マイナンバーは官が主に使うと聞きましたが、具体的にはどう使われるのですか?
「マイナンバーでなんでもわかってしまいそう」「マイナンバーを官が悪用しそう」とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マイナンバーの効能は、基本的には、同姓同名、氏名変更、住所変更、外字、異字体があっても、同一人物だとわかることです。
まずは、マイナンバーが具体的にどう使われるのかを見ていきましょう。具体的に見ていかないと、「こんなこともできるのでは」「あんなこともされるのでは」と思ってしまうこともあるかと思います。マイナンバーの利用範囲は、番号法上限定されていますので、具体的に見ていけば、実際にどのように使われるのかをわかることができます。
今日は、公営住宅を例にして、マイナンバーの使われ方を解説します。
Ⅰ.都道府県又は市町村内部でのマイナンバーの利用・本人とのやりとり
1.入居の申し込み
- 公営住宅に入居するには、申込みをします。そして申込者多数の場合は、選考が行われます(公営住宅法25条1項)。この申し込みや選考の際にマイナンバーを利用します。マイナンバー1番さんがA住宅に申し込みをしていて、マイナンバー5番さんがB住宅に、マイナンバー10番さんがA住宅に、マイナンバー25番さんがC住宅に申し込みをしているなどの管理をします。今でも入居申し込み・選考が行われていますが、その際、氏名などが用いられています。氏名だと同姓同名者などもいる可能性があるので、マイナンバーで同姓同名者の混同などをせずに、正確な管理を行います。
2.家賃
- 家賃決定のための収入把握
- 公営住宅の毎月の家賃は、入居者の収入、公営住宅の立地条件、規模、建設時からの経過年数その他の事項に応じ、かつ、近傍同種の住宅の家賃以下で、定められます(公営住宅法18条1項)。この入居者の収入は、毎年度、入居者からの申告を受けることで把握します。この収入の申告の際に、マイナンバーを利用します。マイナンバー1番さんは収入が300万で、1番さんの公営住宅は新しいし駅から近いから近隣住宅の家賃も●万円なので、この1番さんの家賃は△万円と決定するなどします。今でも、公営住宅の入居者から収入の申告を受けていますが、その際は氏名などを使っています。水町は収入が300万です、などと申告しているわけです。この点、水町(マイナンバー1番)は収入が300万円ですと申告するとすると、同姓同名、氏名変更、外字、異字体にも対応でき、情報の正確化が図れます(同姓同名者との勘違いなどが起こらない)。
- 公営住宅の入居者は、三年以上入居している場合で一定の収入のあるときは、公営住宅を明け渡すように努めなければなりません。この「一定の収入がある」人で、明け渡さずに引き続き公営住宅に入居しているときは、家賃は、通常とは異なる可能性があります。家賃決定の際には、毎年度、入居者からの収入の申告を受けて、収入や近傍同種の住宅の家賃を踏まえて、家賃が定められます(公営住宅法28条1項2項)。この公営住宅の入居者から収入の申告の際にも、マイナンバーを利用します。
- 公営住宅の入居者は、五年以上入居している場合で引き続き二年以上高額収入のあるときには、家賃は、近傍同種の住宅の家賃と同じになります(公営住宅法29条5項)。また明渡請求を受けた者が明け渡さない場合には、毎月、近傍同種の住宅の家賃の二倍以下の金銭を徴収される場合があります(公営住宅法29条6項)。この家賃決定の際にも、マイナンバーを利用します。
- 家賃の減額免除
- 家賃の徴収猶予
3.敷金
- 敷金の管理
- 敷金の減額免除
- 敷金の徴収猶予
4.入居者の異動
- 公営住宅に入居した際に同居した親族以外の者と同居しようとするときは、承認を得なければなりません(公営住宅法27条5項)。この申請の際にマイナンバーを利用します。マイナンバー1番さんの同居親族は〇さん、△さんで、今度は×さんと同居しようとしているなどと管理します。
- 入居者が死亡又は退去した場合に、当該入居者と同居していた者は、承認を受ければ、引き続き、当該公営住宅に居住することができます(公営住宅法27条6項)。この申請の際にもマイナンバーを利用します。
5.明け渡し
- 入居者が五年以上入居している場合で、最近二年間高額収入があるときは、明渡しを請求されることがあります(公営住宅法29条1項)。マイナンバー1番さんは5年以上A住宅に入居していて、最近2年間の収入はいくらで、といったことをマイナンバーで管理できます。
- 但し、病気にかかつていることその他条例で定める特別の事情がある場合に、申出があつたときは、明渡期限を延長することができます(公営住宅法29条7項)。この際にもマイナンバーが利用されます。
- 次の場合も、公営住宅の明渡しを請求されることがあります(公営住宅法32条1項)。この際にもマイナンバーが利用されます。
6.あっせん
- 入居者が三年以上入居して、かつ、基準を超える収入のある場合は、他の適当な住宅に入居することができるようにあつせんする等のことが行われる場合があります(公営住宅法30条1項)。この際にもマイナンバーが利用されます。
7.その他条例事項
8.収入状況の把握
- 公営住宅法34条に定める場合で必要があるときは、公営住宅の入居者の収入の状況について、入居者、その雇主、その取引先その他の関係人に報告を求めることなどができます(公営住宅法34条)。この際にもマイナンバーが利用されます。
Ⅱ.外部とのやりとり
1.家賃に関連して
