10万円一律給付で、一部自治体ではすでに申請や給付を始めています。マイナポータルでは、多くの自治体が既に対応しており、マイナンバーカードがあればマイナポータルから申請することが可能です。
マイナポータルから申請してみての感想・要改善点等は、過去のブログをご参照ください。
今日は、申請(特にマイナポータル申請)の際に、家族(正確には世帯員)の氏名を記入させ、自治体側で確認する必要はないのではないか、という点についてブログを書きたいと思います。
1.申請時に世帯員氏名等が必要
紙申請する場合、自治体から送られてくる申請用紙に、あらかじめプレ印字で、世帯員氏名・生年月日・性別が記載されています。住民側は、それを確認して、間違いがあれば赤字修正することになっています。
※プレ印字不要ではないかというブログは過去ブログ参照。
そしてマイナポータルから申請する場合、自分で、世帯員の氏名を個別に入力する必要があります。マイナポータルの場合は氏名だけの入力でOKです。マイナポータル側で自動表示はしてくれません。自分で入力します。
2.住民側の目線で見る世帯員氏名入力
これ、入力する側からすれば、そこまで手間ではありません。
紙申請の場合は、既にプレ印字されているから、別に住民側は何もしなくても実質的にはいいはずです。
マイナポータルの場合も、家族の氏名を入力するだけなので、そこまで手間ではありません。
しかし、漢字などを誤変換してしまった場合や、間違って世帯が異なる家族を入力してしまって、それで、「申請内容が間違っています」と自治体から1か月後に電話がかかってきて、そのために10万円の振込が1か月遅れるとしたらどうでしょうか。
意味不明な気分にならないでしょうか。どうせ住民票を見れば、どの世帯にだれがいるかは自治体側には明らかなはずです。それなのに、なぜ漢字を誤変換してしまっただけで、そのようなことが起こるんだ!と思うような気がします。
特に、マイナポータル申請は、エラー画面に何度もなってしまったりして、申請時に気持ちが焦っています。慎重に入力した世帯員氏名を確認しようと思っていても、何度もエラーが出たりすると、「えいや!」って感じで、どんどん「次へ進む」を押してしまうことも十分考えられます。
3.自治体側の目線で見る世帯員氏名入力
自治体側が、世帯員についてどのようなチェックをしているかは、各自治体によって異なる可能性がありますし、詳細は私も承知していません。
(1)湖南市
しかし、 谷畑英吾 滋賀県湖南市長のFacebookを拝見すると、自治体側では、世帯員氏名を住民基本台帳情報と突き合わせてチェックしているようです。以下、5/3に投稿されたものから引用させていただいています(下線部は水町が勝手に引いたもの)。
市ではマイナンバーカードの交付は6576枚ですが、そのうち何枚が世帯主なのかはわかりません。そして、昨日からの1日半で130件の電子申請がありました。
世帯員については、様式には続柄と生年月日を打ち込む欄がスペース的に設けられているものの、氏名だけしか打ち込まずに電子申請が完結するので、それが正しいかどうかを人の目で突合しなければなりません。せめて生年月日があればすぐに確からしいと確認もできるのですが、氏名だけで住民基本台帳と突合することになります。
例えば、複数世帯が同居している場合、どちらかの世帯主が電子申請をしようとして、両世帯の世帯員を混同したり一括して申請フォームに打ち込んで申請してきた場合、その人が別世帯なのか、申請に世帯員が揃っているのかなどは、やはり人間の目で確認していかなければなりません。
また、極めて厄介なのは、振込先口座を確認するために、預金通帳かキャッシュカードの画像データを添付することにしていることです。手続きを簡略化するために写真があればいいんじゃない的に設けたのでしょうが、最近のスマフォは画素が半端ありません。データ量がかなりなものとなっており、これを申請データと突合するために画面表示や打ち出しをするだけで、ものすごい時間的ロスを生じます。
また、5/5に投稿されたものから引用させていただいています。
特に世帯員については、手続きを簡略化しすぎて氏名だけしか打ち込まなくてもよいために、住民基本台帳との突合に極めて困難を生じます。実際に、世帯主が空欄に同じ名前で10人分の世帯員の名前を打ち込んで、請求金額100万円!というものがありました(請求金額は自動計算です)。その後、同じ人から夫婦で20万円の請求がし直されたそうなので悪意があったわけではなさそうですが、ここでわかるのは、虚偽の世帯員を申請できるシステムなので、それをチェックする自治体側は、オンラインなのに膨大な確認作業を、人間の目により神経をすり減らしてしなければならないということです。
また、今回の事例は同じ日に2回申請があったので見つけやすかったのですが、システム上、重複申請をできますので、申請が重複なのかどうかは自治体側で人力によりチェックしなければならないということです。
(2)何のための世帯員入力なのか
