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弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

感想『はじめの一歩を踏み出そう』マイケル・E. ガーバー著

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術 | マイケル・E. ガーバー, Gerber,Michael E., 喜浩, 原田 |本 | 通販 | Amazon

この本、素晴らしいです。本当にすごい。

弁護士として独立したはいいけれども、日々の仕事に追われ、かといって組織運営する能力も全くなく、自分でどうすればいいかわからず、途方に暮れる日々の中、でも、こういう悩みって、ベンチャー企業でもあるだろうし、多くの業種にある悩みだろうし、何らかの本がきっとあるはずと思い、ただどういう本を読めばいいのかわからず、いろいろ悩みましたが、たまたま見つけた本でした。これは本当に素晴らしい本でした。知るきっかけを与えてくれた方、この本を書いてくれた方に心から感謝したいです。そのような、本当に素敵な本です。この本との出会いに感謝したくなるような気付きを与えてくれるような、素敵な本です。

 

「起業家」「マネージャー」「職人」の3人格

  • ダイエットしようとして自分の中の「やせっぽち」と「太っちょ」が戦うように、一人の人間の中に「起業家」「マネージャー」「職人」の3つの人格があり、それらの調和がとれた時に驚くような能力が発揮できる。
  • 典型的なスモールビジネスの経営者は、起業家タイプ10%、マネージャータイプ20%、職人タイプ70%
  • 起業家がビジネスを立ち上げても、マネージャーや職人がいなければ、あっという間に破綻してしまう。かといってマネージャー中心の事業だと、管理仕事が増えるばかりで、何のために管理しているのかがわからなくなってしまう。かといって職人主導だと、次の朝起きてもっと働こう、次の朝も、またその次の朝もと倒れるまで続けてしまう。
  • 起業家は事業全体の大きな絵を描く仕事をする。私の周りにはチャンスがあふれている。これを活かすのに一番いい方法は。私の夢を実現するような事業。人に任せても成功する事業。一度買い物に来た人なら何度でも足を運んでくれるような事業。さあ、どんな事業を始めればいいのだろうか。
  • <感想>たしかに起業家というとジョブスみたいな人を思い浮かべてしまうけれども、世の中の多くのビジネスは、個人事業主というか一人親方というか、そこから始めるわけで、そうすると必然的に職人タイプが多くなるわな。弁護士なんてまさに職人タイプでやっている人ばかりだろう。

幼年期

  • 自分のやりたいことが誰にも邪魔されずにできる。喜んで働く。そして一日も休むことなく働くようになる。他の事をしているときも事業の事が頭から離れなくなり、仕事を中心に生活が回り始める。職人として商品を作るだけでなく、仕入れ、販売、発想の仕事もこなさなければならず、たくさんのボールを自在に操る大道芸人のような才能を発揮している。
  • 限界を超えはじめる仕事量。雑用に追われるばかりでストレスがたまって、仕事そのものが面白くなくなってしまう。
  • きみの能力や時間を切り売りしているんだ。このままでは、君の能力や時間の限界以上に、事業を広げることはできない。
  • <感想>全くその通り。職人として仕事するのが楽しくて、楽しくて、独立っていいものだなと思うわけで。私は、「自分の思った通りに、思いっきり仕事がしたい」と常々思っていて、それはやはり自営にならないと無理だという結論から今の道に来ている。だから職人タイプなわけだけど、このままでは仕事に追われて、限界量は既にある意味超えている。

青年期ー人手が足りない

  • 人を雇っても、マネージャーの役割を放棄すると、人が思うとおりに働いてくれない。そこで社長が現場に出て働くことになる。権限の委任ではなく管理の放棄なわけである。そして、現場に舞い戻り、再び天才的な大道芸人としての活躍が始まる。
  • 働いてばかりで忙しい。せっかく給料を払って人を雇っているのに、全ての仕事を自分でやろうとして、社長が働けば働くほど従業員の仕事がなくなり、従業員は働くなり、社長は自分が働かなければいけないと思い、従業員の仕事に口をはさむ悪循環に陥る。
  • 大道芸人の生活に戻ってしまったら、絶望的となり、この状況から抜け出すためには、「起業家」と「マネージャー」の人格を呼び起こすことが必要。
  • 「手ごろなサイズ」を超えて成長するためには、職人としての能力だけでは無理。事業を縮小して幼年期に戻るか、倒産するか、この状況でサバイバルレースをするか。
  • 覚悟を決めれば、サバイバルレースを続けて勝ち残ることはできる。ただ、どんな仕事でも自分で対応しなければならないし、どれだけ頑張っても状況はいっこうに改善しない。
  • 従業員を管理しないといけないのに、盲目的に信頼して、失敗を繰り返す。信頼関係はお互いをよく知ることで築かれる。知るためには理解しなければならないし、理解するためには相手の人柄や行動パターン、持っている知識や興味範囲を知らなければならない。盲目的に信じることですべてを運に任せることになる。役割分担を決めなければならない。
  • 将来構想を文章としてまとめる。心の中のもやもやしている計画に具体性をもたせることができる。
  • 「エリザベス(過去の従業員)をどうすればよかったの?」 特定の人物がストレスの原因になっていて、その問題さえ解決できれば、他の全ての問題も氷解するように、職人タイプの経営者の誰もが思っている。不注意から、他の人の感情を傷つけてしまうことはよくある。「エリザベスに何をするべきかではなく、将来のエリザベスたちに何をするべきかだ」
  • <感想>すべてがおっしゃる通りですね、という感じ。はい、私は確かに大道芸人状態でサバイバルしていますね。マネージャー人格が全く働いていないから、こういうことになるのですね。私の場合、職人気質は強めですが、起業家気質もあるので、問題はマネージャー人格がさぼっているのですね。まあ、大企業でも公共団体でも、起業家気質も職人気質もマネージャー気質もないところはよくありますが、そんなことは今更どうでもよく、自分が自分の仕事と人生をどうしていくか、そのために、自分に足りないところをしっかり見つめ、自分の能力を更新して、マネージャー人格をきちんと頑張るべきなのですね。なんとすばらしい教えを与えてくれる本なのか。

