ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

税務弘報11月号に寄稿しました

税務弘報11月号に「マイナンバーかけこみ収集の際の注意点」を寄稿しました。

一部、原稿から以下に抜粋します。
なんか抜粋したところだけを見ると、すごくコラム的になってますが、その他の部分は、収集の際の法律上・実務上の注意点についてちゃんと解説しています★




1.はじめに
 平成27年に多大な注目を浴びたマイナンバーだが、今年に入ってからは報道等も少なくなってきている。しかし、マイナンバーの山場は、今年秋から冬にかけてである。マイナンバーの付番開始は平成27年10月5日から、マイナンバーの利用開始は平成28年1月からであるが、実は、平成28年中はそこまで大規模に利用されているものではない。
税務関係では、例えば、平成28年1月以降に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出する場合等にはマイナンバーの記載が求められているが、平成28年中にマイナンバーを記載する書類は、元々、多数の提出が予定されるものではないといえるだろう。マイナンバーが大々的に利用されるのは「平成28年分の所得」等からの法定調書・確定申告書である。平成29年1月末までに税務署に提出する法定調書、平成29年3月15日までに税務署に提出する確定申告書等から、マイナンバーを記載していくことになる。

5.マイナンバーの提供を受けられない場合
 マイナンバーが法定調書に記載されなければ、脱税を始めとする不正の是正という番号制度の主たる目的が十分に果たせないおそれがあるため、できる限りすべての法定調書マイナンバーを記載すべきであり、民間事業者等としても、本人にマイナンバーの提供を求めていくべきである。もっとも、マイナンバーの提供が受けられないことを過度に不安視し、本人に過度な負担をかけるのは不適切である。マイナンバーの提供が受けられなかった場合に、給与や報酬の支払いを差し止めるといったことをもしすれば、訴訟に発展するおそれもあり、控えるべきである。
 筆者は多数の取引先にマイナンバーを提供しなければならない関係で、マイナンバーの提供が遅れることもあるが、その間、報酬を支払ってもらえなかったこともあった。また、マイナンバーの提供が遅れると、赤紙で、何度も提供依頼の書面を送付してくる事業者等もあった。さらには筆者が本人確認資料を正しく送付しているのに、法律上求められていない自署を要求し、再送を求められたこともあった。
 マイナンバーという新しい制度に伴って不安を持つのは仕方がないにしても、制度をきちんと理解し、民間事業者等としてできることを粛々と行い、過度にマイナンバーを不安視して本人に多大な負担をかけることのないよう、冷静な対応が求められる。