしこの案が採用されたら、私ならマイナ保険証を持参しつつ、資格確認書も念のため持参したいと思うのですが、マイナ保険証を持っている人でも資格確認書はもらえるんでしょうか。もらえるようにならなかったら、怒ります。

 

2)保険証廃止を延期する場合

  • 延期したから一安心では決してない。
  • 早急に、保険証廃止期限に向けて、トラブル解消のための実効的な解決策として、具体的に誰が何をいつまでにするのかをプランニングする必要がある。うわべだけの解決策ではだめで、真にトラブルを解消するように、原因をきちんと正確に見つめ、抜本的な対策を行う。複数省庁をまたぐ部分や、官民をまたぐ部分、民間の取り組みにゆだねられている部分などが放置されやすいので、これらの部分も徹底的に解決策を検討し、実行に向けたプランを立てる。のんびりしている暇は全くなく、すぐにでもものすごく急いでやらないと、間に合わない可能性がある。
  • そして月に1度、プラン通り進んでいるか事務方レベルでチェックし、3か月に1度(もっと短いスパンでもよいかもしれない)ぐらいは大臣級会合で確認し、遅れがあれば、大臣や総理から発言してもらい、速やかな実行を催促する。大臣級会合はマスコミに全面公開し、「〇〇省に遅れが!」みたいに記事にしてもらって、さらに催促する。

 

3)保険証廃止を延期せず、資格確認証の期限を延ばす場合

  • 保険証廃止の延期を言ってしまうと、ミスを認めたことになりかねない、とかそんなどうでもいいメンツよりも、真に国民のことを考えてほしいですが、もしも万一そういうことを政官で考えていることがあるとすると、この案が一番確率が高そう。あくまで政官のミスではなくて、デジタル化が原則だが、誰一人取り残さないようにするデジタル化の方針に則り、資格確認証の利便性も向上させるなどというのは、いかにも役人が書きそうな文である。
  • この場合、一番に成し遂げなければならないのは、資格確認証のミスが起こらないようにすること。マイナ保険証だけだとトラブルが発生する可能性があるが、資格確認証側でもミスが発生してしまうと、大混乱に陥って、最悪となる。
  • 資格確認証の事務プロセスを、きちんと精査し、抜け漏れや不正確性がないようにする。
  • 資格確認証発行システムをもし構築するなら、ここにトラブルが発生しないようにしなければならないが、ちょっと不安。
  • という風に、資格確認書の発行にトラブルが起きないようにすることが大事。ここがやや不安なので、2と同様に、早急に計画を立てて、月に1度、プラン通り進んでいるか事務方レベルでチェックし、3か月に1度(もっと短いスパンでもよいかもしれない)ぐらいは大臣級会合で確認し、遅れがあれば、大臣や総理から発言してもらい、速やかな実行を催促するぐらいした方が良いと思う。
  • 資格確認証だけにとらわれず、もちろんマイナ保険証のトラブルも解決しなければならない。マイナ保険証のトラブル解決については、2と同じだが、3の方が2よりも期限が緩くなるので、だらだらとトラブルが続きかねない。3の場合も、しっかり期限を切って、進めていくべきである。

 

4)保険証廃止を延期し、資格確認証の期限も延ばす場合

  • というのも考えられる。

 

私は政治家でも、役人幹部でもないので、政治的決着などはよくわかりません。

もしも、私が独断でマイナ保険証の件を決められるのであれば、どうするかな…。まず前提として、私はマイナンバー制度を人の役に立つ個人情報保護を充実した制度としたいという思いではありますが、保険証をマイナンバーカードにする必要は別にないと考えているのです。だって別にさほど便利にはならず、社会の役にもさほど立たず、コストがどれぐらいかかっているのかもよくわからないし。

だから、保険証は今までの保険証のママでもよいように思います。マイナ保険証はなしにしてもいいように思いますが、そうするとこれまでにかけた税金がもったいないという話はあります。

