ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

生産性向上特別措置法「公的データ提供要請制度」概要

生産性向上特別措置法「公的データ提供要請制度」の概要を自分用にまとめました。

 

〇制度要約

協調領域におけるデータを共有する事業(「特定革新的データ産業活用」)について、一定のデータの安全管理(セキュリティ)の確認を受けた上で、国の機関、独立行政法人等の保有するデータの提供を要請できる手続

 

〇例

令和元年6月24日認定

総務省経済産業省及び国土交通省は、株式会社シップデータセンター(ShipDC)のデータ共有事業について、「公的データ提供要請制度」の活用に必要な認定を初めて行いました。

ShipDCの策定した革新的データ産業活用計画は、海事産業がデータ利活用に注力し、新たな規制への対応やイノベーションの創出につなげられるよう、船舶IoTデータの流通・共有ルールを整備し、データ流通、共有、活用の拡大を目指すものです。具体的には、海事産業に属する多数の事業者が参画するIoS-OP(Internet of Ships Open Platform)コンソーシアム(ShipDCの会員組織)を通じて、海事産業のデータ流通のための権利関係を整備し、データ活用のモチベーションを高め、海事産業の業務改善、新規ビジネスの創出を図るものです。
 今般の安全管理基準への適合の認定により、ShipDCの事業に関係する国等が保有する各種海事関係データの提供について申請がなされることが想定されますが、国等の保有するデータとShipDCが集積する民間データを合わせて活用することで、海事分野のビッグデータ活用が促進され、デジタル時代における新たな海事クラスターの形成と産業全体の活性化につながることが期待されます。 

 

www.soumu.go.jp

 

〇概要

  • 革新的データ産業活用とは、平たくいうと、日本が頑張りたい分野でデータを頑張って使うもの。もっと簡単に言うと、良さそうなデータ活用企画みたいな感じ。
    革新的事業活動(我が国において国際競争力を早急に強化すべき事業分野に属する事業活動であって、革新的な技術又は手法を用いて行うもの)のうち、電子データ(国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがあるものを除く。以下「データ」という。)を、革新的な技術又は手法を用いて収集し、産業活動において活用するものをいう(法2条4項)。
  • 平たくいうと、良さそうなデータ活用企画を考えた事業者さんは、計画を提出して、大臣の認定を受けられます
    革新的データ産業活用を実施しようとする事業者
    は、その実施しようとする革新的データ産業活用に関する計画(以下「革新的データ産業活用計画」という。)を作成し、主務省令で定めるところにより、主務大臣に提出して、その認定を受けることができる(法22条1項)。
  • データを他事業者に提供する場合特定革新的データ産業活用)で、安全管理基準に適合することについて大臣の確認を受けた場合特定革新的データ産業活用事業者には、国や独法等のデータが必要な場合、もらうことができますよ。
    認定革新的データ産業活用計画に従って実施される革新的データ産業活用のうち、データを収集及び整理をし、他の事業者に提供するもの(以下この項及び次項第一号において「特定革新的データ産業活用」という。)を行おうとする認定革新的データ産業活用事業者であって、総務大臣及び経済産業大臣が定めるデータの安全管理に係る基準に適合することについて主務大臣の確認を受けた者(第二十八条第三項において「特定革新的データ産業活用事業者」という。)は、特定革新的データ産業活用を効果的かつ効率的に実施するため、国の機関又は公共機関等独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人その他これに準ずる者で政令で定めるものをいう。以下この条及び次条において同じ。)保有するデータを必要とするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣に対し、当該データの提供を求めることができる(法26条1項)。
  • 条件があります(法26条2項)。
    その事業(特定革新的データ産業活用)の効果的・効率的実施に不可欠
    ②データ提供行為が法令違反しない
    ③データ提供が公益を害したり国・独法等の業務に支障を生じない
  • 革新的データ産業活用計画において用いられるデータに個人情報個人情報の保護に関する法律に規定する個人情報をいう。)が含まれる場合で政令に該当すると、個人情報保護委員会との協議が必要(法22条6項)。
    政令に該当する場合とは、①保有個人データを使う場合又は②オプトアウトによる第三者提供の場合(政令の規定ぶりが不思議のため、本当にオプトアウトの場合か要精査)
    個人情報保護委員会との協議)
    施行令第二条 法第二十二条第六項の政令で定める場合は、同項に規定する革新的データ産業活用計画に係る法第二条第四項に規定する革新的データ産業活用が、次の各号のいずれかに該当する場合とする。
    一 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号。次号において「個人情報保護法」という。)第二条第七項に規定する保有個人データに該当するデータ(法第二条第四項に規定するデータをいう。以下同じ。)を用いる場合
    二 個人情報保護法第二十三条第二項に規定する個人データに該当するデータを同項の規定により第三者(法第二十二条第二項に規定する場合にあっては、提供しようとする当該データを保有する事業者以外の事業者を含む。)に提供する場合(個人情報保護法第二十三条第五項各号に掲げる場合を除く。)

〇根拠法

生産性向上特別措置法(平成30年6月6日施行)

