ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

マイナンバー紐づけミスは省令改正では解決しない

23.8.9追記(下の方)

mainichi.jp

8/8(火) 15:00配信

岸田文雄首相は8日(略)再発防止に向けた横断的な省令改正やガイドライン策定を9月中をめどに実施するよう指示した

 

再発防止策として省令改正があがっています。

そこで、既に改正済の省令であるところの、健康保険法施行規則を見てみたいと思います。

健康保険法では、事業主が社員等の健康保険の加入等について健康保険組合又は日本年金機構に届け出なければならないわけですが(健康保険法48条)、その際に省令で届出時の記載事項を明記して、社員等のマイナンバーも届出時の記載事項の一つであることを明記するっていう内容になっています(健康保険法施行規則24条)。

 

事業主に、社員等の健康保険の加入届を出す義務がかかっていて、その際に、社員等のマイナンバーもちゃんと届出の中に記載して出してねっていうことなわけですが、それでは、紐づけミスは解決しないのではないかと思われます。

 

結局、正しいマイナンバーを健康保険組合等に正しく伝えて、そして健康保険組合等が正しいマイナンバーを正しく登録しなければ解決しないので。

本人から個人番号利用事務等実施者へのマイナンバーの提供方法を整備したうえで、マイナンバーの提供は原則として、その整備した方法によるっていうのを法律上明記して、かつ政治家や国からもマイナンバーの提供について国民に意義を伝えてお願いしないといけないのではないかと思います。そうしないのであれば、J-LIS照会を改善するか。でも結局、J-LIS照会のところって、改善方法がなかなか難しいわけで。

 

まあ、施行規則24条の4も追加になっていますけど、施行規則上の義務があるからって、健康保険組合等が期限までに正しいマイナンバーを登録できるのか謎です。

ロジカルシンキングを役所の研修に入れた方が良いような気が…。論理的つながりがよくわからず。

 

23.8.9追記
事業主がマイナンバーを空欄にして保険者に届け出ている場合で、それが事業主の怠慢と言えるような場合は、省令改正することで、事業主に記入の意識を促すことができるかもしれません。しかし、何よりも、本人や事業主、そして受け取り手の保険者等にとって、簡便でかつ正確にマイナンバーの提供・取得ができる手段がなければ、省令改正で義務付けたところで、履行が難しいと思うのです。

そして、届出書の記載事項は確かに省令改正でいいかもしれませんが(法律側で届出義務がそもそもかかっているので)、健康保険法施行規則24条の4って、「するものとする」って省令に書けば義務がかかるわけではないと思うのですが…。法改正するのが大変だから省令オチっていうやつですかねえ。

 

総点検の中間報告で、誤紐づけ件数が思ったより少なかったと政府関係者が述べたという報道も見ました。そういう認識だと、前にブログに書いた通り、だらだらと誤紐づけや負担割合ミスのトラブルが続き、マイナ保険証と資格確認書(資格確認証ではないのですね。ブログに誤記してしまった。)の二重運用がだらだらと続き、コスト高になるっていうオチになる気がねえ。やっぱりちゃんと仕事しないと。

世の中、ちゃんと仕事しないで、だらだらやっていても、何にもおとがめなしっていう状態が一部にあって、もうそういう世界だと、そのままになってしまって、それっておかしいのではないかと。「みんなが幸せになれる世の中」「よりスマートで生き生きとした社会」を目指すために、国としての働きが必要なのではないかと。だって、公僕なわけでしょう、そもそも。そして民間人は公僕ではないものの、余裕がある範囲で、みんなが幸せになれる世の中を目指し、出来ることを少しずつでもやっていくことで、少しずつ良い社会になっていくのでは。そういうことを放棄してしまって、まあやることやらなくてもいっか、みたいになっていくと、水は低きに流れるじゃないけど、どんどん社会機能が低下していき、5年10年経ったら「ありゃ、ひどい」となりかねないんじゃないかと。

 

私の言っていることは理想論なんでしょうか。少なくとも、政治家には、政治責任を問える状態にしないといけないと思います。選挙の際のポスターや選挙公報に、意味のない抽象的などうでもいい文言を書くのではなく、少なくとも与党は、何に税金と公務員の労力を使って、何を成し遂げたのかで判断されるべきでは。野党も、どう野党として、与党の政策を改善したのかを判断されるべきでは。党としての仕事ぶりのほかに、政治家個人としても、日々何をして、何の役に立っているかを明らかにすべきでは。そして宗教団体だけにかかわらず、支援を受けている団体名も明らかにすべきでは。統一教会問題もうやむや、コロナ対策の検証もうやむや、マイナンバーはしっちゃかめっちゃか、これでいいのか疑問です。