かといって、マイナ保険証と従来型保険証の二重運用だと、コスト高になってもったいないです。二重運用を選ぶ場合は、いずれはどちらかに一本化すべきだとは思います。ただ、マイナ保険証のトラブルをきちんと解決しないことには二重運用し続けるか、従来型の保険証に一本化するしかなく、なんともいやはや…。

 

そうですね、私が独断で決められるんだったら、そもそも、マイナンバーカードと保険証を統合しません。保険証って、膨大な数の健康保険組合等の保険者、支払基金・中央会・国保連、さらに膨大な数の病院・薬局・柔整とかが関わるわけで、調整コストと物理的にかかるコストが非常に高いですよね。それに対して、ベネフィットがそこまであるかと言われると、うーんだし。政策立案として、なぜそこに行くの? センスないの?とかって、ちょっと思っちゃいます(ひどい悪口ですみませんが)。

 

マイナンバーカードと保険証を統合しようとしている今の状態でいきなりどうしますか?と私に聞かれて、私が独断で判断できるんだったら、うーん、

  • ア)従来型の保険証に戻すか、又は
  • イ)トラブルを解決したうえで従来型の保険証にない価値を出して(診療情報・検診情報・薬剤情報の閲覧以外の価値を出すべき!)、トラブル解決後にマイナ保険証に一本化する

かですかねえ。

ア)とイ)のどちらがコストが安いか、医療にプラスになる確率が高いか、国民利便性が高いか、手間削減・無駄削減につながるか、不正を是正できるかなど、複数観点から、公開の場で検討していくべきではないかと思います。

 

まあ、本来であれば国の審議会とかでこのあたりのことをじっくり資料化したうえで、議論するのが普通なわけですが。

EHRの話とか、医療情報の話とかも、結局紐づけをどうするのか、この問題放置して、きれいなことだけ言っていても、トラブルが発生するだけで、どうしようもないように思います。

 

23.8.3追記

www.jiji.com

www.fnn.jp

 

保険証廃止の延期はせず、資格確認証の有効期限を5年以内とし、資格確認証は希望者に交付ではなくマイナ保険証を持っていない人全員に職権交付すると。マイナ保険証の登録解除も認めるということらしい。資格確認書は従前の保険証のようにカード形式にすると。

要は、上記3ですね。

 

コストかけて、なんで保険証を廃止して、資格確認証にするのか、と。これだとマイナ保険証のトラブル解消に期限をつけずに運用して、だらだらとトラブルが続き、デジタル(マイナ保険証)と紙(資格確認証)の二重運用が続き、コスト高となる危険性があり、誰得という感じが…。ただ、資格確認証発行を新しい事務フローとせずに、これまでの保険証と全く同じ事務フローにして、名称だけ「被保険者証」から「資格確認証」という名前にすれば、資格確認証関連でのミスは極めて起こりづらいとは思います。あ、でもあれですね、マイナ保険証を持ってない人/解除した人に資格確認証を発行する運用プロセスは、これまでの保険証運用プロセスにはなかったところだから、ここにミスが生じる可能性があり…。ミス起きないように頑張ってほしいです、本当に。

 

  • 保険証を廃止して資格確認証にすることにかかる費用
  • マイナ保険証にかかる費用

これを明らかにして、従前の保険証との費用対効果を明らかにすべきだと思います。従前より仮に費用が掛かったとしても、それを上回る効果があれば合理的ともいえるが、費用がかかり効果もそこまで上がらないとすると、いかがなものか。

 

マイナンバーに限らず、コロナにしても何にしても、「かけた税金(公務員の人件費含む)」と「効果」を情報公開して、政治家と役人の評価を行うべきではないでしょうか。

政治家は選挙の際に、選挙公報や新聞、投票所の壁などにその評価を公示する。野党や新人候補は、与党政治家のその評価の批評や、自分が与党になったらどういう効果を約束するかを掲げるとか。

役人は内閣人事局云々ではなく、その評価によって昇進やボーナスが決まることを検討するなど。

今のママだと、いくら税金をかけても、時間をかけても、効果検証すらされない、費用検証すら財務省査定と会計検査院ぐらいしかないのでは? 有権者に分かりやすい形で示すべきだと思います。