ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

医療ビッグデータ法(次世代医療基盤法)の国会審議の概要メモ(衆議院)

医療ビッグデータ法(次世代医療基盤法)こと、「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」の国会審議(衆議院)のメモです。

第193回国会 内閣委員会 第6号(平成29年4月12日(水曜日)→議事録はコチラ

  • 身近な例
    • ○神山(洋)委員 例えば私が病院に行きました。風邪ですと診断が出ました。その病院が、認定事業者からオーダーがあって、私の生データが認定事業者に行きます。認定事業者が匿名加工処理を施して、それが利活用者に行きますというデータの流れになります。その最初の私の情報を、では、どうするかというときに、場合によっては拒否することもできますよという、オプトアウトという仕組みも設けられているということになるわけです。
  • オプトアウトはできるが、既に提供された情報の削除はできない
    • ○初鹿委員 医療機関に初診で行きます、体のぐあいが悪いということで。検査を何度も何度もやっても、その原因がわかりません。最初に、初診のときに情報を提供しますということを聞かれました。そのときはそれほど深く考えずに、いいですよという答えをしていました。一年ぐらいいろいろな検査をやったら、希少難病にかかっているということがわかりました。しかも遺伝性の病である。それを知ったときに、本人がその情報をやはり人に知られたくない、そういう意識になることはあると思うんですよね。そのときに確認をする機会がなかったためにそのままになって情報が提供され続ける、これはまさに患者の側からすれば不利益ですよね。この法案の仕立てだと、後から申し出があれば停止をすることはできるということになっておりますよね。いいんですよね、停止で。ところが、過去提供してしまった情報を、ではこれを引き戻すというか消去をするとか、そういうことができるようになっているのかどうかがこの法文だと読み取れないんですけれども、過去に提供してしまったデータを取り戻すというんでしょうかね、消去をするというんでしょうか、それはできるんでしょうか。
    • ○武村大臣政務官 本法案では、患者が認定事業者に対する医療情報の提供の停止を求めることはいつでも可能でありますが、医療機関等から認定事業者に対して既に提供された医療情報の削除を求めることは規定しておりません。なお、認定事業者が本人の希望に応じて任意にこうした削除等の対応を行うことは可能だというふうに考えています。
  • 自分のデータがどこに渡ったか知る術はない
    • ○島津委員 自分の情報がどこにどのように使われているか、これは知る権利があるわけですけれども、それでは、今回の法案で、渡した自分の情報がどう使われているか、知ることができるという仕組みはあるんでしょうか。
    • ○大島政府参考人 今回の利用は、匿名加工医療情報という形で利用いたします。この匿名加工医療情報は、特定の個人を識別することができないように医療情報を加工して得られた情報でありまして、本人に提示先を明示することは、識別可能性等を高める可能性もあり、適切ではないと考えておりますし、条文には規定はございません。
  • 匿名加工医療情報を利活用する者に限定はない
    • ○藤本政府参考人 新法におきましては、匿名加工医療情報を利用する者について、外形的な基準等による制限は特段設けておりません。他方、本法の規定により、収集された医療情報につきましては、医療分野の研究開発に資するよう、医療情報を整理し、及び加工して匿名加工医療情報を作成する事業の目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならないこととされております
  • 認定機関に製薬会社等がなれるのか?