(国の機関等に対するデータの提供の求め)
第二十六条 認定革新的データ産業活用計画に従って実施される革新的データ産業活用のうち、データを収集及び整理をし、他の事業者に提供するもの(以下この項及び次項第一号において「特定革新的データ産業活用」という。)を行おうとする認定革新的データ産業活用事業者であって、総務大臣及び経済産業大臣が定めるデータの安全管理に係る基準に適合することについて主務大臣の確認を受けた者(第二十八条第三項において「特定革新的データ産業活用事業者」という。)は、特定革新的データ産業活用を効果的かつ効率的に実施するため、国の機関又は公共機関等(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人その他これに準ずる者で政令で定めるものをいう。以下この条及び次条において同じ。)の保有するデータを必要とするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣に対し、当該データの提供を求めることができる。
2 前項の規定による求めを受けた主務大臣は、当該求めに係るデータを自ら保有する場合において、当該求めについて次の各号に掲げる事由のいずれにも該当すると認めるときは、遅滞なく、当該データを当該求めをした者に提供するものとする。
一 当該データの収集が、特定革新的データ産業活用の効果的かつ効率的な実施に不可欠なものであること。
二 当該データの提供が、他の法令に違反し、又は違反するおそれがないものであること。
三 当該データを提供することにより、公益を害し、又はその所掌事務若しくは事業の遂行に支障を及ぼすおそれがないものであること。
3 第一項の規定による求めを受けた主務大臣は、前項に規定する場合において、当該求めについて同項各号に掲げる事由のいずれかに該当しないと認めるときは、遅滞なく、当該求めに応じた提供を行わない旨及びその理由を当該求めをした者に通知するものとする。
4 第一項の規定による求めを受けた主務大臣は、当該求めに係るデータをその所管する公共機関等、他の関係行政機関の長又は他の関係行政機関の長の所管する公共機関等が保有する場合において、当該求めについて第二項第一号に掲げる事由に該当すると認めるときは、遅滞なく、当該データを保有するその所管の公共機関等又は他の関係行政機関の長(その所管する公共機関等が当該データを保有する場合の当該他の関係行政機関の長を含む。次項、第八項及び第九項において同じ。)に対し、当該データの提供を要請するとともに、その旨を当該求めをした者に通知するものとする。
5 第一項の規定による求めを受けた主務大臣は、前項に規定する場合において、当該求めが第二項第一号に掲げる事由に該当しないと認めるときは、遅滞なく、当該求めに係るデータを保有するその所管の公共機関等又は他の関係行政機関の長に対して当該データの提供を要請しない旨及びその理由を当該求めをした者に通知するものとする。
6 第四項の規定による要請を受けた関係行政機関の長は、当該要請に係る求めに係るデータを自ら保有する場合において、当該求めについて第二項各号に掲げる事由のいずれにも該当すると認めるときは、遅滞なく、当該求めに係るデータを当該求めをした者に提供するとともに、主務大臣にその旨を通知するものとする。
7 第四項の規定による要請を受けた関係行政機関の長は、前項に規定する場合において、当該要請に係る求めについて第二項各号に掲げる事由のいずれかに該当しないと認めるときは、遅滞なく、当該求めに応じた提供を行わない旨及びその理由を主務大臣に通知するものとする。
8 第四項の規定による要請を受けた関係行政機関の長は、当該要請に係る求めに係るデータをその所管する公共機関等が保有する場合において、当該求めについて第二項第一号に掲げる事由に該当すると認めるときは、遅滞なく、当該データを保有するその所管の公共機関等に対し、当該データの提供を要請するとともに、その旨を主務大臣に通知するものとする。
9 第四項の規定による要請を受けた関係行政機関の長は、前項に規定する場合において、当該要請に係る求めについて第二項第一号に掲げる事由に該当しないと認めるときは、遅滞なく、当該要請に応じて前項の公共機関等に要請を行わない旨及びその理由を主務大臣に通知するものとする。
10 第四項又は第八項の規定による要請を受けた公共機関等は、当該要請に係る求めについて第二項各号に掲げる事由のいずれにも該当すると認めるときは、遅滞なく、当該求めに係るデータを当該求めをした者に提供するとともに、当該公共機関等を所管する主務大臣又は関係行政機関の長にその旨を通知するものとする。
11 前項の規定による通知を受けた関係行政機関の長は、その旨を主務大臣に通知するものとする。
12 第四項又は第八項の規定による要請を受けた公共機関等は、当該要請に係る求めについて第二項各号に掲げる事由のいずれかに該当しないと認めるときは、遅滞なく、その旨及びその理由を当該公共機関等を所管する主務大臣又は関係行政機関の長に通知するものとする。
13 前項の規定による通知を受けた関係行政機関の長は、その旨を主務大臣に通知するものとする。
14 第七項から第九項まで、第十二項及び前項の規定による通知を受けた主務大臣は、遅滞なく、その通知の内容を当該通知に係る第一項の規定による求めをした者に通知するものとする。
15 国の機関及び公共機関等は、第一項の規定による求めがあったときは、官民データ活用推進基本法の趣旨にのっとり、積極的なデータの提供に努めるものとする。

 

〇参考サイト

経産省

www.meti.go.jp

生産性向上特別措置法

同施行令

個人情報保護法