上で引用させていただきましたFacebookを見ると、入力された世帯員の名前で、住民基本台帳と突合して、申請者である世帯主の同一世帯員なのかどうかを、自治体職員が目検しているように読めます。
これは、非常に大変だと思います。だって、1件1件全部これやっていたら、1件の処理にどれだけ時間がかかるのか。
例えば1件5分で終わったとしても、総数が5500件*1だとすれば、27500分=458.3時間=57.3人日かかるわけです*2。1件10分で終わるとすると、その倍で、114.6人日です。職員10人態勢でも、5.73日から11.5日かかってしまいます。
しかも、これ別に、特別定額給付金の自治体の事務処理全て、これで終わるというわけではなく、ただ単にマイナポータル申請分のチェックにかかる時間というだけですからね。このほかに、紙申請の準備(封筒準備、印刷、封入)、紙申請とマイナポータル申請の重複排除、紙申請のチェック、振込処理、国とのやり取り等も、自治体側には作業として発生するわけで、特別定額給付金の自治体の事務処理のあくまで一部なのに、こんなに作業時間を要するわけです。
しかし、いくら作業時間がかかっても、重要な目的のためなら、確実にやり切る必要があります。
ですが、本件はどうでしょうか。世帯主の本人確認はマイナンバーカードでしているわけですから、別人がなりすまして10万円奪ってしまうリスクはかなり低いわけで、かつ振込先口座も世帯主名義じゃないといけないので、なりすまりリスクは限りなく低いわけです。
世帯員氏名を入力させる意味は何なのか。確実に世帯主であることがわかっていて、その世帯にだれがいるかは、自治体側で確実な情報を持っているわけです。世帯員の氏名入力は不要ではないでしょうか。自治体側で住民基本台帳を見ればいいわけで、それも個別氏名をチェックする必要はなく、世帯の人数を正確に把握して、1人当たり10万円と計算して、ただしい額を振込処理するのが目的のはずです。
さらにいえば、世帯員の氏名が間違っている、別世帯の人が入力されている、一人しか世帯員がいないのに、何行にもわたって入力されてしまっている場合等に、住民側に電話等で連絡して、「●●という入力になっていましたが、住民基本台帳情報を見ると▲なので、▲ということでよいですか?」と聞いて、補正して、で、申請を受け付けなどともしやるとすれば、1件5分や10分では済まずに、さらに作業時間が増えます。電話がつながらないこともあるでしょうし。
住民側にとっても、悪気なく、ただ誤変換しただけ、入力行が間違っただけ、同一住所に複数世帯がいて混同してしまっただけなのに、電話が来て、そのせいで申請受付が遅れるとしたら、嫌な気分になることも考えられます。そして自治体と住民でトラブルが発生する可能性も考えられます。(「なんなんだ!、そっちで勝手に直せ!」みたいになるかも?)
(3)紙申請の場合に、赤字訂正させる目的は何なのか
上記はマイナポータル申請の場合ですが、紙申請の場合はプレ印字されている世帯員氏名等が間違っていたら、赤字訂正させる模様です。
この場合も、上記と同様の問題が起こり得ます。まあ、マイナポータル申請で誤入力する人の方が、紙を赤字訂正する人より、数としては多いような気もしますが、
もし、赤字訂正する人がいたとして、その赤字訂正が間違っていたらどう処理するのか。そもそもプレ印字は住民基本台帳情報からひっぱってきた情報をあらかじめ印字しているので、間違っていないのではないか。住民が誤った訂正をしてきた場合、どう処理するのか。例えば、正しい生年月日を誤って直した場合はどうなのか。性別に違和感を覚える方が性別を訂正した場合はどうなるのか。住民票住所地を変更していなかった場合に、この際に赤字訂正すれば、住所地変更も一緒にやってくれるつもりなのか。謎が残ります。
(4)水町意見(世帯員入力は不要)
そこで思うのですが、世帯員情報の入力は不要ではないでしょうか。
マイナポータルの申請様式をすぐに修正して、世帯員情報を入力不要にすべきではないでしょうか。これは国側で作っているものなので、各自治体で対応はできないと承知しています。国側の早急な対応が求められると思います。
なお、国側としても、これが時間・コスト・各種調整等の関係からできないのだとしたら、以下のようにしてはどうでしょうか。
申請欄には世帯員氏名を入力させる欄があるものの、自治体側ではその情報はチェックしない。住民基本台帳情報から世帯員の数を引っ張ってきて、それで、支給額を決定する。
法的には、誤った世帯員情報の申請を職権修正したという位置づけではどうでしょうか。
なお、本来は、以下のようなシステムを作って自動化できると良いと思います。
- 申請データをマイナポータル経由で自治体が受け取ったら、住基情報と突き合わせて世帯員数を自動で計算して、支給額を決定できる
- 写真で送られてきた口座名義人のカナを自動で読み取って、口座名義人カナと世帯主カナが同一であることを自動でチェック
- 口座名義人カナが口座名義人漢字からして社会的におかしくないかどうかを自動でチェック(本当はカナを住基登録やマイナンバーカード情報にしたほうが良い?)