    • ○初鹿委員 認定匿名加工医療情報作成事業者になるのに、製薬会社などが例えば出資をして別の一般社団法人をつくって認定を受けるということは、この法律では可能なんでしょうか。
    • ○武村大臣政務官 情報の利活用者が出資をした団体も、法律上認定対象から除外はされませんが、認定事業者においてデータの不正な利活用は当然許されるものではありません
    • ○初鹿委員 製薬会社等が出資をしている団体だからといって、直ちに不正があるというふうには申し上げませんが、やはり、国民の側からすると非常に疑義が生じる可能性があるので、私は、できれば、ある程度の制約はする必要があるのではないかというふうに指摘をさせていただきます。では次に、今度は、この認定業者の役員とか、実際に匿名加工や集計や分析をする、作業に当たるような職員が、過去に情報利活用をする製薬会社の社員であったとか、また、製薬会社から報酬を受けて特定の薬の研究をしていたとか、そういう利害関係にあったことがあるような場合に、匿名加工、集計したり分析したりする、そういう職につくことは可能なんでしょうか
    • ○武村大臣政務官 認定事業者の役員や従業員の欠格事由としましては、法律上、情報利活用者との利益相反の関係にある者は除外されておりませんが、先ほども触れましたが、目的外の情報の使用や不当な利用は認められないことでありまして、是正命令や罰則の対象となっているところでございます。
    • ○初鹿委員 利益相反にある場合でも除外していないというのは、私はちょっと、やはり問題ではないかなと思うんです。やはり、この辺が揺らいでしまうと、国民から疑問を呈されるようなことになってしまうと、制度全体の信頼性が損なわれると思いますので、ここは徹底していただきたいと思います。
    • ○初鹿委員 医療機関などから入手をした生の情報が、認定事業者からさらに委託をした先に行くわけですよね、受託事業者についても、今まで言ったとおり、製薬会社等の情報利活用者と利益相反にあるような方でも、そこで従事をすることは可能なんですよね。
    • ○大島政府参考人 委託事業者のお尋ねでございますが、先ほど来と同じ構造になっておりまして、匿名加工の作業を行う認定事業者の従業員の欠格事由として利益相反の規定がないことと同様に、委託事業についても同様でございます。
    • ○初鹿委員 やはり、かかわる人の数が多くなればなるほど情報漏えいのリスクというのは高まると思うんですよ。やはり働く人がどういう人かということは非常に重要だというふうに思います。そこで、一つ提案ですけれども、情報漏えいの事件というとすぐに多分皆さんが思い浮かべるのは、ベネッセの情報漏えいの事件が思い浮かぶと思います、最近あったことでありますので。このベネッセの情報漏えいをした犯人の方は、借金があって、その借金を返済するために情報を売っていたということなんですね。この方は主にギャンブルなんですよね、ギャンブルなんですよ。そういう人は情報漏えいをするリスクが普通の人よりも高いと言えると思います。ですので、少なくとも、認定機関で働く人についてはギャンブル依存症かどうかのスクリーニングテストを必ず受けさせる、これを必須にする必要があると思います。それと、やはり、管理をする役員なり労務管理をするような方に、ギャンブル依存症というのはどういうものなのか、そういう研修をしっかり受けて知識を持っておく必要があると思うんですよ。
  • 生データを第三者提供できる場合の具体例
    • ○大島政府参考人 法令に基づく場合という一号の方は、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者による児童相談所への通告。それから、二号は、人命の救助、災害の支援その他非常の事態への対応のために緊急の必要がある場合となっておりまして、こちらは、大災害で病院のカルテ等が全焼し、喪失し、人命にかかわる場合などを考えていますが、これは、いずれにしましても、こういった取り組みをしなければならないという規定ではなく、仮にこういった状況下で提供しても法令違反を問われない、そういう規定でございます。
  • 認定機関が医療ビッグデータ法を利用して情報を提供するほか、そもそも医療機関は個情法で匿名加工情報を提供できるのでは?
