ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

広告メール規制を概観する(特電法、特商法)

詐欺メールや架空請求メールなんかを送ってはいけないことは当然ですが、そのような内容ではない、正常なビジネスの広告・宣伝メールについても、法律で規制されています。基本的に、本人同意がない限り、メール送信ができないように制度設計されています(オプトイン方式)。

 

規制法としては、
1)特電法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律
2)特商法特定商取引に関する法律

3)個人情報保護法です。
1)3)は業種・業態を問わずに誰にでもかかるルール、2)は通信販売等の業態に対してかかるルールです。

以下ではそれぞれ分けてみていきます。

 

 

1)特電法

2)特商法

  • 制裁:大臣による指示・公表(法14、38、56条)、大臣による業務停止命令・公表(法15、39、57条)、大臣による業務開始禁止・公表(法15条の2、39条の2、57条の2)、報告及び立入検査(法66条)
  • 罰則:100万円以下の罰金(法72条1項2・3号)、一定の場合には一年以下の懲役又は二百万円以下の罰金又は併科(法72条2項)
  • 条文
    信販売 法12条の3(FAXが12条の5)
    信販売電子メール広告受託事業者 法12条の4
    連鎖販売取引 法36条の3
    連鎖販売取引電子メール広告受託事業者 法36条の4
    業務提供誘引販売取引(「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと。) 法54条の3
    業務提供誘引販売取引電子メール広告受託事業者 法54条の4

3)個人情報保護法

  • 法律 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000057
  • 個人情報は目的内利用が原則です。法定された例外事由に当たらない限り、あらかじめ特定された利用目的の範囲内で利用しなければなりません(法16条)。
  • メールアドレスは概ね個人情報に当たる(当たらない場合もありますが…)ので、プライバシーポリシー等で自社で特定した利用目的を確認して、その範囲内のメール送信等の利用であることを確認する必要があります
  • 本人が、DM・電話・メール等の停止を求める意思を表示したにもかかわらず、繰り返し送付されている場合、本人は保有個人データの利用停止等を請求することができます(法35条5項、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」3-8-5-1(3)③)。個人情報の不適正利用(個人情報保護法19条)に該当する可能性もあります。
  • 制裁:個人情報保護委員会による助言・指導(法41)、個人情報保護委員会による勧告・命令(法42)、報告及び立入検査(法40)
  • 罰則:命令違反に対して一年以下の懲役又は百万円以下の罰金(法83)
    なお、さすがに、法84の盗用罪に当たる場合はごく稀であると思います。