ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

オンラインにおける原本性確保(雑記)

オンライン申請・電子契約時の原本性概念について。

法令検索した結果と、宮内さんに聞いて、教えてもらったことを、備忘メモ。

 

0.前提

法律上、「原本」の定義はないように見受けられる。

金子・新堂・平井編「法律学小辞典」第4版(有斐閣)によれば、

原本 一定事項を表示するため確定的なものとして作られた文書をいい、謄本・抄本等の基になる文書。

”正しく完成した内容であって、作成当初のまま改竄されていないこと"的な意味か?

 

電子データの場合どれが原本かは、そもそも原本についての法律上の定義もなく、小辞典の上記定義からも、どれを原本とするかは、ある意味「決め」の問題か。

 

1.建設業法

〇建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン(平成13年3月30日)

https://www.mlit.go.jp/pubcom/01/kekka/pubcomk06/pubcomk06-1_.html

3.原本性の確保について(規則第13条の2第2項第2号関係)
 建設工事の請負契約は、一般的に契約金額が大きく、契約期間も長期にわたる等の特徴があり、契約当事者間の紛争を防止する観点からも、契約事項等を記録した電磁的記録の原本性確保が重要である。このため、情報通信技術を利用した方法を用いて契約を締結する場合には、以下に掲げる措置又はこれと同等の効力を有すると認められる措置を講じることにより、契約事項等の電磁的記録の原本性を確保する必要がある。

(1)公開鍵暗号方式による電子署名

 情報通信の技術を利用した方法により行われる契約は、当事者が対面して書面により行う契約と比べ、契約事項等が改ざんされてもその痕跡が残らないなどの問題があり、有効な対応策を講じておく必要がある。
 このため、情報通信の技術を利用した方法により契約を締結しようとする場合には、契約事項等を記録した電磁的記録そのものに加え、当該記録を十分な強度を有する暗号技術により暗号化したもの及びこの暗号文を復号するために必要となる公開鍵を添付して相手方に送信する、いわゆる公開鍵暗号方式を採用する必要がある。

(2)電子的な証明書の添付

 (1)の公開鍵暗号方式を採用した場合、添付された公開鍵が真に契約をしようとしている相手方のものであるのか、他人がその者になりすましていないかという確認を行う必要がある。
 このため、(1)の措置に加え、当該公開鍵が間違いなく送付した者のものであることを示す信頼される第三者機関が発行する電子的な証明書を添付して相手方に送信する必要がある。この場合の信頼される第三者機関とは、電子認証事務を取り扱う登記所、電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第4条に規定する特定認証機関等が該当するものと考えられる。

(3)電磁的記録等の保存

 建設業を営む者が適切な経営を行っていくためには、自ら締結した請負契約の内容を適切に整理・保存して、建設工事の進行管理を行っていくことが重要であり、情報通信の技術を利用した方法により締結された契約であってもその契約事項等の電磁的記録等を適切に保存しておく必要がある。
 その際、保管されている電磁的記録が改ざんされていないことを自ら証明できるシステムを整備しておく必要がある。また、必要に応じて、信頼される第三者機関において当該記録に関する記録を保管し、原本性の証明を受けられるような措置を講じておくことも有効であると考えられる。

 

〇建設業法施行規則

※条文番号変更

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324M50004000014

(建設工事の請負契約に係る情報通信の技術を利用する方法)
十三条の四 法第十九条第三項の国土交通省令で定める措置は、次に掲げるものとする。
一 電子情報処理組織を使用する措置のうち次に掲げるもの
イ 建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と当該契約の相手方の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて法第十九条第一項に掲げる事項又は請負契約の内容で同項に掲げる事項に該当するものの変更の内容(以下「契約事項等」という。)を送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイル(専ら当該契約の相手方の用に供されるファイルをいう。以下この条において同じ。)に記録する措置
ロ 建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された契約事項等を電気通信回線を通じて当該契約の相手方の閲覧に供し、当該契約の相手方の使用に係る電子計算機に備えられた当該契約の相手方の受信者ファイルに当該契約事項等を記録する措置
ハ 建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイルに記録された契約事項等を電気通信回線を通じて当該契約の相手方の閲覧に供する措置
二 磁気ディスク等をもつて調製するファイルに契約事項等を記録したものを交付する措置
2 前項各号に掲げる措置は、次に掲げる技術的基準に適合するものでなければならない
一 当該契約の相手方がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるものであること。
二 ファイルに記録された契約事項等について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じていること
三 当該契約の相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていること。
3 第一項各号に掲げる措置は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
一 第一項第一号ロに掲げる措置にあつては、契約事項等を建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する旨又は記録した旨を当該契約の相手方に対し通知するものであること。ただし、当該契約の相手方が当該契約事項等を閲覧していたことを確認したときはこの限りではない。
二 第一項第一号ハに掲げる措置にあつては、契約事項等を建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機に備えられた受信者ファイルに記録する旨又は記録した旨を当該契約の相手方に対し通知するものであること。ただし、当該契約の相手方が当該契約事項等を閲覧していたことを確認したときはこの限りでない。
4 第一項第一号の「電子情報処理組織」とは、建設工事の請負契約の当事者の使用に係る電子計算機と、当該契約の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。

 

〇建設業法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100

(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
(略)
十六 その他国土交通省令で定める事項
2 請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
3 建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。

 

