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弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

【マイナンバーQ&A】後期高齢者広域連合事務周りの庁内連携条例をめぐる質問

市町村の後期高齢者広域連合事務周りの、庁内連携条例の必要性の有無が、よくわかりません。通知は見て、考え方は理解したつもりですが、税務課と保険課の所得情報のやりとりなど、個別具体的な場合について、条例が必要かどうか、自信がもてません。

  • 市区町村の個人住民税システムから市区町村の後期高齢者医療システムや窓口端末に所得額情報を渡している場合、これは特定個人情報の庁内連携に該当しますか
    • 庁内連携に該当します。
    • 庁内連携とは、同一機関内(首長部局内等)で、複数の事務のために、個人情報のやり取りをしている場合で、複数事務双方が個人番号を利用する事務である場合をいいます。ポイントは、(I)「同一機関内かどうか」、(II)「複数事務かどうか」、(III)「双方が個人番号を利用する事務か」です。例えば、生活保護事務が税務事務から所得額情報をもらっている場合、生活保護事務と税務事務という個人番号を利用する複数の事務の間で、個人情報のやりとりをしていますので、庁内連携に該当します。
    • ご質問の事例の場合、後期高齢者事務と税務事務という個人番号を利用する複数の事務の間で、個人情報のやりとりをしていますので、庁内連携に該当します。
    • 庁内連携条例のスタイルですが、別表第二を参照するような包括規定でいけるのか、個別に事務や情報を列挙しなければならないのかは、別表第二の80の項・別表第二主務省令43条に相当する事務のためのやりとりかによって変わってきます。相当するのであれば、包括規定でOKで、相当しないのであれば、個別規定を設けないといけません。
    • (2016.2.3追記)なお、別表第二の80の項は、「広域連合」と「市町村」の間の地方税関係情報の連携に関する規定になっています。別表第二を参照するような包括規定の場合、別表第二には「広域連合」「市町村」と書いてあって、「市町村」「市町村」間の連携という規定ぶりではありません。この場合、包括規定でいけるのかという論点があります。
      • これは、包括規定の規定ぶりに依ってきます。例えば、「○○市の執行機関は、当該執行機関が番号法別表第1の下欄に掲げる事務又は住民基本台帳法による住民基本台帳事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルに記載又は記録された番号法別表第2の第4欄に掲げる特定個人情報を、同表の第2欄に掲げる事務を処理するために効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で個人番号を利用することができる。」という条文だとすると、これは包括規定でOKと考えられます。
      • なぜなら、この条文では、第1欄に自分が該当するかどうかは何も言っていないからです。もっとも、そうすると、無限定に市町村はどのような事務でも、例えば厚生労働大臣が行ったり国税庁長官が行ったりする事務のためにも個人番号を利用できるようにも読めてしまうのではないかという疑義が生じますが、この点も問題ないと考えます。市町村が行える事務は、法律・条例の根拠があるはずで、自分が実施できない事務のために個人番号を利用することはできないので、この条文で問題ないと思うのです。まとめると、包括規定の条文の書きぶりによりますが、私が示した案文であれば、別表第二が「広域連合」「市町村」間のやりとりを規定している場合でも、OKと考えます。
  • 市区町村に設置される後期高齢者医療標準システム窓口端末から広域連合後期高齢者医療標準システムに資格情報等を渡している場合、これは特定個人情報の庁内連携に該当しますか
    • 庁内連携に該当しません
    • これは、同一機関内で、同一事務のために、個人情報のやり取りをしている場合に当たると解釈され、庁内連携に該当しません。詳しくは、下の「前提」以下をご覧ください。
  • 後期高齢者医療制度では「生活保護法による保護を受けている世帯(その保護を停止されている世帯を除く。)に属する者」は、適用除外となっています。そのため、適用除外者の漏れが無いよう、市後期高齢者担当が、市生活保護担当に、事前に該当者がいないか照会をしています。庁内連携条例が必要でしょうか。
    • 同一機関内で、生活保護事務と後期高齢者事務という個人番号を利用する複数の事務で、個人情報のやりとりを行いますので、これは庁内連携に該当します。
    • 別表第二にこれに相当する庁内連携はないように見受けられますので、そうすると庁内連携条例のスタイルとして、別表第二を参照するような包括規定ではだめで、個別規定を設けないといけません。が、私は市町村事務に詳しくないので、別表第二にこれに相当する庁内連携があるかどうか、見落としている可能性もありますので、市町村の方と一緒に、これに相当する別表第二があるかどうか、チェックしてみたいと思います。
  • (2016.2.3追記)市町村の後期高齢者担当が事前に生活保護世帯に関する照会をしない場合、つまり、75歳になる方のおうちに後期高齢者医療の被保険者証をいったん送付し、生活保護を受けている場合ご本人から申出を受けて資格喪失する場合は、庁内連携条例が必要でしょうか。
    • この場合は、複数の事務間で個人情報のやりとりがあるものではありませんので、庁内連携に該当しません。したがって、庁内連携条例は不要です。
    • このように、庁内連携条例は、各自治体の運用状況によって異なってきますので、全国一律のものではありません。庁内連携の条例を把握したうえでの条例化が必要です。
    • しかし、この場合、本人から届け出がなければ、そのまま後期高齢者の被保険者にもなってしまうかと思います。こうした運用を行っている市町村もあるのでしょうか。
  • 後期高齢者医療保険料の特別徴収については、年額18万円以上の年金を受給している被保険者を対象に行っています。ただし、介護保険料と後期高齢者医療保険料との合算が年金受給額の1/2を越える場合は後期高齢者医療保険料は特別徴収の対象としていません。したがって、被保険者の年金額及び介護保険料額がわからないと特別徴収の対象となるか判定がつきません。この情報をもらうにあたっての庁内連携条例は、包括規定スタイルで可能なのでしょうか。
    • 後期高齢者事務と、介護保険事務の間で、個人情報のやりとりをしますので、庁内連携に該当します。
    • 特別徴収は、後期高齢者法107条1項の特別徴収に関する規定、そして同法110条に基づき、介護保険法第百三十四条から第百四十一条の二までの規定が準用されます。
    • 番号法別表第二を見ますと、後期高齢者医療広域連合は、保険料の徴収に関する事務のために介護保険給付等関係情報を照会できるように規定されていますが(80の項)、別表第二主務省令を見ると、特別徴収するかどうかを決定するために介護保険料額をもらうことは規定されていないように見えます。そうすると、庁内連携条例のスタイルとして、別表第二を参照するような包括規定ではだめで、個別規定を設けないといけません。が、私は市町村事務に詳しくないので、別表第二主務省令にこれに相当する庁内連携があるかどうか、見落としている可能性もありますので、市町村の方と一緒に、これに相当する別表第二主務省令があるかどうか、チェックしてみたいと思います。
  • 私の感想
    • 番号制度は、番号法のほか、個人番号を利用する個別の事務の流れ、根拠法を理解する必要があります。私は番号法はわかりますが、後期高齢者法などはわからないですし、後期高齢の事務をやったことがありませんので、このあたりは、厚生労働省か市町村の方に教えていただきながら、ご一緒に検討したいと思います。
    • デジタルPMOや政府回答などにご不満をおもちの方もいらっしゃるかもしれませんが、番号法のみを理解していても、結局、事務の根拠法がわからないと上記のように確答ができない場合も多いと思われ、こういうところは、厚生労働省と市町村と内閣府の連携が必要になると思います。

