ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

政府調達の改善

おおげさなタイトルをつけましたが、デジタル庁創設に伴って、政府調達も改善していくべきだと思います。

新聞などのマスコミ的には、政府調達といえば、談合・汚職とかそういうのがニュースバリューがあるかもしれませんが、私が言いたいのはそういう話ではなく、効率的に良い委託先を選定できるようにする改善です。

 

今の政府調達だと、あまりに手続が難解で時間がかかりすぎるきらいがあります。

 

まず、入札手続に必要な書類・手続が多すぎます。

  • デメリット1)新規参入阻害
    結局、こういうことによって、政府案件に慣れていない企業は新規参入しづらいので、新規参入が阻害されてしまいます
  • デメリット2)価格上昇
    結局、入札という、契約以前の段階でも用意すべき書類や手続が多いと、営利企業にとっては、それにかかる人件費・交通費等を回収する必要があり、それらが結局、委託価格に上乗せされる可能性があります。調達側の国にしてみれば、人件費・交通費とかを全く考えていないきらいもありますが、民間企業からすると、それを誰かが払ってくれるわけでもないし、税金をもらえるわけでもないので、費用を上回る利益がなければならず、無駄に費用や人件費がかかると、結局の委託費が上振れしてしまう可能性があります。そしてその委託費は税金から支払われているわけですので、公務員にしても、民間企業に発生する人件費その他の経費に関する意識を持つようにすべきです。

そして、選定する際の評価ポイントが、実態に合っていないきらいもあります。

  • 問題)委託先の選定スキルがたまらない
    価格だけで選定する方式のほかに、内容が良いか等も判断する総合評価方式その他さまざまな形態はありますが、調達側に、委託先の選定スキルがたまっていないきらいがあります。要は、提案書を見て、より良い仕事をしてくれるところかどうか、判断するにもスキルがいるわけですが、異動異動で、調達をやる機会がそんなに多くなかったりすると、どういう業者をどう選べばよいかわからず、結局「ああ、失敗した。ちゃんと仕事してくれないよ。結局、自分たち(公務員側)でなんとかするしかないじゃん。」となってしまうことがあります。
  • 問題)その業者の質を評価することが難しい仕組み
    その業者が過去に類似案件で実績を積んでいることを、評価ポイントにしていることはありますが、それは業者の言いっぱなしで良くなっているケースがあります。そうでなくて、ヤフオクやYahoo!ショッピングや楽天でも、評価があるように、その業者が過去に他省庁でやった案件でどういう評価を受けているかをちゃんと履歴として貯めていくべきではないでしょうか。
    民ー民の調達だと、あまりにひどい業者は二度と依頼しませんが、官の調達だと、あまりにひどすぎる業者が何度でも落札してしまうことがあります。

時間がかかりすぎる

  • デメリット)効率的な作業阻害
    入札しようとしても、そのための手続が非常に厳格で、長期間かかってしまいがちです。そうすると、結局年度単位の調達が多い中、契約が秋ごろになってしまって、実質的な作業期間が2か月から6ヶ月ぐらいになってしまうことも多々見られています。公示期間を長くとらないと、公正な調達とならないということはわかりますが、もう少し、短期間で調達できるようになんとかならないものでしょうか。

 

とまあ、いろいろ思いつくままに書いてしまいましたが、私は民間企業勤務経験と官庁勤務経験があって、民間企業時代に外注する際と官庁時代に外注する際で、あまりにも違うというか、官庁は本当に調達が大変すぎるなと思いました。汚職・腐敗・談合防止は絶対ですが、そうじゃない部分のルールはもっと簡素化したほうが良いように感じています。落札する民間企業側はその分の費用を回収できればまあいいかもしれませんが、調達する公務員側は、やるべき仕事が多いわりに、ひどい業者に当たったりして、結構踏んだり蹴ったりな気がするのです。公務員は自分の仕事があまりに多くてもあまり文句を言わない傾向があるので、もっと自分の仕事を簡素化する、やらなくていい仕事をなくしたり簡素化・効率化するための声を上げていくべきだと思います。

 

今は、官庁に勤務しておらず、法律事務所の人間ですが、そうはいっても、霞が関自治体の調達案件に関与することがあります。業者選定をする外部委員会の委員をやったり、あとは霞が関自治体が公費で調達した事務局や事業者さんに対し外部委員としてアドバイスする係だったり、支援で再委託を受ける場合もあります。

 

何年もやっている案件で、1年ごとに事務局が変わることもありますが、本当に受注事業者によって、資料のレベルが違いすぎます。前回の会議で出た意見を踏まえて資料を用意していただくわけですが、その資料がぐだぐだのものから、本当にきちんと整理されているものまであって、そんなに仕事の質、クオリティーレベルが違うのに、調達金額は同じだったり、逆にレベルが低い事業者の方が金額が高かったりするので、見ていると本当に謎だなと思います。

 

どうでもいい意見ばかりつらつら書いていてなんですが、そういうことを考えると、そもそも調達の在り方とかそういうテーマじゃなくて、もっと大きな社会のスキーム・あり方として、「ちゃんとしている人が適正な評価を受ける社会」というのが目指されるべきのようにも思い、今の時代、資本主義VS共産主義といった社会の在り方よりも、そういう何か新しい軸というか、まじめに頑張っている人が報われる社会になるためには、どういう社会改革が必要なのか、どういう社会構造が良いのか等も考えていきたいなと思います。まあ、私にそんな大きなことを考える能力があるわけではないのですが、やはり世の中として、ちゃんとまじめにやっている人が報われるべきだと思って、それを後押しするような社会構造というのは多分あると思うのです。