ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

国民に負担をかけないコロナ支援策申請を

http://www.miyauchi-law.com/f/200730digitalgov_covid.pdf

 

・コロナ対策として、家賃支払いの支援、給与支払いの支援、現金給付、融資等様々な支援策があるが、各支援策を申請するのに同じような書類を添付する必要がある(口座情報、本人確認書類、給与額の証明等)。いくつかの手続で実際に必要な書類を、上記PDFにまとめた。

 

・また本人に添付してもらうことなく役所側で取得可能な情報(住民票等)も、本人に添付してもらっているように見受けられる。

 

・申請書に記載する個人や法人の基本情報(住所、名称、代表者氏名等)も、重複している。


・各省庁や自治体でバラバラにオンライン申請を用意するのではなく、一か所にまとめて、一度添付した情報は再度添付不要としたり、一度記載した基本情報は再度入力
不要とできないか。また、国側で取得できる情報(法人登記、離職票、確定申告書類等)については、本人同意の上、国側で取得できないのか。さらに、類似支援策につ
いては、同時に申し込めるようにできないのか(持続化給付金と家賃支援給付金など)。


・デジタルファースト法が成立し、デジタルガバメントを謳う日本国であるのだから、せめて国の実施する支援策については、利用者ファースト・ワンスオンリーを実現
し、コロナ禍で困難に面している利用者に少しでも負担をかけないようにすべきではないか。自治体の支援策のオンライン申請についても、できる限り、国と同じ場所に
まとめられないか。


・特別定額給付金のオンライン申請のマイナポータルや、雇用調整助成金のオンライン申請では、トラブルも見られた。入力フォームやテスト不足といった失敗や国民に
わかりやすい操作性・UXを、他の申請サイトに活かすという意味でも、各省庁バラバラにオンライン申請を用意するより、一か所にまとめた方が良いのではないか。

 

・コロナで、マイナンバーが脚光を浴びたというのに、マイナンバーの効果を発揮できなかった。非常に残念。コロナ禍で「マイナンバーがあればできるのでは?(例、マスクやトイレットペーパーの購入数量制限、迅速な支援)」といった国民の期待にこたえられなかったマイナンバー制度・デジタルガバメント、これらを真に国民の役に立つようにしていかなければいけない。

そういう思いから、どうすればよいのか、何をどうすれば国民の役に立つマイナンバー・デジガバになるのかを今週はずっと考えていますが、パッとした名案がなかなか思い付かなかったので、まずはコロナ支援策としてどのようなものがあるのかをWeb検索し、それらにマイナンバーやデジガバがどう役に立つのか考えた。

そうしたら、そもそも、ワンスオンリーができていない、国民に添付してもらわなくても良い書類も添付してもらっているのではないか、もう少し申請者の負担を減らすことはできないのか、また申請を受け付ける側の処理も軽減できないか、役所側もオンライン申請サイトを実際にプログラム書いて作れるわけではなくて外部委託する中、テスト時のテストケースが網羅されていないとか入力フォームに不備があるとかは、そういう経験がないとなかなか対応が難しく、これらの反省を今後に生かしていくためにはどうしたらいいかとか考えているうちに、まずは基本に立ち返って、「デジガバ」「UX」「ワンスオンリー」「添付書類削減」「マイナンバー」などと、いつも言われている話を、愚直に、丁寧に、地道に「実践」していくことが必要なのではないかと思った。申請主義をなくして、必要な人に迅速な支援を提供できるようにしていければもちろん理想だが、それをいきなり目指すというのも方法論としてはなくはないものの、私のレベルでは、では何をどうやっていけば申請主義打破ができるのかは、マイナポータルの活用ぐらいしか思い浮かばないので、まずは、申請主義維持であっても、申請者に負担をかけない申請方法が必要なのではないかと考えた。

 

・上記のようなことを役所文化に適用すると、「査定当局」の機能強化、といった政策に陥りがちである。国のITを一元的に査定する・チェックするというような文化になりがちである。しかし、今の現状を打破するには、「査定」する「当局」ではなく、Yahoo!やLINEのサービスみたいに、オンライン申請を、国民がパッと見て直感的に操作するだけでできるようにしてくれる、担当ではないだろうか。
各省は、制度を検討し財源を確保する。内閣広報室が広報をやってくれるみたいに、「政府IT庁」みたいなのが、各省のオーダー通り、システムを作って運用保守してくれると、各省は政策に集中して、経験の少ないITシステム開発をやらないでよく、政策企画立案能力がどんどん向上していくかもしれない。そして「政府IT庁」みたいなところは、ITベンダーと張りあえるぐらいの実力を持って、調達をやって、企業の情報システム課みたいな感じで、やっていってくれれば、政府ITの失敗とかその反省とか、成功した点とか、外注管理の能力とかも貯めていけて、今後の政府ITの促進にもなるのではないか。
ただ、それをやるとすると、国税庁みたいに自力でシステム調達するのに十分な能力を持っているところをどうするか問題はある。自力でできるところは、ほかの部署の横やりが入るより、自力でやりたいと思うはずだし、その方が効率的なことがあるので。要検討課題である。
そして、IT調達を一か所に集中すると、過剰接待・汚職の危険も出てくるので、これらの防止、適正調達というのは、当然のことながら担保していく必要がある。ただ、現状の調達だと、どうでもいい手続に時間とコストがかかりすぎていて、それで政府ITが割高になっていると思われる。調達手続の簡素化も検討すべきだと思う(でも汚職とか接待が起きないようには絶対にしないといけないが、過去に官庁はこれらの問題を起こしているものの、裁判所とか検察とかは汚職とかあんまり聞かないので、そういうのを参考にして規律を強めるとかしたらどうだろうか)。あとは各省協議にベンダーを振り回さないとかすれば、政府のITコストも下がりそう。
そして、「政府IT庁」みたいなところで、IT戦略も立てていってくれれば、現実にIT開発・運用・保守をやりつつ戦略も立て、かつIT業界とのつきあいもあれば、かなり良いIT戦略も立てられそうな気もする。実践部隊かつ戦略部隊になるような組織が、各省の負担軽減をした方がよいのではないか。

・ただ、ワンスオンリーを検討するというと、国であるあるなのが、目標が硬直化して、「何が何でもワンスオンリー」みたいになる危険がある。どんなにコストがかかっても、どんなにスキームが複雑怪奇になろうが、絶対に情報連携するみたいになってしまうことが霞が関だと起こり得る。
しかし、行政機関間でバックオフィス連携する方が逆にコスト高であり、本人に添付してもらったとしても、本人負担があまりないのであれば、本人添付のママでも良いと思う。そういう硬直化した目標設定ではなく、「意味のないことをなくしましょう」「ユーザにとって使いやすい仕組みにしましょう」みたいな目標にすべきである。


・なお、PDFに記載した申請時に必要な書類等はざっとWeb検索したものなので誤りがある可能性あり。必ず該当手続の詳細Webサイト等に当たっていただけますようお願いいたします。