    • ○北神委員 二重の基準になっちゃって、認定事業者に対しては厳し目の基準を設け、しかし、病院が自分たちで匿名加工化するんだったら、そこは何も本人確認も要らないし、いわゆる国のお墨つきも要らない、自分たちが適当だと思う匿名加工化技術で出すことができる。
    • ○大島政府参考人 今委員から御指摘がありました、医療機関自身が匿名加工するということでございますが、現行の個人情報保護法上可能でございまして、その場合には、本人の同意なく、第三者に匿名加工した情報を提供することは可能となっております。ただ、一方で、あくまで責任は医療機関に残りますので、万が一いろいろ事故なりがありましたときには、まさにその病院そのものが責任を全面に問われるということになります。それから、認定事業者は、複数の医療機関から集めた情報を全体一括して匿名加工いたしますけれども、病院の場合は、みずからが持っている情報の範囲の中だけで匿名加工するということになりますので、いわばn数が小さいものですから、若干、匿名加工しても価値が落ちるというところはございます。そういう意味で、全体として見ればそれなりのバランスかなという気もいたしますが、ただ、いずれにしましても、この法律が施行して、運用状況を見ながら、またそういった点につきましても検証していく必要があるとは考えております。
  • 病院にメリットはあるのか。費用は誰が払うのか。認定機関は儲けられるのか。
    • ○藤本政府参考人 専用回線の御質問でございますけれども、医療機関から認定事業者に情報を提供する際には専用回線を使用するということにしております。この費用負担に関しましては、情報提供を受ける認定事業者と情報提供を行う医療機関等の間で取り決めることになりますけれども、認定事業者への情報提供に伴い医療機関などに発生するコストにつきましては、認定事業者が当該コストの支払いを行うことは考えられると考えております。
    • ○初鹿委員 認定事業者が収入として得るのは、情報利活用者に情報を出すのに対価としてもらうということだと思うんですね。法文の説明資料によると、認定事業者は過度な利潤を生じさせないこととなっているということなんですが、過度な利潤というのは具体的にどういう水準なんですか。
    • ○武村大臣政務官 認定事業者の事業運営に要する経費は、基本的に、匿名加工医療情報の利活用者が負担することとなります。そのため、利活用者が負担する利用料の総額は、認定事業者が継続的な事業運営を確保できるように、情報の収集、加工、提供に要するコストを基本に、適度のマージンを上乗せしたものとなります。個々の利用料の設定は認定事業者の裁量によりますが、全体としての収支につきまして、認定申請時に事業計画の提出を求めるとともに、認定後も適宜に報告を求めて確認することとなります。こうした利用料の考え方につきましては、基本方針や認定基準の策定に際して示していく予定でございます。
    • ○初鹿委員 医療機関というのはメリットがないじゃないですか、そう考えると。全体として国民の医療や福祉に資するというメリットはあるかもしれないけれども、個々の医療機関で見たら、手間がかかるだけで、それほどメリットがないわけです。医療機関が協力に参加をしやすくなるように診療報酬で情報提供をすることになったら、幾らか診療報酬で点数をつけて収入になるようにするというような考えを持っているんでしょうか
    • ○浜谷政府参考人 診療報酬は、御案内のとおり、疾病の治療など、療養の給付に要する費用として支払われるものでございますので、第三者に対するデータ提供など、患者の治療と直接関係しないサービスを評価することにつきましては、慎重な検討が必要と考えております。
    • ○初鹿委員 慎重な検討じゃなくて、私は、絶対にこれはやるべきじゃないと思いますよ。大きな目で見れば、新しい治療法ができたりということで患者のメリットになる、だから診療報酬で見てもいいんだなんという議論になりかねないんですけれども、やはりこれは、結果として、製薬会社や情報を利活用する人に対してのメリットの方が圧倒的に多いわけですから、被保険者が負担をしている保険料を使うということは絶対にやめていただきたいと思いますので、そこは忠告をさせていただきます。
  • 認定に際する技術力の評価
    • ○北神委員 準同型暗号とか差動型暗号化とか、そういういろいろな技術があって、細かい話のようですけれども、多分、匿名加工化事業者を認定する際に、もう余り古いような暗号化技術を使っているようなところを認定するわけにはいかないと思うんですね。ところが、それを役所の方でわかっていなかったら、何となく難しい言葉だし、何かこれはいけそうやなと思ってお墨つきをしちゃうと、これは問題なので、そこをもっと具体的な、次の質問に移りますけれども、認定基準のところに、今最先端のそういう暗号化技術というものを、ちゃんとそういう能力があるのかどうかというものを、私は入れないといけないと思うんですけれども、そこはいかがですか。
