個人情報というと絶対に保護しなければならないというイメージが強いですが、しかしなぜ個人情報を持っているかというとそれを使うからです。使わないならそもそも持っている意味もないですし、持っているだけで漏えいリスクもあるから、すぐに削除した方がよいでしょう。個人情報というのは保護を大前提としながらも、活用が予定されているものであると考えます。そしてそれは改正前の個人情報保護法時代からも法律に規定されてきたことであると考えます。
前置きが長くなりましたが、「個人情報の保護と利活用の両立」というのが、昨今の私の活動のテーマになっていますが、国・自治体でここ数年のテーマになっているのが、行政が持つビッグデータをどう民間に還元したり、公のために使っていくかということだと思います。こういった経緯から、官デ法等も設立されたものと理解しています。
そのような中、行政機関個人情報保護法や独立行政法人等個人情報保護法が法改正されて非識別加工情報の仕組みが導入されたわけですが、現実問題として活用が難しい状況にあります。それなのに、行政機関や独立行政法人等ですら運用ができるのか謎な非識別加工情報を、自治体でどうしていくのかについて、議論が進められていて、総務省では、「地方公共団体の非識別加工情報の作成・提供に係る効率的な仕組みの在り方に関する検討会」を今年度は立ち上げています。
次世代医療基盤法(医療ビッグデータ法)にいうところの大臣認定事業者(認定匿名加工医療情報作成事業者)のようなものを「作成組織」として国が認定するという案を聞きまして、総務省資料を見ていたところ、とても気になる誤った記述を発見しました。それがタイトルの話です。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000570867.pdf
地方公共団体の非識別加工情報の作成・提供に係る効率的な仕組みの検討の背景及び検討内容(案)
○行政機関等の制度の運用状況
・平成29年度においては、19行政機関及び122独立行政法人等において、提案の募集が実施された(提案の募集対象となった個人情報ファイル数:行政機関283ファイル、独立行政法人等1,649ファイル)。当該募集に対する民間事業者からの提案はなかった。
え??
私は総務省に対し非識別加工情報の提案を平成29年度3月23日にしていますが。平成29年度に「民間事業者からの提案はなかった。」と書いてありますが、これはどういうことなのか??
この記述の元資料は何なんでしょうか?総務省や個人情報保護委員会が公表する統計資料のようなものが元データでしょうか。その元データが探せませんでしたが、いずれにせよ、誤った記載だと思います。総務省から補正要求が平成30年度6月8日に来ていますが、あくまで補正要求であって、提案年月日は平成29年度の3月23日です。なぜ少なくとも1件の提案がなされているのに、0件という記載になってしまっているのか?
総務省に電話するのは嫌だし、まあいいか。とは思うものの、なんだか納得がいかず、ブログに書きました。
最後に「作成組織」についてのコメント。
事業採算性について試料でも触れられていますが、おそらく事業採算性が厳しいので、民間事業としては難しいし、地方共同法人にしても地方公共団体からの拠出金が難しいでしょうし、国費つけるぐらいしか考えにくい気がしますが、国費も税金ですから、事業採算性の低い事業に国費を延々とつけていていいのかという話にもなりますし。なかなか難しいのかなと思います。
非識別加工情報、発想はいいけど、実装は難しいので、もうちょっと抜本的に、国の施策のあり方を変えていかないと厳しいかなと思います。匿名加工情報もそうですけど。