ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

高額療養費制度

マイナンバーのメリットを説明するときに、高額療養費制度が引き合いに出されることがよくあります。というか、私の本で、私もそのように書いていますが、現行制度だと、高額医療・介護合算制度ぐらいしかないものの、それが医療・介護だけではなく、障害・保育なんかも合算でき、一人ひとりの状況に寄り添ったきめ細やかな社会保障政策の実現も可能になると考えられます。

しかし、実際、自分が高額療養費制度を利用したところ、少し「えー」と思うことがありました。

2014年7月下旬に特定個人情報保護委員会を退職したため、退職日までは協会けんぽに加入していて(国共済に入れてくれないので…)、退職日の次の日からは別の健康保険に加入することになりました。で、2014年7月の医療費が自己負担額を超えたので、高額療養費の申請をしようとしたら、協会けんぽの被保険者証で支払った額が自己負担額を超えているか、別の健康保険の被保険者証で支払った額が自己負担額を超えているかで、お金が戻ってくるかどうか決まるそうです。

たとえば、2014年7月15日に退職したとすると、2014年7月16日に新しい健康保険に加入することになりますが、2014年7月1日から15日までの医療費が自己負担内で、2014年7月16日から31日までの医療費がこれまた自己負担内だと、2014年7月1日から31日までの医療費合算では自己負担額を超えていても、高額療養費制度の対象にならないそうです。

高額療養費制度って、月単位じゃなく、大元は保険者ごとなんですね。
そもそも保険給付自体が保険者ごとだから仕方がないというような話を聞きましたが、医療費をいっぱい支払って大変な人に、自己負担額上限を所得ごとに定めて、保険でみんなで助け合いましょうという制度なのかと思いましたが…。

しかも、実際高額療養費を使う場面って、保険外も結構かさんでいて、つらいんですよね。差額ベッド代も、病院によって高いところと安いところとゼロのところがあるし、入院するか否かのときに差額ベッド代まで確認の上入院できる時間的余裕がないことも多いし。食事療養費その他保険外って結構かかるので、健康保険の制度自体が保険者ごとの仕組みになっているとか、保険は病気治療に関することっていうのはわかるのですが、サービスの受け手から見て納得できる制度になってほしいなあと…。

まあそんなこというのは、自分がサービスの受け手だからであって、制度の担当者だったら、そんな抜本的な見直しは大変だというのはわかるのですが、なんとも…。