    • ○藤本政府参考人 全体的に、本当に匿名加工が十分にできているかどうかということをアセスするような、そういう技術的な手法が出てきております。これはコンピューターの能力の進歩の高まりによって、いろいろな計算ができるようになってきておりますので、そういうものを、日々最先端を取り入れるような仕組みを、この制度の運用において取り入れていきたいというふうに考えております。
    • ○北神委員 情報通信に通じた若い人材を、任期つきなのかどういう形か、そこは問いませんけれども、やはりこういう人をどんどんふやすべきだと思いますし、我々野党もそういったところはやはり応援すべきだというふうに思います
  • データの信頼性
    • ○初鹿委員 この国会で、厚生労働委員会所管で臨床研究法案という法律が審議をされて、成立いたしました。御存じのとおり、高血圧のディオバンの臨床研究でデータの不正操作というものがあって、この法案が作成をされることになったわけであります。つまり、認定機関がいろいろな情報を集約して、匿名加工して集め、それを分析したりしていくときに、データのこういう不正な加工のようなことが仮に起こってしまったら、これはもう制度の信頼性は失墜してしまうわけですよね。また、きのう、御存じの方もいると思いますが、バイエルという会社の社員が無断で二百人のカルテを閲覧していたという事実が明らかになりました。厚生労働大臣も記者の前で、大変遺憾だというようなことを言っております。こういうように、製薬会社、薬をつくっている側からすれば、個人情報、患者さんの情報というのは非常に喉から手が出るぐらいに欲しい情報なんですよね。そういうものであるということを考えて、認定機関のあり方というのはまず考えていかなければいけないと思うんです。
  • 支援機関が法律から落ちた理由
    • ○大島政府参考人 御指摘のように、この法案のもととなりましたワーキンググループの中の議論では、複数の認定事業者が保有する医療情報の突合を可能とするために支援機関を設けることが検討されました。他方で、この支援機関の機能がいたずらに肥大することのないよう、そのあり方については、可能な限り、認定事業者自身の取り組みを促した上で、認定事業者の規模あるいは支援機関による統合に対するニーズ、こういったことを踏まえて検討すべきだともされました。こうした中、今回の法案では、認定事業者相互の医療情報の提供を可能とすることにしておりまして、医療情報の突合は、認定事業者間相互において可能という形にしております。こういった仕組みがいいのか、それとも支援機関というものを上に一つ用意した方がいいのかといったことにつきましては、施行後の認定事業者の事業運営状況等も踏まえながら、将来的には検討してまいりたいと考えております。
  • 統計情報は新法後も従来通り提供できるのか?
    • ○大島政府参考人 統計情報のお尋ねでございます。個人情報保護法におきまして、統計情報は、特定の個人との対応関係が排斥されている限りにおいては、個人情報にも匿名加工情報にも該当しない、規制の対象外というふうにされております。今回の法案の中におきましても、同様の扱いとしております。このため、認定事業者は、今回の法案に基づいて提供を受けました医療情報から作成した統計情報を第三者に提供することは可能、これは有償であっても無償であっても可能というふうに考えております。
    • ○濱村委員 匿名加工情報と統計情報というのをどこでどう線引きできるかというのは、結構神学論争的なところはあるんですけれども、これはもう適切にやっていくしかないのかなというふうに思っております。
  • 認定事業者がEHR事業をできるのか?
    • ○大島政府参考人 認定事業者につきまして、今回の法案の中では、医療機関から提供を受けました医療情報につきまして、医療分野の研究開発に資するよう加工し提供するということで、この目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱ってはならないというふうに規定を定めております。したがいまして、認定事業者がこの法案に基づく事業として、いわゆるEHR事業に、このスキーム、この仕組みで得た医療情報を用いることはできないという整理になります。なお、そうではありますが、認定を受けた法人が、この認定事業とは別にいわゆるEHR事業を行うということまでは禁止をされていないという整理になっております。
    • ○濱村委員 認定を受けた事業というものは匿名加工する事業でございますので、その事業と別建てであればやっても構いませんよということだと思います。これはすごく大事なことで、実は、これがそもそも事業部が混在、部署が接近していて、もう個人情報が、匿名加工しているような人たちと個人に情報を提供する人たちと同じ部隊ということになってしまうと、匿名加工されているのかどうかというところが非常に危うくなりますので、これは事業者における適切な運営が必要なのであろうというふうに思う次第でございます。
  • 匿名加工の基準は?
