ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

【マイナンバーQ&A】地方公共団体がマイナンバーを利活用することはできるのか?

地方公共団体です。
マイナンバー利活用」という言葉は聞きますが、コンビニ交付ぐらいしか思いつきません。
うちはもうコンビニ交付をやっているので、そうするとマイナンバーの利活用ってもう他になくないですか?
そもそもマイナンバーって利活用できるのですか?

マイナンバーの利活用には二種類あります。
1.マイナンバー(番号自体)の利活用
2.マイナンバーカードの利活用

世間的に「マイナンバーの利活用」というと2「マイナンバーカードの利活用」をイメージされがちですが、「番号自体の利活用」も有意義です。

マイナンバーの効果とはなんでしょうか。住所変更や氏名変更があっても対象者を正確に特定できることです。これはお客様番号、ユーザID、住基コードなどと一緒ですね。この効果を利活用すれば、業務効率化・サービス向上を図ることができます。

具体例を挙げましょう。
例えば、箕面市では子供成長見守りシステムを構築しています。

「貧困の連鎖」を断ち切るためには、乳幼児期から小中学校、高校卒業の時期に至るまで、切れ目なく子どもの状況を把握し、サポートし続けることが必要である。そのために、箕面市では各部署が把握している子どもの情報を集積し、定期的に見守り対象者を判定し、早期に必要な支援を行うために「子ども成長見守りシステム」を構築した。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/14/1384317_5.pdf

当たり前の話ですが、このシステムでは対象の子どもを特定する必要があります。
A山X子さん、B川Y男さん(氏名のたとえが古い(笑))などと管理していると同姓同名もいます。そのため住所・生年月日なども合わせて個人を特定します。しかし親が離婚や結婚を繰り返して名字が変わったり、転居を繰り返して住所が変わる場合もあります。そうすると、前の住所のA山X子さん(現在の名前はC野X子さん)と今の住所のC野X子さんが同一人物であるという紐づけが必要です。これをシステムで管理するために住民番号を使うことが多いでしょう。しかし既存住基の住民番号は首長部局でしか持っておらず、教育委員会が持つデータには住民番号が付番されていない場合もあります。また既存住基の住民番号では、重複付番や情報の未更新などもありえ、対象者管理に問題が残る場合もあります。

そこで、マイナンバーの出番です(シャキーン!)!!!
住民票に記載されているマイナンバーを氏名・住所・生年月日などとともに抽出します。そしてこのシステム内に投入し、対象者管理はマイナンバーで行います。そうすれば住所が変更しても名字が変更しても、対象者が同一人物であることを正確に特定できます。

対象者が正確に特定できないと、せっかくある子供の状況を把握して見守ろうとしても、別人の状況と混同していたなどという悲劇的状況が起こりかねません。対象者を正確に特定し管理することは、とても大事です。そこでマイナンバーです!

では、マイナンバーをこのような用途に活用してもいいものなのでしょうか?

答えは、YESです!(なぜか今日はテンションが高めです)

地方公共団体に限って、マイナンバーの番号機能を利活用することが認められています。但し、地方公務員独自の判断ではできません。それは民主的正当性を担保された議会の判断を経る必要があります。つまり、条例が必要ということです。条例に規定して、議会でOKされれば、マイナンバー法地方公共団体マイナンバー独自利用(社会保障・税・災害対策)を認めているというか、予定しているのです!

では、条例はどのように手当てすればよいでしょうか。以下の二つを行いましょう。
(1)独自事務条例に事務を追加
(2)庁内連携条例に事務・情報を追加(他機関連携も必要なら条例に追加)


まず、マイナンバーを独自利用するための条例が既にどこの自治体でもあるはずです。外国人生保などにマイナンバーを独自利用していると思います。その事務の一つとして、活用したい事務名を追加しましょう。箕面でいえば、子ども成長見守り事務でしょうか。正式な事務名があると思いますので、それを調べて、条例に事務として追加しましょう。

そして、子供成長見守り事務以外の事務と情報のやり取りをしたい場合は、庁内連携条例も追加しましょう。例えば、地方税事務から当該子の親の所得額情報をもらってきて、子供成長見守り事務で管理したいとか、学童検診システムから子供の健診結果情報をもらってきて子ども成長見守り事務でも使いたいというような場合は、庁内連携条例にもその旨を追加しましょう。

教育委員会と首長部局というように、機関をまたいで連携する場合は、他機関連携条例も追加します。


条例の手当てはそんなには難しくありません。なぜなら新規条例を立てるわけではなく、既にマイナンバー用にある条例に一行程度追加するだけだからです。独自事務条例や庁内連携条例はどの自治体でもすでにありますね。そこに一行程度追加していきましょう。

PIAを実施しなければならないことも考えられますが、基本的に基礎項目評価となりそうなデータ量なので、作業負荷は低いでしょう。



最後に簡単にマイナンバーカードの利活用に触れます。
コンビニ交付もマイナンバーカードの利活用事例ですね。あとは姫路市のように図書館カードで利用するとかもマイナンバーカードの利活用です。健康保険証として活用するとか、WEB母子手帳のログインにマイナンバーカードを使うとかも、マイナンバーカードの利活用です。こちらは先進的な自治体がいらっしゃるかと思います。

それに対してマイナンバーの番号自体の利活用は、あまり聞こえてきません。

これはおそらくマイナンバーカードの利活用は総務省自治部局、テレコム部局)が政策として一生懸命やっているので、資料もあるし、国費もあるし、先進自治体情報も出てくるからではないかと思います。
これに対しマイナンバーの番号自体の利活用は、国がどこか政策として進めているというわけではありません。本来は内閣府が所管ですが、内閣府として自治体に積極的に利活用を進めたりはしていないですね。
しかし特に国が政策として進めていなくても、番号の利活用自体はマイナンバー法がそもそも予定しているところですので、気にする必要はありません。府省として積極的に取り組むか否かは、府省の判断であり、特に自治体がそれに左右される必要はありません。
法律上予定されており合法・適法にでき、かつ住民サービス向上&業務効率化・正確化につながることですので、ぜひ積極的に取り組んでみることをご検討されませんか。


なお、箕面市の例を挙げましたが、箕面マイナンバー本体の番号機能を活用しているというわけではなく、単純に、箕面のICT利活用事例に私が触れる機会がありまして、こういったものにマイナンバーを活用すればいいなと思った次第です。