ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

日本郵便「タウンプラス」でマスク配布?

 

1.タウンプラス?

前にブログで、日本郵便のシステムを使ってマスクを配布するという件について、おそらく日本郵便側で住民票住所地全ての情報をJ-LISからもらって対応しているのではないかなどと記載しましたが、ネット検索すると、北海道は、「タウンプラス」というもので、マスクが配布されたとのこと。今回の全国へのマスク配布が具体的にどのシステムを使うのかは私ではわかりませんが、タウンプラスっていうサービスは、住民票住所地を使っていなそうです。

www.asahi.com

 

togetter.com

 

2.なぜ全国民の住所がわかるのか

 

このタウンプラス、どういう仕組みになっているのか、いまいちよくわかりません。

 

日本郵便だから、ヤマトとか佐川とかと違って、全国民の郵便受けの場所を把握しているということなのでしょうか。どうやって全郵便受けの場所を把握しているのか?郵便局員さんの目視確認で、全て確認しているということ?

それとも、郵便局を使ったことのある住所全てを記録しているということ? それだと、全国民にはならないのでは? いくらゆうパックだけじゃなくて、はがき・封書、レターパックとか現金書留とかいろんなものがあるとはいえ、全国民が日本郵便の何らかのサービスを確実に使っているわけではないと思うので。郵便局の全履歴だけでは、漏れがあるのでは。

 

タウンプラス、宛名要らずで対象区域に送れるようで、かつ住居だけじゃなくてオフィスも含まれるよう。そうだとすると、郵便局員さんの目視確認で、全ての郵便受けを確認しているということなのでしょうか?

 

タウンプラスの効果やタウンメールの料金比較で徹底分解(DMリーチ率が本当に高いの?)郵便局ポスティング|ディマール

『ご指定のエリア(町丁目単位)の全郵便受け箱にあて名なしDMの配達が可能な郵便サービスです』

 

法的に考えてみると、郵便受けは、目視確認できる場所にあれば、それは公の場所で公開されているわけだから、そこの場所を全収集しても、プライバシー権侵害の問題にはなりづらい。

他方で、郵便局を使ったことのある住所全てを記録していて、それをマスク配布に使うとすれば、それは目的外利用になるリスクもある(今回は公益のために法的に許容される目的外利用にはなると思うが)。もっとも利用目的をもっと広めに特定しているはずなので、目的外利用にもならない可能性が高いものの、公益以外のポスティングのために、郵便局を使ったことのある住所全部をポスティングのために利用する行為は、消費者側の予測可能性を欠き、目的外利用と判断される可能性もあり、また社会的受容性も低いとも考えられる。

なので、コンプライアンスの観点からは、郵便局の利用履歴の再利用よりも、郵便受けの目視確認の方が、リスクは低いとも考えられる。

 

しかし、郵便局が、ポスティングをやっているのか。知らなかった。

 

3.年収データと掛け合わせることも可能?

www.jp-md.co.jp

 

GIS分析によるターゲットエリアセグメントが可能

性別、年代、居住形態、年収等で「指定項目の含有率が高いエリア」をランキング形式で提示します。
有料オプションです。 

 

www.japanmail.co.jp

セグメント(ターゲットの区分)ができる

性別・年齢階層・未既婚・家族構成・住宅別世帯・推計年収データなどにそって、ターゲットをセグメントしてDMを送ることが出来ます。

 

こういうサイトを見ると、タウンプラスで、年収推計データと掛け合わせて、高年収層にのみポスティングする、低年収層にのみポスティングすることも可能っぽい。

この年収推定データはどこから持ってきているのか。

 

fyeo-brain.com

通常ポスティングで入れないセキュリティが高いマンションでも、半分くらいはお届けしてくれるケースがあります。実際に高層タワーマンションが大量供給しているい武蔵小杉エリアでも、約50%程度はお届けできます。これは都心部で考えると嬉しい情報かと思います。高層タワーマンションの同梱サービスも増えてきているので、単価をみて合わせ技で調整もありかもしれません。

郵便局ポスティングサービスの配達地域指定郵便「タウンメール・タウンプラス」の良いところはもう一つ上げるならば、「地域」や「丁目」単位でマンション名など、細かい範囲を指定して配達してもらえることです。(※但し、広告主からマンション配達リストの提供が必要で、必ず配達してくれるわけではありません。)

やはり、郵便局ポスティングの「タウンメール&タウンプラス」が最も凄いところは、対象エリアが日本全国であり、超絶高級マンションがあったとしても、郵便配達を拒むところはウルトラセキュリティ強以外はありませんから、殆どはポストまでもリーチしやすいことです。

利用シーンとしては、GIS分析により町丁目の選択が可能ですので、性別、年代、居住形態、年収などで「指定セグメントの含有率が高い地域」を分析し、ランキング形式で提示してくれます。

※注意点は商圏分析は国勢調査データになりますので、ポスティング業者とやってることは何も変わりません。

 

国勢調査のデータから情報をひっぱってきていると上のサイトに書いてあるが、国勢調査データって、地域ごとの年収も載っていたんだったか?国勢調査のデータを調べてないので何とも言えないが、あくまで国勢調査のデータとは無関係で、なんとなくイメージ的に高年収そうなエリアとかに配るということ?謎。

 

jag-japan.com

↑のサイトによると

「住宅土地統計調査」は市町村単位でしかデータの記載がなく、「国勢調査」の項目にも所得や年収を問う項目はありません。弊社では、「住宅土地統計調査」および「国勢調査」のデータを用い、全国の小地域の平均世帯年収を推計しました。

 

年収データというのは、郵便局がやっているサービスでも、国勢調査のデータでもなく、民間側が自分で推計しているデータということ?

タウンプラスを使う際に、民間側の推計データと掛け合わせることで、年収が高そうな地域の全郵便受けにポスティングできるっていうことなのかな?

 

ポスティング業界のことは全く知らないので、今回ちょっとネット検索して、結構びっくりしたところです。

年収推計というのは、プライバシー侵害のリスクがかなりありますが、そうはいっても、では、街を実際に歩いてみて、おうちの大きさ・立派さなどを目視で確認していって、訪問したりポスティングしたりするのと、どう違うのかという問題はあります。そういう足で稼ぐことをしないで、データなら全網羅できるという話はありますが、年収データをもらえるわけじゃなくて、あくまで民間側の推計だと、推計であって正確なデータではないし、みたいな。推計の根拠は何なのかというのはかなり気になりますが。あとはあれか、衛星写真を全部見ていって、おうちの大きさを調べるっていうことも、今だとできますね。ドローンで見ていくとか。まあそういうデータの取得方法もあるし、いろんな方法がある中で、それらを法的には、どう解釈すればよいのか、明確な解がないというか。

上に書いた、なぜ全国民の住所がわかるのかという点も、住民票住所地情報をJ-LISから法律に基づいてもらうのであれば、法律の根拠がありますが、そうではなく、郵便受けの目視確認の場合は、公開の場所を目視で確認するということで、そうじゃなくて過去の利用履歴の利用であれば目的外利用リスクがあるといっても、それってあくまで法解釈の問題であって、実態的には、全国民の郵便受けに投函するっていうこととほぼ変わらないから、なんか、法解釈をしていても無駄っていうか、ちょっと書きたいことがよくわからなくなってきましたが。