    • ○濱村委員 これは、主務省庁において認定事業者に対して示していくということでありますが、恐らく、それはそうなんでしょうねというふうには思うんです。一方で、ガイドラインにはどう書いてあるかというと、実際にどのような記述等が特異であるかどうかは、情報の性質等を勘案して、個別の事案ごとに客観的に判断する必要があると書いてあるんですね。これは恐らく、個別の事例ごとにと言っているのは、医療なら医療の分野でどうなのかという話なんだと思うんです。こういう疾病であれば患者数はこれぐらいいますと。なので、具体的な数までは定めなくてもいいのかしらと私なんかは思いますけれども、こういう疾病について患者数がこれぐらいなので、ここまでは丸めてくださいよ、匿名加工してくださいよ、そういう具体的なレベルにまで落としたガイドラインなどが発出されるのであろうというふうに期待をしておりますので、これは今後議論をしていただく分野だと思いますので、取り組みをぜひよろしくお願いしたいと思います。
  • 認定機関への監督
    • ○島津委員  匿名加工する際に、利用者の求めに応じたデータを提供するわけですけれども、データが足らずに水増しをする、こういうことなんかも考えられないわけではないわけです。データ操作。意図的につくられたデータで研究などすれば、とんでもない結果になるおそれもあるわけです。認定を受けた事業者が適正に事業を進めていけるかどうか、このチェックというのはどうなんでしょうか。
    • ○大島政府参考人 御指摘ありましたように、一定期間安定的に事業運営していくということは重要なポイントでございます。認定申請に際しまして、事業計画、事業運営に関する計画の提出を求めることとしておりまして、その中で、長期にわたる予定もチェックしていくことにしていきたいと考えております。 認定後も、その進捗状況につきまして随時確認を怠りなくやっていく予定としております。認定事業者は非常に重要な役を担いますので、監督官庁としましては、常に頻繁にやりとりして状況を確認し、チェックというか、恒常的な動きをウオッチしていきたいと思っております。
  • 所属グループへの差別のおそれ
    • ○緒方委員 集合体であるところのビッグデータ、例えば先ほど言いました学校とか事業所とか、もっと言うと地方自治体とか、そういった集合体であるところのビッグデータで特異値が出る可能性というのがありますね。例えば風土病があるとか、特定の自治体に特定の疾患が多いとかいうことが出てくるわけでありまして、これは、出方によっては、その集団、いろいろな集団に対する風評被害が生じる可能性というのがあります。そういった特定の自治体とか地域とかに対する不当な差別、そういったものが生じないようにすべきだ、そういうものを防止すべきだというふうに思いますが、内閣府、いかがですか。
    • ○大島政府参考人 認定事業者の事業運営に際しまして、その取り扱う医療情報について、規定上は、本人または子孫という形で、不当な差別、偏見その他の不利益が生じないための措置に関する事項を基本方針に明記することという規定がございます。一定の地域あるいは団体に属する個人の方が、そういう不利益についても同様、そういった不利益、偏見等が生じないようにする措置は必要、重要な点と考えています。
  • 既存業者との差異
    • 水町コメント)あまり内容のない答弁
    • ○藤本政府参考人 医療情報を匿名加工する民間の事業者は幾つか存在しております。主にレセプト情報を中心に、個別の医療機関から匿名加工した上で収集いたしまして、それを医療データとして、大学等の研究機関、医療機関健康保険組合などの保険者に提供していく。それから、あるいは解析サービスを請け負ってそのデータを解析して、例えば統計的な情報にして渡す、そういうことをやっているというふうに承知しております。
    • ○濱村委員 では次に、重ねて、匿名加工事業者と、今度、新しい、当法案で発生する認定匿名加工事業者、これについては、どういった点が違って、認定事業者の方にはどういう能力が必要と考えますか。
