ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

【駄】どこまでの契約を電子契約で締結するか

※法律論ではなく個人的な内容です。そして、筆者は電子契約が専門分野ではなく素人です。私の考えをまとめるためのブログであって、電子契約について法律論をお知りになりたい方向けではありません。

 

紙の契約書に押印したり郵送したり管理したりするのが面倒くさい。

かといって、電子契約だと、いざ裁判になったときに証拠として認められるのか不安。

リスクレベルに応じて電子契約とするか否か、レベル感を考えるべきと言われるが、どこまでの契約をどう対応すべきか。

 

ということにバクッと悩み、これまでは紙契約でやってきましたが、紙契約は紙契約で面倒くさい。自分の契約類型ごとに、これは電子契約、これは紙などとやっていこうと思いました。

 

契約する理由

契約する理由は、報酬不払い、仕事の条件違反などのリスクヘッジとして、予め条件について相手と法的に約束するということ。

その際、署名・押印があれば、その契約書が真正に成立したと推定される。

 

署名・押印のレベル感

(1)紙の場合

紙なら安心なわけではない。印鑑証明を添付してもらうわけではないので、相手の印鑑が、本当に契約締結できる立場の人の正式なハンコなのか、仮に裁判で争われたら難しい場合もある。「事業部長印」や「社長印」で押してもらっているように見えても、そもそもその契約は事業部長でできる契約なのか外部からは定かではないし、その印鑑が本当に事業部長印なのか社長印なのかも定かではない。

一番固いのは、印鑑登録されている代表者印で押印してもらって、印鑑証明も添付してもらうこと。しかし、通常の契約処理でそこまでやってくれるとは思えない。

そうすると、紙で押印してもらっても、いざとなったら、間接証拠(メールで契約交渉をやりとりしていて、相手の会社として了解していて、押印・郵送してもらっている、契約締結後の仕事のやり取り状況など)から契約の成立を主張することになるのかもしれない。しかし、そもそも真正な成立を争われる可能性自体が低いし、訴訟リスクも低いようにも思われるので、発生可能性を踏まえてどこまでリスクヘッジするかという話になるのか。

 

(2)電子契約の場合(固いのは当事者署名実印版)

一番固いのは契約当事者が電子署名すること。マイナンバーカードないし商業登記の電子証明書を使う。そして、認定認証局がやっている電子契約サービスを使う。認証局サービスの実印版の当事者署名。これが最も固い。これなら、紙の押印よりも安心。私は個人事業主マイナンバーカードを持っているし。まあでも認証局サービスでなくてもいいのかな。

仮に裁判で争われたとしても、真正な成立はばっちり推定されていて、実印相当なわけで、紙の契約で言えば実印が押してあるけど家族が勝手に押した的な研修所で勉強するような主張をする以外、争うのは難しく、非常に安心できる方法。

 

ただ問題は、契約相手が商業登記の電子証明書を取得しているか、取得していたとしても私との契約でそれを使ってくれるか(面倒などの理由から)、電子契約サービスが有料となる(その代わりと言っては何だが印紙税は発生しない)、相手が使っている電子契約サービスと自分が使っている電子契約サービスが異なる場合にどちらのものを使うか、だと思われる。

 

(3)電子契約の場合(立会人型署名認め印版)

これに対して圧倒的に簡単なのは、立会人型の電子署名。これも電子署名法の電子署名に該当することが明確化された。ただ、結局、ハンコに相当する者を押しているのは電子契約ベンダーであって、私も契約相手もハンコは押していない。メールアドレスで認証しているだけ。サービスによってはワンタイムパスワードなども追加していたりするそうだが、それでもハンコは押していないわけで。

仮に契約書を裁判で争われた場合、そもそもハンコを押してくれた電子契約ベンダーが訴訟に協力してくれるのかが謎。手元にある電子契約の情報で自分で対応するしかないのか。その場合に、メールアドレス認証とかワンタイムパスワードとかだと、結局、契約相手が、社内で本当に契約締結できる立場の人なのかはわからないし、会社としての意思なのかと言われたらどうなんだろうと。紙と同じ問題が起こる。この点、認証局の実印版だと、契約当事者の実印相当の電子ハンコが押してあるのと同じわけで、強い(が、面倒くさい)。

 

認め印版の立会人型電子契約って、無料サービスもあるし、そもそもめちゃくちゃ手軽。これは手軽すぎる。だけど、どうしても上記の問題がわからなくて、宮内さんに聞いた。そしたら、結局リスクとの兼ね合いでどこまでの電子契約にするか考えるということだそうだ。紙契約でその辺の三文判の適当なハンコを押しているよりは、認め印版の立会人型電子契約の方が、メールアドレス認証しているから、まだ固いと言えば固いとも言われた。そりゃそうか。不動産売買なんかは実印押しているんだし、結局は契約のレベル感の問題で、どこまで手間暇かけてやるかという話ということだが、自分でどう決めるべきかが悩ましい。そういう意味で言えば、紙だから安心というわけではない。ただ、私は契約相手が法人になるので、「事業部長印」「取締役印」「代表取締役印」が相手のハンコになるので、100円ショップでは売っていないハンコではあるのでなあ。あとどうせ紙でも認め印版立会人型電子契約でも、契約書の確認やりとりをメールではやっていて。どう考えるか難しい。

 

あと気を付けなければいけないのが、電子契約の場合に、署名依頼を契約締結権限者=契約書末尾に署名者等として記載された人物に送付しないといけない。担当者の方と普段はやり取りしているが、紙契約の場合は担当者ハンコではなく事業部長印ないし代表取締役印などになるように、電子契約の場合も担当者宛に署名依頼を出してはいけない。署名依頼は紙でハンコの持ち主になる人に出さないといけない。

なお、立会人型の場合でも、本人=契約当事者の電子署名として認められるため、ますます契約書末尾の人物のメールアドレス宛に、署名依頼を出さないといけない。

 

私が考えたあるべき姿は、
・全契約を、実印版当事者署名とするのが理想ではある。
・ただ、高額契約やリスクが高い契約でなければ、認め印版立会人型署名でも良しとする。リスクが高い契約とは何かという問題もあるが、継続契約で小口支払が続くようなものであれば、通常はリスクが高いとはいえないとなるのだろう。

・高額契約やリスクが高い契約の場合に、紙でも実印+印鑑証明でない以上、リスクは残るので、それだったら認め印版立会人型署名でも紙と同じなのか?ここが決めきれない。なんとなく紙の方が安心な気もするが、どうなんだろうかねえ。

・実印版当事者署名だと、電子契約ベンダーに対して月額料金が発生し続けるので、私のようにたいして契約件数がない小規模な人間だと、コスパは悪い。セコムで月20000円、GMOで月10000円ぐらい。ただ、まあ絶対に真正な成立が推定されるわけで、紙だと印鑑証明つけてくれる会社ないと思われるので、その点への安心料にはなるけど、年12-24万円かかるわけで。まあ全額経費にはなるけど。

・ブログを書いたが、結局決めきれない。

 

あとは、私の弁護士としての専門関連でいうと、Webで同意ボタンクリックしてもらうときが、さらに扱いが弱い。契約締結権限者以外が同意ボタンクリックしていることも多いし、これ、本来は、国レベルで考えていくべき事項ではある。

 

あとは電子契約ベンダー側でどのような内部不正を防止する対策を取っているかが本当は重要。