公務員も、内閣人事局云々報道では言われていますが、別に政治家の言う通りに動いて、しっちゃかめっちゃかな政策をやらなくても、首にはならず、固定給は確保されているわけでしょう。自営業なんて、固定給なしですよ、私がこのブログ書いたところで、一円にもならず、事務所家賃も人件費も稼げませんし、逆に経済的にはマイナスですよ。この時間使って仕事した方が経済的にプラスですから。広報効果なんて皆無だし。公務員は固定給が確保されていて、定年まで雇用が確保されているんだから、で、国のことを考えて仕事する立場なわけで、なんで、こうなっているのか。政策評価・行政評価をもっときちんとした形で行うべきで、どのように社会に役立つ仕事をしているかをきっちり評価し、それを元にボーナスが決まったり昇給が決まったりしていくべきでは。

 

〇健康保険法施行規則

第二十四条 法第四十八条の規定による被保険者(任意継続被保険者を除く。以下この条、第二十九条、第三十五条の二から第三十六条の二まで及び第四十二条において同じ。)の資格の取得に関する届出は、当該事実があった日から五日以内に次に掲げる事項を記載した様式第三号又は様式第三号の二による健康保険被保険者資格取得届を機構又は健康保険組合(第十一号において「保険者等」という。)(様式第三号の二によるものである場合にあっては、機構)に提出することによって行うものとする。
一 被保険者の氏名(片仮名で振り仮名を付するものとする。)
二 被保険者の生年月日
三 被保険者の種別(健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者にあっては、被保険者の性別)
四 被保険者資格の取得区分
五 被保険者の個人番号(協会が管掌する健康保険の被保険者が同時に厚生年金保険の被保険者の資格を取得したときは、個人番号又は基礎年金番号。第五項において同じ。)
六 資格取得年月日
七 被扶養者の有無
八 被保険者の報酬月額
九 被保険者の住所(当該被保険者が協会が管掌する健康保険の被保険者であって、厚生労働大臣が当該被保険者に係る機構保存本人確認情報(住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第三十条の九に規定する機構保存本人確認情報をいう。以下同じ。)の提供を受けることができるとき又は当該被保険者が健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者であって、当該健康保険組合が当該被保険者の住所に係る情報を求めないときを除く。)
十 事業所の名称及び所在地並びに事業主の氏名又は名称
十一 その他保険者等が必要と認める情報
5 事業主は、第一項の届出に関し、被保険者に対し、個人番号の提出を求め、又は同項各号に係る事実を確認することができる。
(保険者による被保険者情報の登録)
第二十四条の四 保険者は、法第二百五条の四第一項の規定により同項第二号又は第三号に掲げる事務を委託する場合は、機構若しくは健康保険組合が第二十四条第一項の規定による届出を受け、又は当該保険者が第四十二条の規定による申出を受けた日から五日以内に、当該届出又は申出に係る被保険者の資格に係る情報を、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により、社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会に提供するものとする。

 

〇健康保険法

(届出)
第四十八条 適用事業所の事業主は厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届け出なければならない

基金等への事務の委託)
第二百五条の四 保険者は、第七十六条第五項(第八十五条第九項、第八十五条の二第五項、第八十六条第四項、第百十条第七項及び第百四十九条において準用する場合を含む。第一号において同じ。)及び第八十八条第十一項(第百十一条第三項及び第百四十九条において準用する場合を含む。同号において同じ。)に規定する事務のほか、次に掲げる事務を基金又は国保連合会に委託することができる。
一 第四章の規定による保険給付及び第五章第三節の規定による日雇特例被保険者に係る保険給付のうち厚生労働省令で定めるものの支給に関する事務(第七十六条第五項及び第八十八条第十一項に規定する事務を除く。)
二 第四章の規定による保険給付及び第五章第三節の規定による日雇特例被保険者に係る保険給付の支給、第六章の規定による保健事業及び福祉事業の実施、第百五十五条の規定による保険料の徴収その他の厚生労働省令で定める事務に係る被保険者若しくは被保険者であった者又はこれらの被扶養者(次号において「被保険者等」という。)に係る情報の収集又は整理に関する事務
三 第四章の規定による保険給付及び第五章第三節の規定による日雇特例被保険者に係る保険給付の支給、第六章の規定による保健事業及び福祉事業の実施、第百五十五条の規定による保険料の徴収その他の厚生労働省令で定める事務に係る被保険者等に係る情報の利用又は提供に関する事務
2 保険者は、前項の規定により同項第二号又は第三号に掲げる事務を委託する場合は、他の社会保険診療報酬支払基金法第一条に規定する保険者と共同して委託するものとする。