    • ○藤本政府参考人 現状におきまして、医療情報を匿名加工する民間の事業者におきましては、先ほど申し上げましたように、主に医療機関ごとにレセプト情報を匿名加工した情報を用いているところでございます。これに対しまして、新法における認定を受けた事業者は、現状において医療情報の利活用の中心でありますレセプトデータのみならず、診療行為の結果である検査の結果、例えば血液検査の結果ですとか画像診断の画像情報、診断病名等、こういうアウトカムデータも収集することが可能となります。それから、医療情報の利活用を推進するためには、多様な医療分野の研究開発に応じて、その研究をする利活用者のニーズを的確に酌み取りつつ、こんなデータが必要で、こんなデータセットをこんなふうにして使っていくということをきちっと議論できるということが重要でございます。こういう能力をまず認定事業者は持つということと、それから、必要な医療情報を収集し、必要に応じて突合していく。例えば病院間をまたがるデータ、糖尿病であれば、診療所と病院にまたがるようなデータ、こういうものもきちっと突合した上で、その利活用のニーズに応じて整理、加工して、さらに適切に匿名加工した上で提供できるようにする、そういう能力が重要だというふうに考えております。こうした業務に知見を有する専門人材を確保して、創意工夫を生かして機動的な対応が図られるよう、民間の事業者の認定の仕組みを導入するということにしております。事業者の認定に際しましては、研究開発に必要で、かつ利活用可能な質の高い医療情報を効果的に収集する能力、これは研究の内容もわからないといけませんし、医療機関の実情もわからないといけない。それから、個人が特定できないようにしつつも、研究開発に役立つような有用性を持った匿名加工データを確実につくっていく能力を求めたいというふうに考えております。
  • 漏えい時の対応
    • ○藤本政府参考人 万が一、医療情報の漏えい等により何らかの被害が発生した場合につきましては、例えば損害賠償保険への加入などによる対応を含め、認定事業者から適切な補償を行うことになるというふうに考えております。
  • オプトアウトについて
    • ○神山(洋)委員 頭一発で一回やったら、その人がその後何回も何回も病院に来たときにずっとその意思が存続されるということで果たしていいのか。場合によっては、仮に毎回毎回はできないんだとすれば、では一年に一回はやりましょうとか、いろいろな考え方があると思うんですよね。そこは、いみじくもさっきおっしゃった医療機関の手間という観点だけで考えることは厳に慎んでいただきたい、このことだけは強く申し上げておきます。そこに穴があいた瞬間にこの制度は回らなくなりますよ、信頼性がなくなりますから。
    • ○大島政府参考人 オプトアウトの具体的な手続でございますが、実際には、受付窓口や待ち時間の間に文書を配るなどして通知をすることになるというふうに考えております。施行に向けて基本方針あるいは省令を定める中で検討したいと思っておりますが、今のところ文書のみを考えておりますが、もう少し時代が進めばタブレットによる提示とかもあり得るかなという議論はしております。
    • ○島津委員 文面が、こっちの病院のときには非常にわかりやすく書いてあった、違う病院へ行ったら何かよくわからなかった。今でも約款で、長いものが出てきて、皆余り読まずに、どうしたってこうするような場合もあるんですけれども、そういう違いというのは出てくることがあるんですか。
    • ○大島政府参考人 ひな形的なものを示すことは考える予定にしております。
    • ○島津委員 ひな形ですので、必要な項目が入っていれば任せられるということだと思うんですけれども、これは本当に大事なことですので、やはりきちんと、ひな形のみならず、統一的な形式なりなんなり、そういう検討も必要があるんじゃないかと思うんです。それでは、急患で来た場合、これは当然、そんな書面なんか見られないわけですから、こういう場合はどうなるんでしょうか。
    • ○大島政府参考人 その場合は、また落ちついた段階で、来られた最初のときということを考えております。
