マニアックな内容です。
国の持つ、いわゆるビッグデータを民間が利活用できるように、行政機関個人情報保護法(行個法)が改正され、「非識別加工情報」というジャンルが新設されました。
民間がそのデータをもらうためには、行個法の定める手続きに従う必要があります。
その手続等について、1)行政機関が生データから一から非識別加工情報を作って民間に提供する場合と、2)すでに1により作成された非識別加工情報を民間に提供する場合とで、規定に差異がありますので、今回はそのまとめです。
行個法では、非識別加工情報の手続について、主に以下の規定を置いています。
- 個人情報ファイル簿への記載(44条の3・44条の11):行政機関が行う
- 44条の3は、個人情報ファイルが非識別加工情報の要件を満たすときに、提案の募集をするファイルである旨等を記載する
- 44条の11は、非識別加工情報の作成を作成したときに、概要、提案を受ける組織名、提案期間等を記載する
- 提案の募集(44条の4):行政機関が行う
- 提案(44条の5):民間が行う
- 欠格事由(44条の6):提案できない人についての規定
- 提案の審査(44条の7第1項):行政機関が行う
- 提案の審査結果の通知(44条の7第2・3項):行政機関が行う
- 第三者に対する意見書提出の機会の付与(44条の8):行政機関が行う
- 契約(44条の9):行政機関&民間双方が行う
- 非識別加工情報の作成(44条の10):行政機関が行う
これらは、1)行政機関が生データから一から非識別加工情報を作って民間に提供する場合の規定です。
そして、2)すでに1により作成された非識別加工情報を民間に提供する場合には、44条の12によって一部規定が準用されています。2)すでに1により作成された非識別加工情報を民間に提供する場合の手続は、次のとおりです。
- 個人情報ファイル簿への記載(44条の3・44条の11):1の時点ですでに実施済
- 提案の募集は特にせず、提案できる期間が個人情報ファイル簿へ記載されているので、その期間内に提案する(44条の11第3号)
- 提案(44条の12第1項)
- 欠格事由(44条の6・44条の12第2項)
- 提案の審査(44条の7第1項・44条の12第2項)
- 提案の審査結果の通知(44条の7第2・3項・44条の12第2項)
- 第三者に対する意見書提出の機会の付与(44条の8)は1の時点ですでに実施済
- 契約(44条の9・44条の12第2項):行政機関&民間双方が行う
- 非識別加工情報の作成(44条の10)は1の時点ですでに実施済
差異は次のとおり
- 提案書の様式が第一から第六に(規則13条)
- 対象者数、加工方法が不要。ファイル名ではなく非識別加工情報を特定できることが必要に(実際には元ファイル名と非識別加工情報である旨で特定することになるか)
- 提案の審査内容から、対象者数、加工方法が除外。行政機関/独立行政法人等に著しい支障を及ぼさないか否かについて審査する必要はない(行政機関個人情報保護法・独立行政法人等個人情報保護法44条の7第1項・44条の12第2項、行政機関非識別加工情報規則・独立行政法人等非識別加工情報規則7条・13条)
- 審査通過の通知様式が第三から第七に(規則13条)
- 審査不通過の通知様式が第五から第八に(規則13条)
なお、44条の5第2項等について読替が行われますので、読み替えを溶け込ませた条文を以下に貼っておきます。
(行政機関非識別加工情報をその用に供して行う事業に関する提案)
第四十四条の五
2 前項の提案は、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、次に第一号及び第四号から第八号までに掲げる事項を記載した書面を行政機関の長に提出してしなければならない。
一 提案をする者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人その他の団体にあっては、その代表者の氏名
二 提案に係る個人情報ファイルの名称
三 提案に係る行政機関非識別加工情報の本人の数
四前号に掲げるもののほか、提案に係る行政機関非識別加工情報の作成に用いる第四十四条の十第一項の規定による加工の方法を特定するに足りる事項
五 提案に係る行政機関非識別加工情報の利用の目的及び方法その他当該行政機関非識別加工情報がその用に供される事業の内容
六 提案に係る行政機関非識別加工情報を前号の事業の用に供しようとする期間
七 提案に係る行政機関非識別加工情報の漏えいの防止その他当該行政機関非識別加工情報の適切な管理のために講ずる措置
八前各号第一号及び第四号から前号までに掲げるもののほか、個人情報保護委員会規則で定める事項
3 前項の書面には、次に掲げる書面その他個人情報保護委員会規則で定める書類を添付しなければならない。
一 第一項の提案をする者が次条各号のいずれにも該当しないことを誓約する書面
二 前項第五号の事業が新たな産業の創出又は活力ある経済社会若しくは豊かな国民生活の実現に資するものであることを明らかにする書面
(提案の審査等)
第四十四条の七 行政機関の長は、第四十四条の五第一項の提案があったときは、当該提案が次に第一号及び第四号から第七号までに掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。
一 第四十四条の五第一項の提案をした者が前条各号のいずれにも該当しないこと。
二 第四十四条の五第二項第三号の提案に係る行政機関非識別加工情報の本人の数が、行政機関非識別加工情報の効果的な活用の観点からみて個人情報保護委員会規則で定める数以上であり、かつ、提案に係る個人情報ファイルを構成する保有個人情報の本人の数以下であること。
三 第四十四条の五第二項第三号及び第四号に掲げる事項により特定される加工の方法が第四十四条の十第一項の基準に適合するものであること。
四 第四十四条の五第二項第五号の事業が新たな産業の創出又は活力ある経済社会若しくは豊かな国民生活の実現に資するものであること。
五 第四十四条の五第二項第六号の期間が行政機関非識別加工情報の効果的な活用の観点からみて個人情報保護委員会規則で定める期間を超えないものであること。
六 第四十四条の五第二項第五号の提案に係る行政機関非識別加工情報の利用の目的及び方法並びに同項第七号の措置が当該行政機関非識別加工情報の本人の権利利益を保護するために適切なものであること。
七前各号第一号及び前三号までに掲げるもののほか、個人情報保護委員会規則で定める基準に適合するものであること。
2 行政機関の長は、前項の規定により審査した結果、第四十四条の五第一項の提案が前項各号前項第一号及び第四号から第七号までに掲げる基準に適合すると認めるときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該提案をした者に対し、次に掲げる事項を通知するものとする。
一 第四十四条の九の規定により行政機関の長との間で行政機関非識別加工情報の利用に関する契約を締結することができる旨
二 前号に掲げるもののほか、個人情報保護委員会規則で定める事項
3 行政機関の長は、第一項の規定により審査した結果、第四十四条の五第一項の提案が第一項各号第一項第一号及び第四号から第七号までに掲げる基準のいずれかに適合しないと認めるときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該提案をした者に対し、理由を付して、その旨を通知するものとする。