ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

非識別加工情報の状況update

日経新聞が8月16日付で、自治体の非識別加工情報を作成する組織の検討を国が始めるという記事を公表しています。

日弁連で話題に上っていたので、非識別加工情報の状況を総務省に聞いてみました。

すると、正しい記事であるとのことです。
ただ、記事にある通り、作成組織を「設置」することが決まったわけではなく、設置を「検討」することが決まったそうです。
今年度下期目途で、検討の会議を立ち上げる予定だそうですので、議論の経過もネット上にUPされるかと思います。


非識別加工情報は個別自治体ごとに取り組むのは現実的ではありませんね。
理由1)加工が難しすぎる
理由2)全国で統一フォーマット等にしてくれないと、活用できない

作成組織を設置すれば上記の課題は解決されますが、はたして非識別加工情報の提案が増えるのかどうか。


「公権力の持つデータを民間還元する」という発想自体は素晴らしいと思います。このご時世、物でも金でもなくデータを活用していこうというのは、納得できますし、公権力がデータを囲い込むのはおかしく、公権力が持っているデータの価値は誰のものかというと世のため人のためになるべきものです。ゆえに、このような施策がどんどんと打ち出されていくべきだと考えています。

しかし、個々の具体的政策となるとまた別の話。総論賛成各論反対じゃないですけど、オープンデータも非識別加工情報もどうにも普及しないというか…。情報公開請求は普及しているのに、どうにもオープンデータと非識別加工情報はどうなのかなという気がしてしまいます。


私的には、まずは庁内でのデータ利活用から始めるべきではないかと思っています。オープンデータも非識別加工情報も、加工がむずかしいし、外部提供なので、何かあったらまずいという意識が強まる。さらに職員向け(内部向け)に強く促す理由も立ちづらい。
その点、庁内でのデータ利活用であれば、内部で閉じていますので、地方公務員法守秘義務がかかる人たちだけで、個人情報を取り扱いますから安心感が全く違いますし、地域が抱える課題解決のためということで具体的な課題設定をすれば、職員向けの理由も経ちやすいかと。

民間みたいにデータに基づく経営をして、内部でデータを利活用するというマインドを持ってから、そのうえで広域での協働(隣の自治体と一緒に利活用)、そしてさらにその次のステップとしてオープンデータがあると、いいのではないかなと思いました。



なお、私は現在、行政機関に対して非識別加工情報の提案中です。
行政機関での非識別加工情報の実際の運用状況は多くの方にとって大変意味のある情報になると思いますので、どこかのタイミングで適宜ブログに公表していきたいと思います。