ただ、開発スケジュールを考えると、プログラムを作った方が速いのかどうかはわからないところではあります。申請数や開発期間との見合いかな、と。
国も自治体も、「一日も早く10万円を支給して!」と各所からいわれて、ほんとうに大変だと思います。10万円支給のご対応をされている方々は、リモートワークもなかなか難しい場合も多く、この時期、特にゴールデンウイークもなしに必死にお仕事をされていらっしゃる方が非常に多くいらっしゃると思います。
国家公務員、地方公務員の方々のおかげで、市民生活を送ることができており、大変感謝しております。私はもう公務員でもなんでもありませんで、外部からとやかくいろいろ言うだけの楽な立場でぐちゃぐちゃ言っていて申し訳ありません。
カットできる作業は少しでもカットしたほうが、Employee SatisfactionにもCustomer(Citizen)Satisfactionにもつながるんであれば、という単なる思い付き的なご提案にすぎませんが、ご検討いただけるようだと嬉しいです。
また、マイナンバーが少しでも価値を発揮できるように、私にできることはこれからも引き続きずっとやっていくつもりです。
4.その他の問題点
以上、世帯員情報の確認について述べてきましたが、その他の点でも、谷畑英吾 滋賀県湖南市長が非常に意義深い問題提起をされているので、その他の点も合わせて引用させていただきます(下線部は水町が引いたもの)
5/3投稿
さらに、DV等で他の自治体に避難している人については、避難先の自治体に申し出ることになっていますが、その情報は都道府県を通じて5月7日に届くことになっています。そのデータを受けて、支給に際しては避難者分を分離するべき世帯について手作業で止めて対応する必要があります。また、避難してきている人の分は別に支給する準備が必要になります。
なお、子育て世帯臨時特別給付金については、内閣府から「例えば次回6月児童手当の支給に合わせるなど、できるだけ速やかな開始」を求めていますが、市町村は一般支給対象者に「支給の申込みを行う」こととされたうえで、「一般支給対象者が、子育て特別給付金の支給を希望しない場合」に「子育て特別給付金受給拒否の届出書」を提出させることとされています。
できるだけ速やかな支給開始をするなら一方的に対象者に児童手当上乗せで支給すればいいものを、いったん、支給させていただいてよろしいでしょうか、いやなら支給しませんので受給拒否届を出してください、とはどういうオペレーションなのでしょうか。そのおかげで拒否届を待つ期間を置くため、速やかな支給をどう担保しようとしているのか不思議です。
5/5 投稿
また、郵便申請は申請書が戻ってくればAIーOCRで読み取るので、自治体側で作ったシステムに落とし込んでいけばいいのですが、その前にオンライン申請が動いていますので、二重支払いがないように、これとのチェックを再度しなければならないということになります。
7日の連休明けに、市民課の窓口に市民のみなさんが押しかけないかを心配してしまいます。とりわけ、マイナンバーカードの個人認証番号を忘れてロックされた人が来られた場合、パスワードを登録し直す機械は1台しかありません。また、BCPを発動して職員が半減していますので、時間がかかると怒り出す人もいないとも限りません。
5.今後検討していきたい課題
今後、水町にて検討していきたいと思っている課題。
- マイナンバーがもっと効果を発揮できるようにするためには何が必要か、以前作成したマイナンバーの課題資料を更新していきたいです。
→特に支給関連、支援情報のプッシュ配信、必要生活物資の配給 - DV、児童虐待等、支援を必要とする方々の情報を迅速に共有しながら、個人情報保護を徹底していくためのスキーム
- 国と自治体の役割分担、国の各省の役割分担