2.民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律

(電磁的記録による作成)
第四条 民間事業者等は、作成のうち当該作成に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(当該作成に係る書面又はその原本、謄本、抄本若しくは写しが法令の規定により保存をしなければならないとされているものであって、主務省令で定めるものに限る。)については、当該他の法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面の作成に代えて当該書面に係る電磁的記録の作成を行うことができる。
2 前項の規定により行われた作成については、当該作成を書面により行わなければならないとした作成に関する法令の規定に規定する書面により行われたものとみなして、当該作成に関する法令の規定を適用する。
3 第一項の場合において、民間事業者等は、当該作成に関する他の法令の規定により署名等をしなければならないとされているものについては、当該法令の規定にかかわらず、氏名又は名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるものをもって当該署名等に代えることができる。

 

(電磁的記録による交付等)
第六条 民間事業者等は、交付等のうち当該交付等に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(当該交付等に係る書面又はその原本、謄本、抄本若しくは写しが法令の規定により保存をしなければならないとされているものであって、主務省令で定めるものに限る。)については、当該他の法令の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該交付等の相手方の承諾を得て、書面の交付等に代えて電磁的方法であって主務省令で定めるものにより当該書面に係る電磁的記録に記録されている事項の交付等を行うことができる。
2 前項の規定により行われた交付等については、当該交付等を書面により行わなければならないとした交付等に関する法令の規定に規定する書面により行われたものとみなして、当該交付等に関する法令の規定を適用する。

 

3.行政文書/公文書の電子化

〇行政文書の電子的管理についての基本的な方針(平成31年3月25日 )

https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/densi/kihonntekihousin.pdf

行政機関における行政文書は、紙媒体を正本・原本とするものが大半を占め、その管理に関する業務は職員の手作業によって遂行されていることから、行政文書の所在把握や管理状況のチェックへの支障、管理業務に係る作業の漏れ・誤りや作業負担の発生等の問題が指摘されている。

(略)

(1) 電子媒体の正本・原本化

閣僚会議決定を踏まえ、今後作成・取得する行政文書については、行政文書の所在把握、履歴管理や探索を容易にするとともに、管理業務の効率化に寄与する観点から、電子媒体を正本・原本として体系的に管理することを基本とし、そのための枠組みを構築することとする。

(略)

① 作成

ⅰ)文書保存領域は、記録用フォルダに相当する領域、検討中フォルダに相当する領域及び個人用フォルダに相当する領域をしゅん別し、組織的な検討を経た行政文書は記録用フォルダに相当する領域に格納し、電子媒体を正本・原本として管理する。 

 

〇行政文書の電子的管理についての基本的な方針(骨子案)

https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2018/20190130/shiryou2-2.pdf

今後作成する行政文書は、電子媒体を正本・原本として管理することを原則とする。

 

〇電子媒体による公文書等の管理・移管・保存の検討のための論点整理

(平成17年6月)内閣府

https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/kako_kaigi/denshi/170610/haifu/haifu3.pdf

4. 原本性確保の必要性

• 国の機関の活動の証拠として、電子公文書等の作成・取得時点での内容・構造等を保存

• 電子公文書等を保存することによって、国民に対する政府の説明責任を果たす。

 

5. 原本性を確保・証明する要件と方法

• 原本性確保の要件=完全性、機密性、見読性

① 完全性=記録媒体の経年劣化等による消失、変化を防ぎ、改変履歴を記録すること等により、改ざんを未然に防止し、かつ改ざん有無を検証できる様な状態で保存すること。

② 機密性=アクセス制限、アクセス履歴記録等により、アクセス権限のない者からのアクセスを防止し、盗難、盗み見等を防止する形で、保存・管理すること。

③ 見読性=必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて直ちに表示できるように措置すること。また、特定のハード・ソフトに依存せず、原本性を確保して読めること。

• 原本性を確保・証明する方法電子認証、電子署名、電子透かしタイムスタンプ

 

4.医療情報システム

厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.2版」令和4年3月

https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000936160.pdf

 

3.3. 紙の調剤済み処方箋と調剤録の電子化・外部保存について

紙の調剤済み処方箋の電子化は、紙の処方箋に法令で定められた事項を記入した後、記名押印又は署名を行い調剤済みとしたものを9章に示す方法により実施することとなる。 薬局で紙の処方箋を受け取った場合、調剤済みとなるまでは電子化したものを原本としてはならない(誤った運用例:薬局で紙の処方箋を受け付けた時点で電子化し、それを原本として調剤を行い、薬剤師の電子署名をもって調剤済みとする等)。

 

7. 電子保存の要求事項について 

これら法的に保存義務のある文書等の電子保存の要件として、真正性、見読性及び保存性の確保の 3 つの基準が示されている。

 

10. 運用管理について 

4. スキャナ等により電子化して保存する場合

(1) スキャナ読み取りの対象文書の規程

(2) スキャナ読み取り電子情報と原本と同等であることを担保する情報作成管理者の任命

(3) スキャナ読み取り電子情報への作業責任者(実施者又は情報作成管理者)の電子署名法に適合した電子署名

(4) 診療等の都度、スキャンするタイミングに関する規程

(5) 過去に蓄積された文書を電子化する場合の、実施手順規程

 

5.住民基本台帳

住民基本台帳・住民票自体が電子的。写しに「原本と相違ない」と書く。

 

施行令

(住民票の写しを交付する場合の記載)
第十五条 市町村長は、法第十二条第一項、第十二条の二第一項又は第十二条の三第一項若しくは第二項の規定により住民票の写し(法第六条第三項の規定により磁気ディスクをもつて住民票を調製している市町村にあつては、当該住民票に記録されている事項を記載した書類。以下第十五条の四までにおいて同じ。)を交付する場合には、当該住民票の写しの末尾に原本と相違ない旨を記載しなければならない。