ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

ビジネス促進と法令遵守のために弁護士ができること

弁護士として企業のご相談に乗っていると、「こういうビジネスをしたいが、こういう法令に違反しないか?」という問題によく直面します。

そこで、新しいビジネスを開拓しようとする企業クライアントのために弁護士ができることを、雑駁ですが、概観したいと思います。

1.弁護士意見

  • 弁護士として、こういうビジネスなら法令に違反しないよという意見を述べたり、意見書を作成すること
  • もっとも、法令に違反しないことがある程度明確なものに限定される
  • 意見書があれば、会社としてやるべき検討を行っているということの立証に使える(取締役の善管注意義務違反訴訟などでも使えるだろう)

2.当局交渉

  • 規制当局である国の行政機関と弁護士として交渉すること
  • 企業クライアント自ら交渉することも当然可能だが、弁護士が入ることで、よりクライアントの立場から法令に即した議論を展開できることが期待される
  • これ、意外と得意。というか、内閣官房時代、各省と、はたまた内閣官房内で、ガチな闘いをかなり長いこと繰り広げた経験から、各省との調整・交渉は、修羅場の数をかなり経験している。国に3年半勤めてから弁護士に戻ってきたら、修羅場経験が豊富なため、弁護士業務でも相手方との交渉でも動じにくいという長所を獲得していた。

3.グレーゾーン解消制度

  • 具体的なビジネスの内容と規制法について自己の意見を当局に述べ、当局の大臣名で「OK」又は「NG」の回答を書面でもらう
  • 経済産業省の制度。とても良い制度であると思います。実際、今、私、これ使っています。
  • 企業クライアント自ら交渉することも当然可能だが、弁護士が入ることで、よりクライアントの立場から法令に即した議論を展開できることが期待される

4.企業実証特例制度

  • 規制の特例を認めてもらう。
  • 経済産業省の制度。ハードルが高そうと思い、まだやったことはありません。意外とハードルは高くないのだろうか。特区とかよりは、ハードルは低そうだけど、どうなのだろうか。

5.規制の「サンドボックス」制度

  • 規制が適用されない環境の下で社会実験的な実証を行うことができる制度
  • 今、国の方で制度実装を検討中らしい。首相官邸で資料あり。今日、お話を聞いたので、メモ。

6.ノーアクションレター

  • 法令に基づく不利益処分が下されるかどうかなどを、書面で行政機関から回答してもらえる制度
  • 行政機関内での認知度が低いが、実際やってみたら、使えそうではあるような気がする。使ったことはない。

ただ、2〜6はあくまで、行政の法令解釈の話又は行政による不利益処分の回避の話であり、これらをやったからといって裁判で敗訴しないとは限りません。もっとも、行政の有権解釈を確認したということは、訴訟上の証拠として使うことはできるように考えられます。対・行政とともに、対・訴訟リスクも併せて検討していくことが重要です。

例えば、個人情報でいえば、対・行政では、行政による指導・勧告・命令などが下るかどうかということであり、対・訴訟リスクであれば、訴訟を提起される可能性と敗訴する可能性と賠償額の範囲の話を検討していくことが必要です。