ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

マイナンバーカードの活用パターン

マイナンバーカードを使うのって、どういうパターンがあるのかの整理です。

 

 

パターン類型

1)紙の身分証明書として使う

→民間も利用できる
2)番号証明書

→民間も利用できる
3)デジタル身分証明書 ①電子証明書の活用

→民間も利用できるが一部大臣認定要
4)デジタル身分証明書う ②ICカードの空き領域活用

政令

 

1)紙の身分証明書

1は、ツタヤとかBOOKOFFとか銀行とか区役所で身分証明証を出してねと言われたときに、マイナンバーカードを運転免許証のような身分証明書として使うパターン。

マイナンバー自体は使っていないという整理で、番号法の規制対象外。もちろん、マイナンバーをコピーしたり書き写したりしたら、番号法の規制がかかって、ダメ(個人番号関係事務の範囲なら、2でやることになる)。

 

2)番号証明書

勤務先や金融機関、報酬の支払者などにマイナンバーを提示しなくてはならないとき、自分のマイナンバーが正しいことを証明するために、マイナンバーカードを出すパターン。マイナンバーカードでなくても通知カードや住民票の写しでもよいが、マイナンバーカードなら1枚でOKで便利。通知カードや住民票の写しを使う場合は、別途ほかの身分証明書(運転免許証等)が必要になってしまう。

民間事業者も公的機関も、正当にマイナンバーを聞き取れる範囲で、番号証明書の提示を受けることは当然できるし、コピーを取って保管もできる(安全管理が必要だが)。

 

3)デジタル①電子証明書

マイナンバーカードを使うものの、マイナンバーは使わずに、中に搭載されている電子証明書を使うパターンで、一般に理解しづらい。

PasmoSUICAを、電車の乗り降りと関係なく、支払とかに使うようなイメージで、マイナンバーと関係ない場面でも、ICカードなので便利に使える。

オンラインバンキング、ネットオークション、オンライントレードなどの本人確認などにも使えるし、IDとパスワードでログインするよりも安全。IDとパスワードだと総当たり攻撃とかがあり得るけど、マイナンバーカードは所持していないとだめだし、なくしたら利用停止できるので。

eTaxとかマイナポータルとかコンビニ交付を使う際にマイナンバーカードを使うのもこのパターン。保険証になって、病院の窓口でマイナンバーカードをピッとやるのも、このパターン(利用者証明用電子証明書)。

マイナンバーは使わないので、番号法ではなく、「電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律」が適用になる(この法律は、私は詳しくはない)。

36条1項・17条1項で、失効情報の提供を受けられる者が限定されており、民間事業者が利用する場合は、総務大臣の認定を受ける必要があるのが原則(17条1項6号)。但し、大臣認定を受けているプラットフォーム事業者を使えば、個社は個別に大臣認定を受けずに使うことができる。またマイナポータルを使えば、個社は個別に大臣認定を受けずに使うことができる。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000522887.pdf

上のPDFが大臣認定を受けた事業者一覧です。

 

4)デジタル② ICカードの空き領域

3と違って、3はICカードに載っている電子証明書の利用で、4は、ICカードっていっても、領域が空いている(PCでいえば、容量が余っている的)ので、そこを活用すると、また便利に使えるよ、というもの。

民間が使う場合は、大臣基準適合が必要。

番号法

(個人番号カードの利用)
第十八条 個人番号カードは、第十六条の規定による本人確認の措置において利用するほか、次の各号に掲げる者が、条例(第二号の場合にあっては、政令)で定めるところにより、個人番号カードのカード記録事項が記録された部分と区分された部分に、当該各号に定める事務を処理するために必要な事項を電磁的方法により記録して利用することができる。この場合において、これらの者は、カード記録事項の漏えい、滅失又は毀損の防止その他のカード記録事項の安全管理を図るため必要なものとして総務大臣が定める基準に従って個人番号カードを取り扱わなければならない。
一 市町村の機関 地域住民の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務
二 特定の個人を識別して行う事務を処理する行政機関、地方公共団体、民間事業者その他の者であって政令で定めるもの 当該事務

番号法施行令

(個人番号カードの利用)
第十八条  法第十八条第二号に掲げる者が、同条の規定により個人番号カードを利用するときは、あらかじめ、当該個人番号カードの交付を受けている者にその利用の目的を明示し、その同意を得なければならない。 
2  法第十八条第二号の政令で定める者は、次に掲げる者とする。 
一  国民の利便性の向上に資するものとして総務大臣が定める事務を処理する行政機関、独立行政法人等又は機構 
二  地方公共団体に対し申請、届出その他の手続を行い、又は地方公共団体から便益の提供を受ける者の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務(法第十八条第一号に定める事務を除く。)を処理する地方公共団体の機関 
三  地方独立行政法人に対し申請、届出その他の手続を行い、又は地方独立行政法人から便益の提供を受ける者の利便性の向上に資するものとして条例で定める事務を処理する地方独立行政法人 
四  国民の利便性の向上に資するものとして総務大臣が定める事務を処理する民間事業者(当該事務及びカード記録事項の安全管理を適切に実施することができるものとして総務大臣が定める基準に適合する者に限る。) 

 

施行令18条4号に基づく者がいるかどうかは、私の知る限りでは不明です。

ただ、総務省資料によると、マイナンバーカードの空き領域を民間が使えるように、J-LISでクラウドサービスをやっているようです。実際に使っている人がいるかどうかは、私は知りませんが、大々的な資料なので、使っている人はいるかもしれません。

各省の入退館カードとしてマイナンバーカードを使っているけど、あれがどういう契約構成かは知りませんが、例えば民間企業のサービスを各省が契約しているとしたらその民間企業は、この施行令18条4号になる。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000436829.pdf

 某件で、上の空き領域のPDFを初めて知りました(笑)。

 ちなみにPasmoとかも、こういうことができるかも?お店で、Pasmoをポイントカードにしているお店があったので、Pasmoの番号を引っ張ってきて、独自に自社システムで管理しているのか、それともPasmoの空き領域を使っているのかはわかりませんが…。

 

総務省もこういう整理をまずばーんってホームページに書いた方が、一般人にとってはわかりやすいと思います。で、それぞれでできること、できないこと、っていうか、メリット/デメリットを載せていったらいいのでは? まあでもそんなにマイナンバーカードを使いたいっていう人が多くないのであれば、こういう整理をわざわざするより、相談に来た人の個別対応で良いのかもしれません。