ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

個人情報の開示請求、Subject access request

自分に関する個人情報で、行政機関や民間事業者が保有する情報については、開示請求を行うことが認められている(行政機関個人情報保護法12条、個人情報保護法25条)。

そのため、たとえば労災認定関係書類とか学校の成績とか、その他様々な情報の開示を求めることができる*1

但し、行政機関個人情報保護法上は、開示請求権が明文で認められている一方、個人情報保護法では、開示は、個人情報取扱事業者の義務として規定されており、民間事業者に対する開示請求が請求権として認められるかは争いがある。

東京地判平成19 年6 月27 日判時1978 号27 頁では、民間事業者(診療所)が保有する、自分のカルテの開示を求めたが、裁判上、開示請求は棄却された。この裁判例のロジックとしては、個人情報保護法上の開示請求は、あくまで民間事業者が行政機関に対して負う義務であり、本人に対して裁判上の開示請求権を認めたものではないため、裁判で開示請求を行うことはできないとのものである。

http://www.cao.go.jp/consumer/doc/100929_sankou2.pdf

ただし、これは一裁判例にすぎず、今後、他の裁判例最高裁判例で、民間事業者に対する開示請求権が否定されるかどうかは明らかではない。


この、自己に関する情報の開示は、OECD8原則のうちの個人参加の原則で認められているものであり、諸外国でも認められているが、イギリスでも認められている。イギリスでは、subject access request (SAR)と呼ばれている(Data Protection Act)。

http://www.ico.gov.uk/tools_and_resources/glossary.aspx

*1:ただし、一定の不開示情報がある(行政機関個人情報保護法14条各号、個人情報保護法25条1項各号)