    • ○大島政府参考人 患者が医療情報の提供を拒否した場合でありましても、当該患者に不利益は定めておりませんし、そういうことにはならないように指導してまいります。
  • 識別禁止の直罰化について
    • ○北神委員 今回、匿名加工化された情報を使って本人を識別化しようとした場合に、この法律案ではいわゆる是正措置ということになると思うんですが、それでは私は軽いなと。というのは、是正措置ぐらいだったら、認定機関も、悪意に満ちている人がいたら、一回ちょっと情報を第三者に提供して、見つかったら是正措置が来て、済みませんでした、二度とやりませんという話で終わってしまうわけですよね。 だから、先ほど申し上げたように、識別化しようとするその行為自体を罰則するという考えはないのか、お聞きしたいと思います。
    • ○大島政府参考人 識別しようとして照合する行為そのもの、その段階で直接罰とする考え方もあり得るかとは存じます。今回は、ただ、そういう行為をしようとした段階ではまず是正命令を速やかに出しまして、悪質なもののみを、いわゆる間接罰といいますか、刑事罰にするという仕組みにしているところでございます。
  • 外国企業
    • ○緒方委員 利活用者の中に外国の事業者、例えば外国の巨大な製薬会社とかこういったところの事業者が含まれることはあり得るという理解でございますでしょうか、内閣府
    • ○大島政府参考人 公益性の高い医療分野の研究開発に優先的に対応していくことを基本方針等で明確にしていきたいと考えておりまして、外国法人であれ国内法人であれ、日本にとって公益性の高い医療分野の研究開発というのを優先的な事項として考えたいと思っております。
  • 効果
    • ○越智副大臣 治療の評価等に関する大量の診療データを用いた大規模な研究の実施、また、糖尿病と歯周病のように異なる医療機関や診療領域の情報を統合した治療成績の評価、また、AIも活用して画像データを分析し、医師の診断から治療までを包括的に支援する最先端の診療支援ソフトの開発などが可能になる
    • ○大島政府参考人 治療の効果あるいは効率性といった、たくさんのデータを使った研究の実施が可能となりまして、より患者さんの状態に応じた適切な医療提供の提案を行うことができるようになります。それから医薬品等の副作用、これも大きな問題ですけれども、この早期発見ですとか安全性の比較などが容易になる
  • 情報は誰のもの?
    • ○神山(洋)委員 私が風邪を引きました、病院に行きました、お医者さんから風邪ですと言われて、薬をこれとこれとこれという形で例えば処方されました、検査の結果はこうこうこうですという、その情報は誰のものかという話です。医療情報、診療だったり検診だったり検査だったりということで、それは病院だったりお医者さんの頭の中も含めて、蓄積をされていくわけです。一体それは誰のものですかという、この所有権の話、大臣はどう整理されていますでしょうか。
    • ○石原国務大臣 やはり情報には所有権は存在しない。しかし、その一方で、何となく気持ち悪いなと思う方がいらっしゃるという委員の指摘ももっともであると思っております。
    • ○神山(洋)委員 今大臣から、情報には所有権は存在しないというお話がありました。ここで学術的な意味も含めた神学論争をするつもりはないのですが、私が病院に行って風邪だと言われたというこの情報は、では、誰のものでもない、ある意味では、誰がどう使ってもいいものであるという考え方ではないのだと思うわけです。それはプライバシーの観点も含めてです。そうすると、これは事前に事務方の方からはコントロール権であるとか利活用権という言葉で説明をされましたけれども、いずれにしてもプライバシーを多分に含んだ個人情報であり、かつ、もっと言えば、これは要配慮情報でもあるわけです。それをどういう考え方の中で整理をするか。所有権でないというのであれば、それは、では、どういう観点で、どういう権利であって、誰がその権利を行使することができ、誰はそこに逆に触れてはならないのだというこの整理は、きちっとされるべきだと私は思うんです。

※時間があれば参議院の審議もまとめるかもしれません。