前提

  • 一部事務組合等と地方公共団体との間の特定個人情報のやりとりは、「提供」ではなく「利用」
    • ∵一部事務組合等は地方公共団体になりかわり事務を行う
      • ∵∵普通地方公共団体及び特別区は、その事務の一部を共同処理するため、一部事務組合を設けることができ、この場合において、一部事務組合内の地方公共団体につきその執行機関の権限に属する事項がなくなつたときは、その執行機関は、一部事務組合の成立と同時に消滅する(地方自治法284条2項)。広域連合も同様(同条3項)。
      • ∵∵一組、広域連合(地方公共団体の組合)については、特別の定めがあるものを除き、都道府県に関する規定、市町村に関する規定が準用される(地方自治法292条)。
    • 以上、、「一部事務組合又は広域連合と構成地方公共団体との間の特定個人情報の授受について(通知)」(平成27年2月13日府番第27号、総行住第14号、総税市第12号)より
  • 庁内連携とは、同一地方公共団体の同一機関内での、複数事務をまたぐ特定個人情報のやりとり
    • 他団体等とのやりとりであれば、「庁内」ではなく「庁外」であり、「利用」ではなく「提供」であるため、庁内連携に該当しない。
    • 同一事務であれば、「連携」ではなく、別表第一又は独自事務内での特定個人情報の利用であり、庁内連携に該当しない。
    • 同一団体内の他機関とのやりとりであれば、「庁内」だが、「利用」ではなく「提供」であるため、番号法9条2項ではなく、番号法19条10号条例が必要。
  • 一部事務組合等と地方公共団体とで共同事務処理をしている場合→庁内連携に該当しない
    • 一部事務組合等を設立し、地方公共団体と一組等で一緒に事務処理をしている場合。例えば、地方公共団体では窓口事務、一組等では審査・支払事務等。
    • →この場合は同一部署内で同一事務のための特定個人情報のやりとりになる。地方税事務のために、A市税務課のBさんとCさんとの間の特定個人情報のやり取りと同様。したがって、庁内連携条例は不要。「一部事務組合又は広域連合と構成地方公共団体との間の特定個人情報の授受について(通知)」(平成27年2月13日府番第27号、総行住第14号、総税市第12号)も同旨。