 

 

 

ほか、気になった記載

  • 成功した経営者は、大切な知識や情報を従業員と共有するために多大な努力を費やしている。彼らが伝える才能に恵まれているということではない。すべてを言葉で表すことは困難だろう。しかし、言葉の裏側にあるビジョンや高邁な目標、優れた倫理感が、経営者の体や声から滲み出すように従業員へ伝えられるからこそ、彼らは成功を収めているのである。
  • 事業が失敗するのは設定した目標が高すぎたからではない。電話でのやりとり、顧客と営業担当者の関係、出荷の手続、レジでの応対など事業を構成する様々な要素の中に、失敗の原因が潜んでいる。むしろ、隅々などの気配りが、事業を成功させる勇逸の方法であることを、高みを目指す経営者は直感的に理解しているのだろう。
  • 極限状況を生き抜くために、F1ドライバーの反射神経も、ヘラクレスの筋肉も、アインシュタインの頭脳も必要ない。ただ、なすべきことを知ればよいのである。
  • 毎年100万人以上が会社を立ち上げる一方で、1年目に40%の会社が、5年間では80%以上が姿を消している。次の5年で残りの80%が姿を消す。
  • ポイント1:大半の起業家が失敗に終わる理由を知る
  • ポイント2:成功率の高いフランチャイズビジネスから学ぶ
  • ポイント3:一流企業のように経営する
  • ポイント4:毎日の仕事で実践する

<感想>

大好きな仕事が自分の思うようにしたいように徹底的にできる。何たる幸せか。これを目指して独立したわけである。本当に幸せ。

ただ、大企業や国にいた時とは違い、驚くようなクライアントもいる。無料でなんでも頼んでこられる方など。それは、見る目を養えばよく、解決できるといえばできるが、どんどん仕事は増えていく。雪だるま式に増えていく。それなのにさらに舞い込んでくる雑用。私は雑用が極度に苦手なのに、雑用の量が大量に降り注いでくる。

普通の弁護士はどうしているのだろうかと思う。誰かを雇うということなのだろう。ただ、私は雑用も苦手だしマネージメントもできず、組織運営能力がない。そして、自分の思う通りの仕事をしたいという意思だけ強く、ひたすら自分の仕事をやっていく。もはや空中で10個のボールを落とさないように必死で操っている大道芸人状態で、極限に近い状態を何年もやり続けている。

自分の何がいけないんだろう、なぜこんな状態なんだろう、みんなはどうやっているんだろう、あのときどうすればよかったんだろう、私が悪いんだろうか、相手が悪いんだろうか、何が悪いんだろう、どうしたらいいんだろう。さらに理不尽なことが襲ってきたりと、もうどうすればいいか全くわからない。ただ、仕事はいっぱいあるので、空中で10個のボールを落とさないように必死で操り続けながら、悩み続けている。

そんなときにこの本に出会った。言われてみれば当たり前のこと。そう、王道解決である。当たり前なんだけど、もう何が何だかわからなくなっていたわけである。書かれている一言一言、全くその通りとずばずばっと突き刺さる。

この本を読んで、「え?でも結局何をすればいいの?」と表面上は思いつつ、心の中ではよくわかっていた。目の前のやらなければいけないことに振り回されすぎている。しっかり自分の仕事を、自分の人生を、マネージしなければならない。それはほかの誰でもない、私の仕事である。

稀有の人物が乱世を制して世を治めても1代で終わってしまったように、普通の将軍が運営できる徳川幕府が200年以上続いたように、マクドナルドが世界各国にあるように、大事なことは仕組化。そう考えると、フランチャイズビジネスってすごいな。考えた人、頭良すぎないか。

世の中にはいくらでもチャンスが転がっている。アイディアは無限大。その前に、まずは自分の仕事を自分の人生を自分の力でマネージしよう。自分自身でどう仕事したいのか、どんな仕事がしたいのか、どう生きたいのか、しっかり自分を見つめて、考えていかなくちゃ。舞い込む仕事を次から次へと対応しているだけでは、大好きだった仕事に振り回されているだけ。仕事が私を管理している状態。そうではない、仕事を自分自身でマネージするのだ。さあ、起きよ、私の中のマネージャー。

言われてみればごくごく当たり前のことに気づかせてくれた、素晴らしい本。「〇さえやれば解決」なんてことはないんだ。当たり前だ。それは詐欺でしょう。結局、王道に戻るわけ。でも、その王道が見えなくなってしまった。日々の空中ボール10個に気を取られ、もはや王道すら見えなくなった状態に、しっかりとした気付きを与えてくれる素晴らしい本です。