ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

「個人情報保護制度の見直しに向けた中間整理」に関する意見

個人情報保護制度の見直しに向けた中間整理」に関して、事前に意見は言わせてもらいはしましたが、せっかく意見募集がなされているので、以下の意見を個人名で提出する予定です。

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060200829&Mode=3

 

医療分野・学術分野における規制の統一について

・規制移行法人と、独立行政法人個人情報保護法の規制のままの法人が明確に区分でき、明確にわかるような法形式・周知を行ってほしい。

 ・今回の法改正を行っても、引き続き「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守する必要があると考えられる。同指針は非常に複雑化しており、同指針の個人情報保護に関するルールを通常の担当者・公務員・法曹が理解するのは難しいと考えられる。今回の法改正と合わせて、同指針についてわかりやすく改めることが必要である。
・また、同指針の所管は、文科省及び厚労省であるが、個人情報保護部分については個人情報保護委員会も所管官庁とするか、又は2省と委員会とで密に連携を取る必要があるのではないか。
・同指針で記載されている倫理審査委員会についても、複数の組織で別々に審査を受けると医療分野・学術分野の研究等において時間を要する場合がある。現場のヒアリング等を行った上で、必要があれば倫理審査委員会の共同審査等についても、記載してはどうか。また倫理審査委員会の記載以外にも、現場のヒアリング等を行った上で、同指針の内容が現場においてスムーズに実践・遵守されるよう、同指針に関するさらにわかりやすい解説や改訂等を検討してはどうか。
・現行法の学術研究に係る除外規定では、国立大学・公立大学と民間事業者が共同研究する場合に、どう考えるべきかについて不明瞭である(逆に、かかる場合は、適用除外されないとの見解が立案担当者書籍に記載されている。もっとも、適用除外構成ではなく、個人情報保護法23条1項4号を適用できる場合もありうると思われる)。この点についても、手当すべきである。
・現行法の学術研究に係る除外規定では、個人情報保護法43条2項で「個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者等が第七十六条第一項各号に掲げる者(それぞれ当該各号に定める目的で個人情報等を取り扱う場合に限る。)に対して個人情報等を提供する行為については、その権限を行使しないものとする」と規定されている。

この場合、例えばA社が学術研究機関に個人データを提供する行為が個人情報保護法23条に定める各方法に該当しない場合、A社は形式的には個人情報保護法23条違反ではあるが、監督官庁による監督権限を行使されないという規定とも考えられる。このような規定ぶりであると、A社にとっては実質的な制裁はないものの、形式的には違法ともいえる形になり、学術研究のためのデータ提供を阻害するおそれがあるので、これについても再考が必要ではないか。

・現行法の学術研究に係る除外規定では、例えば医学研究分野でいえば、医師会や私立病院に属する医師等が研究する場合、また、その他の学術研究分野でいえば弁護士が研究する場合に、大学等と共同研究したり学会所属者として研究しないと適用除外とならない可能性があるという問題があった。「大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者」という規定ぶりでよいのか、再考が必要である。

 

義務規定及びその例外規定の創意
・開示等については、民間部門に対してであれば任意代理人でも請求できるのに対し、行政機関や独立行政法人等は本人か法定代理人(未成年者、成年被後見人)でなければ請求できないようになっている。法定代理人が付されてはいないが、本人では請求困難な場合もあり、公的機関についても民間部門と合わせて、任意代理人による請求を認めるべきである。なお、任意代理人と偽る者に対して開示してしまうリスクを考慮したものとも考えられるが、同リスクは民間部門でも同様に生じる問題であるし、代理権確認方法を厳格化すれば対応できる問題であると考える。

 

全般

地方公共団体の個人情報に係る見直しに関する文書が公開されたタイミングなどで、全般的な今後のスケジュール(施行時期の目途等)について明らかにしてほしい。

 

 ※あえて、地方公共団体の個人情報に係る見直しについては触れていません。資料が出次第、意見を述べる予定です。

 

 

最後、余談

・書籍執筆中なんですが、この法改正によって大幅書き直しも必要になりそうです。法改正が成立するまで執筆を待つべきか、しかしそれを待っているとまた執筆が遅れそうだしなと悩むところです。まあ、ルール自体はあまり変わらないので、条項とかが変わるわけで、とりあえず執筆しつづけて、成立後に条項とかを直せばいいのですかね。それも面倒くさいなあと思って、なかなか執筆が進みません。それともばーと現時点ので執筆して早く出版しちゃって、改正法施行前までに法改正について改訂するとか。どうすべきか。