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弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

通知カードは犯収法の本人確認書類とできない件

自分用の備忘録。

 

通知カードはあくまで仮カードであって、本人確認書類とはできない。

どんな場面でも基本的にそうだが、それが法令化されているのが、犯収法下である。

 

犯収法施行規則7条1号イでマイナンバーカードは、犯収法上の本人確認書類にできる旨が明示されているが、通知カードはできない。

犯収法施行規則7条1号ホでは「イからニまでに掲げるもののほか、官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるもの」が本人確認書類として認められているので、一見すると、通知カードはこの規定をもって、本人確認書類とできそうだが、

犯収法施行規則7条1号ホはさらに括弧書きがあって「(国家公安委員会金融庁長官、総務大臣法務大臣財務大臣厚生労働大臣農林水産大臣経済産業大臣及び国土交通大臣が指定するものを除く。)」となっている。

つまり、官公庁が発行した書類等で氏名、住居及び生年月日の記載があれば、犯収法上の本人確認書類にできるものの、国家公安委員会等が指定したものは、それでもだめよ、とされている。

そして、7条1号ホ括弧書きでダメよと言われているのがどこに書いてあるかというと、

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第七条第一号ホの規定に基づき、書類を指定する件の一部を改正する件」

である。

この告示で通知カードが指定されている。

 

なお、この告示は若干トリッキーである。

犯収法施行規則の条ずれがあった模様で、

元々は「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第六条第一号トの規定に基づき、書類を指定する件(平成27年国家公安委員会金融庁総務省法務省財務省厚生労働省農林水産省経済産業省国土交通省告示第2号)」だったが、

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第六条第一号トの規定に基づき、書類を指定する件の一部を改正する件(平成27年国家公安委員会金融庁総務省法務省財務省厚生労働省農林水産省経済産業省国土交通省告示第4号)」によって改正されて、

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第七条第一号ホの規定に基づき、書類を指定する件の一部を改正する件」となっているのである。

したがって、

JAFIC 警察庁サイトや有料法令検索上では、

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第六条第一号トの規定に基づき、書類を指定する件」で検索しないと表示されない。

 

通知カードの廃止の施行日が不明であるが(改正法公布後1年以内)、通知カードが廃止されても、既に交付済の通知カードがある以上、この犯収法の告示は生き続けると思われる。

 

(本人確認書類)
第七条  前条第一項に規定する方法において、特定事業者が提示又は送付を受ける書類は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める書類のいずれかとする。ただし、第一号イ及びハに掲げる本人確認書類(特定取引等を行うための申込み又は承諾に係る書類に顧客等が押印した印鑑に係る印鑑登録証明書を除く。)及び第三号に定める本人確認書類並びに有効期間又は有効期限のある第一号ロ及びホ、第二号ロに掲げる本人確認書類並びに第四号に定める本人確認書類にあっては特定事業者が提示又は送付を受ける日において有効なものに、その他の本人確認書類にあっては特定事業者が提示又は送付を受ける日前六月以内に作成されたものに限る。 
一  自然人(第三号及び第四号に掲げる者を除く。) 次に掲げる書類のいずれか 
イ 運転免許証等(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十二条第一項に規定する運転免許証及び同法第百四条の四第五項に規定する運転経歴証明書をいう。)、出入国管理及び難民認定法第十九条の三に規定する在留カード、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)第七条第一項に規定する特別永住者証明書、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第二条第七項に規定する個人番号カード若しくは旅券等又は身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳療育手帳若しくは戦傷病者手帳(当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるものに限る。)
ロ イに掲げるもののほか、官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があり、かつ、当該官公庁が当該自然人の写真を貼り付けたもの
ハ 国民健康保険、健康保険、船員保険後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証、私立学校教職員共済制度の加入者証、国民年金法第十三条第一項に規定する国民年金手帳、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書若しくは母子健康手帳(当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるものに限る。)又は特定取引等を行うための申込み若しくは承諾に係る書類に顧客等が押印した印鑑に係る印鑑登録証明書
ニ 印鑑登録証明書(ハに掲げるものを除く。)、戸籍の謄本若しくは抄本(戸籍の附票の写しが添付されているものに限る。)、住民票の写し又は住民票の記載事項証明書(地方公共団体の長の住民基本台帳の氏名、住所その他の事項を証する書類をいう。)
ホ イからニまでに掲げるもののほか、官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるもの(国家公安委員会金融庁長官、総務大臣法務大臣財務大臣厚生労働大臣農林水産大臣経済産業大臣及び国土交通大臣が指定するものを除く。)