- 以下の情報を以下の相手方から入手する。以下の場合は、収入の計算が変わり、それにより家賃も変わる可能性があるからかと思われる
- 以下の情報を以下の相手方から入手する。収入により家賃も変わる可能性があるからかと思われる。
- 以下の情報を以下の相手方から入手する。世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄を入手するので、なぜ入手するのかは私の元では不明。
2.家賃・敷金の減免に関連して
3.家賃、敷金等の徴収猶予に関連して
- 2と同じ情報を入手する(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条3号)
4.入居申込みに関連して
- 2と同じ情報を入手する(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条4号)
5.同居者の変更・入居者死亡又は退去後の居住申請に関連して
- 2と同じ情報を入手する(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条5号)
6.明渡しに関連して
- 1と同じ情報を入手する(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条6号)
7.明渡期限の延長に関連して
- 以下の情報を以下の相手方から入手する。以下の場合は、収入の計算が変わり、それにより家賃も変わる可能性があるからかと思われる
- 以下の情報を以下の相手方から入手する。世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄を入手するので、なぜ入手するのかは私の元では不明。
- 以下の情報を以下の相手方から入手する。特別の事情を検討するために入手するのか。
8.他の住居のあっせんに関連して
- 1と同じ情報を入手する(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条8号)
9.不正入居等による明渡、条例事項に関連して
- 都道府県知事から、公営住宅の入居者又は同居者に係る身体障害者手帳の交付及びその障害の程度に関する情報を情報提供ネットワークシステムから入手(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条9号10号)
- 都道府県知事から、公営住宅入居者又は同居者に係る精神障害者保健福祉手帳の交付及びその障害の程度に関する情報を情報提供ネットワークシステムから入手(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条9号10号)
- 市町村長から、公営住宅入居者又は同居者に係る住民票関係情報を情報提供ネットワークシステムから入手(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条9号10号)
- 都道府県知事等から、公営住宅入居者又は同居者に係る生活保護実施関係情報を入手する(番号法別表第二の31の項、別表第二主務省令22条9号10号)
上記の通り、基本的には今自治体で行われている公営住宅の業務の中で、情報管理の一項目としてマイナンバーを使います。これによって、同姓同名者の間違いなどを防ぐことができます。またマイナンバーでさまざまな情報を外部から入手できるわけではなく、情報提供・情報入手できる場合は、番号法上限定されています。
なお、今でも公営住宅に入居申請する際には、さまざまな添付書類が必要です。情報提供ネットワークシステムが稼働し(平成29年目途)、庁内連携条例が整備されれば、添付書類の数を削減することができます。もっとも婚約誓約書のようなものは、マイナンバー制度ができても、ご本人から取得しなくてはいけませんので、添付書類が一切なくなるということは難しいです。
添付書類の例ですが、例えば、自治体ごとに異なりますが、HPによると以下のような感じです。
- 金沢市
- 甲府市
- 宇都宮市
- 課税(所得)証明書(入居予定家族で16歳以上(就学者を除く)の方は全員必要)
- 完納証明書(納税証明書)
- 世帯全員の住民票(入居予定者の世帯全員の本籍・続柄の記載のもの)
- 健康保険被保険者証(入居予定の世帯全員分)
- 上記書類以外に別途、個別に必要な書類があります
- つくば市
- 収入を証明する書類(課税証明書等)
- 無収入を証明する書類(非課税証明書等)
- 未納の税額がないことを証明する市町村税納税証明書
- 住民票
- 暴力団員でないことの申立書
- 保険証の写し
- 片親世帯及び単身で申込む場合は,戸籍謄本
- 婚約中で申込む場合は,婚約証明書
- 退職予定で申込む場合は,退職予定証明書
- 住宅に困窮していることを証明する書類(賃貸契約書の写し・立退き証明書)
- 生活保護を受けている方は,生活保護受給者証明書
- 裁量世帯であることを証明する書類(身体障害者手帳の写し等)
- 市外居住者で市内に勤務場所を有する方は,在職証明書
- 単身で申込む場合は,自活状況申立書
- 外国人の方は,「在留カード」または「特別永住者証明書」
- その他,市が必要とする書類
※自治体職員の方などで、上記説明に関して世帯主情報の取得・生活保護情報の取得・障害者情報の取得などの理由がお分かりになる方、また上記説明に関して補足がある方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントをお寄せいただければと思います。