ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

【マイナンバーQ&A】「庁内連携」と「移転」はイコールなのでしょうか

地方公共団体です。地方公共団体の同一機関内の複数事務での特定個人情報の授受は「庁内連携」と呼称されますが、これと、特定個人情報保護評価の「移転」は同一概念であって、単なる言葉の言い換えと考えてもよいのでしょうか。それとも「庁内連携」=「移転」ではないのでしょうか。

「庁内連携」≒「移転」です。
庁内連携と移転の整理は、今までどの本にも書いていなかったし、講演でも言っていなかったですね。今、執筆中のマイナンバー逐条解説書の作業をしていて、「庁内連携」と「移転」の整理を、どこかにきちんと明記しなければと思いました。書籍中にも書きましたが、ブログでも合わせて解説します。

以下、書籍原稿草稿からのコピペです。

特定個人情報保護評価では、庁内連携は、特定個人情報の「移転」と概ね整理される。「概ね」と記載したのは、庁内連携と移転は必ずしもイコールではないからである。

特定個人情報保護評価でいう移転とは、特定個人情報を特定個人情報保護評価の対象となる事務以外の事務を処理する者の使用に供することをいう(特定個人情報保護評価指針第2の9)。より平易に言い換えると、特定個人情報保護評価書の表紙に記載された事務以外に特定個人情報を渡すことをいう。

この「特定個人情報保護評価の対象となる事務/特定個人情報保護評価書の表紙に記載された事務」が、別表第一の事務の単位とは異なる場合がある。特定個人情報保護評価は、原則として、別表第一の項を単位に実施するものとされているが、それが困難な場合は、別表第一の複数事務を1本の評価書で評価することも認められているし、それとは反対に別表第一では一つの項の事務であるものを複数の評価書で評価することも認められている(特定個人情報保護評価指針第4の2)。特定個人情報保護評価は、プライバシー・インパクト、プライバシー・リスクを検討するものであるが、そのためには特定個人情報の取扱い実態を踏まえる必要があるためである。取扱い実態はシステムの構成、組織体制等によっても異なり、同一システムや同一担当者において実施されている事務は、リスクやインパクトも同様の場合が考えられるため、プライバシー・インパクト、プライバシー・リスクをより的確に捉えられるよう、特定個人情報保護評価における事務の単位は、評価実施機関の合理的裁量に、ある程度委ねられることとなっている。

別表第一の複数事務を、特定個人情報保護評価では一つの事務として評価した場合は、庁内連携に該当するものが、特定個人情報保護評価では「移転」に該当せず、「使用」(特定個人情報保護評価指針第2の8)に該当することとなる。また別表第一の一つの事務を特定個人情報保護評価では複数の事務として評価した場合は、庁内連携に該当しないものの、特定個人情報保護評価では「使用」ではなく「移転」に該当することとなる。

もっとも、特定個人情報保護評価の事務の単位は、別表第一の項を単位とすることが原則であり、この点を踏まえると、実際には庁内連携と移転との間には、大きな差異は生じないものと思われる。