ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

医療情報の開示について

医療情報の開示に関するメモです(メモなので不正確な恐れがあります)

カルテ情報も看護記録も検査記録も処方箋もレセプト(診療報酬明細書)も、すべて患者が見せてくれと開示請求をすることができる。
もっとも、個人情報保護法では、
1 本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
2 当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
3 他の法令に違反することとなる場合
には、開示義務が発生しない(同法28条2項)。

個人情報保護法の上記の規定は医療情報に限った話ではなく、入試の成績、購入履歴など、さまざまな分野の保有個人データにも当てはまるが、医療情報については、それ以外の保有個人データとは異なり、「本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれ」の判断等に際し、主治医の判断を要するという配慮が加えて求められる。

病名を告知されていない患者がレセプトを開示したとして、レセプト情報から、告知されていない病名を把握した場合、患者本人に重大な心理的影響を与えてその後の治療効果等に悪影響を及ぼす場合や、本人の患者と家族や患者の関係者との人間関係が悪化する場合などもありえる。そこで、厚生労働省では以下の通知等を発出している。

  • 診療情報の提供等に関する指針
  • 「診療報酬明細書等の被保険者等への開示について」(平成17年3月31日保発第0331009号)
    • 健康保険組合等における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス8ページにて遺族からの開示請求に言及する際に引用。48ページにて個人情報保護法28条2項1号の判断にあたって主治医の見解を求める記載に際して引用。
    • この通知により、「診療報酬明細書等の被保険者への開示について」(平成9年6月25日付け老企第64号、保発第82号、庁保発第16号及び「遺族に対する診療報酬明細書等の開示の際の保険医療機関等に対する連絡の見直しについて」(平成14年11月25日付け保保発第1125002号)は廃止
    • 平成23年に改正(「「診療報酬明細書等の被保険者への開示について」の一部改正について」(平成 23 年6月 20 日付け保発 0620 第2号厚生労働省保険局長通知))。
      • 平成 22 年4月以降、医療の透明化や患者への情報提供を積極的に推進していく観点から、電子請求が義務づけられている保険医療機関等は、正当な理由がない限り、検査や処置の項目ごとの費用を記載した明細書を無償で発行する取扱いに見直したが(平成 22 年3月5日保発 0305 第2号)、保険者が行うレセプト開示の取扱いについても、同様の観点から、見直し。保険者は、被保険者等からレセプトの開示を求められた場合は、レセプトのうち「『傷病名』欄」、「『摘要』欄」、「症状詳記」(※1)、「『医学管理』欄」、「全体の『その他』欄」(※2)及び「『処置・手術』欄中の『その他』欄」(※2)を伏して開示することに被保険者等が同意した場合は、保険医療機関にレセプトの開示を事前確認する手続きを経ずに、被保険者等に開示を行う。また、保険者は、このレセプトの開示について、保険医療機関等に速やかに通知する。→資料
      • この改正を受けた手続の改正の際の参考として「「健康保険組合における診療報酬明細書等の開示の取扱いについて」の一部改正について」(平成 23 年6月 20 日付け保保発 0620 第1号厚生労働省保険局保険課長通知)が発出
  • 医師の個人情報という件について
    • ば診療録の情報の中には、患者の保有個人データであって、当該診療録を作成した医師の保有個人データでもあるという二面性を持つ部分が含まれるものの、そもそも診療録全体が患者の保有個人データであることから、患者本人から開示の請求がある場合に、その二面性があることを理由に全部又は一部を開示しないことはできない。ただし、法第28条第2項各号のいずれかに該当する場合には、法に従い、その全部又は一部を開示しないことができる(医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス 55ページ)