ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

雑(もし制度を再設計するならの雑文)

マイナンバー関連の取材を受けていて、「もし今制度を再設計するならどうしますか」という問いを受けた。非常に面白い問い。自分の頭の中で考え続けていきたい。つい、目の前の仕事・課題に気をとらわれてしまうので、マイナンバーについても「定期的な法改正の際に合わせて改正すべきこと、そのために必要な準備は何か」などの観点から今まで見てきてしまっていた。一切合切、白地で考えるならどうするか。これは面白い。マイナンバー以外でも、個人情報でもDXでも、白地で自分が制度設計するならどうするか、という観点から考えてみたい。これは、面白いテーマ。私にとっては自分の大好きなテーマについて白地の制度設計を考えると、マインドフルネスよりも心の調子が整えられそうだ。寝る前に考えたらリラックスできるのではないか、レベル。どうでもいいこと考える暇があったら、これ考えてみたい。

 

で、とりあえず今考えている途中の、マイナンバーについて。だらだらと思いつくままにだらだら雑文として書きます。これをアップデートしていって、いずれ、ちゃんとした文章かパワポにまとめます。

 

1.マイナンバーの効用・価値

・「誰か」ということが正しく早くわかる

・このマイナンバーの効用が発揮できる場面は、というと、申請時・通知時・本人確認時・情報管理時・情報連携時などなど

 

2.オンラインでの使い方

・マイナポータルを、公的機関のポータルサイトにする。Yahoo!みたいなイメージ。

・賛否両論あると思うが、私の思うイメージは、マイナポータルから、自分が受け取れるお金やサービス、払うべきお金などが確認できて、案内が入る。児童手当・年金・健康保険・水道・電気・ガス*1などなど。自治体のWebサイトにログインしてマイページがあって、そこから自分用の申請や自分用のお知らせが受け取れる的イメージだが、自治体だけじゃなくて国のサービスもここにまとめる。自治体も居住市町村だけじゃなくて、都道府県(個人向けサービスは基礎自治体がメインではあるものの、東京都でも、個人事業税、固定資産税、障害者手帳などの事務があるので)、国(国税、年金、雇用保険など)のサービスも入れる。受取、申込み、お知らせ(所得額があと〇万円上がると、児童手当受けられなくなりますとか…、ほかにもこんなサービスがありますよ、とか)関連がまとまっているといいのでは?

申請時などのユーザアクション時には、特別定額給付金みたいに、無駄な入力をさせない。コロナ関連申請みたいに無駄な添付書類つけさせない。基礎情報をまとめておき、それをタップ選択で選べるようにすれば、ユーザ利便性も、受け付けた後の公的機関処理もスムーズ。

ただ、これ実現するのに、マイナンバー実はいらない。住基法改正すれば、住基コードでできる。ログインの確実性のために、カードを要求するとして、そのカードもマイナンバーカードじゃなくて住基カードでも良い*2。ただ、毎回カードかざしを要求されると利便性落ちるので、技術的にそれが回避できるのであれば初回とか〇ヶ月に1回とかだけカードかざしを要求すると良いのでは。

住民票や戸籍を要求する民間サービス・公的サービスについても、マイナポータルからピッとやるか、マイナンバーカード提示で済むようにできないのか。もちろん、民間側ないし公的機関側に読み取り機は必要になってしまうが…。

あとは、ある程度いろいろなサービスが網羅的にマイナポータルから申請・確認できたりできるようになると利便性上がるけど、ある意味あってもなくてもいいサービスがいっぱいあっても利用率上がらないので、キラーコンテンツを2,3個用意した上で、その周辺サービスもある程度たくさんあるとよいのかなあ。

この辺は、民間の事業企画の人が、良いアイディアを出せると思う。

 

3.対面での使い方

・対面だとマイナポータル経由の申請・通知等ができないので、タブレットマイナンバーカードかざしで、基礎情報を入力する必要をなくす。

・こういったDX実現のためなら、マイナンバー実はいらない。マイナンバーカードに格納された、人間の目には読めない、数字を暗号化した値等でよい。ただ、カード自体は必要となる。

 

マイナンバーがいるのは、紙。電子的にすべて実現するなら、人間の目で読める番号は不要。紙がどうしても現状だと必要だから、紙に書く番号が必要。紙に書く場合は、番号だけだと、なりすましが起こってしまう(適当な番号を書いて、他人になりすます)。だから、番号のほかに、身分証明書が必要だし、番号を証明する書類も必要。まあでも、住基コードでも代替可能(ただ、住基カードだと住基コードが書いてなかったようにも思うので、住基コードを証明する書類にならないんだったか)。

テレビ朝日モーニングショーで、「人の目で見て見える番号はいらない」という話を玉川さんが話しているのを聞いたことがあるが、納税者番号として用いて、かつ法定調書に記載する作業がある以上、人の目で見て見える番号がいる。

 

私は、税も社会保障も特に専門というわけではないので、税としてどうあるべきか、社会保障としてどうあるべきかについては特に意見がない。ただ、脱税や不正を防ぎ、納税者や受給者の手続を楽にするようなマイナンバーの使い方をやっていってほしい。法定調書全部にマイナンバーつけさせてるけど、そのあたり、効果が出ているのか。社保税OSSはよさそうだが。

 

税の課題、社会保障の課題を抽出して、それを解決するようなマイナンバー利用をやってほしい。

 

そして社会保障と税の連携という意味でいうと、所得額を情報連携できるぐらいしか現状やっていないのでは? 元々の構想は、総合合算とか給付付き税額控除とかなのだから、もっと社会保障と税を一体化して、税で所得額把握されているのだから、それに基づいて社会保障給付をほぼ自動的にやってくれないものなのだろうか。社会保障が必要な場面っていうのもある意味全員が全員いつも必要なわけじゃないので、例えば病気になったとき、失業したとき、介護されること/することが必要なとき、子育てが必要な時、退職したときなどに、ほぼ自動でこういう給付・サービスが受けられますというメニューを提示する。オンラインで提示するし、対面でも、自治体窓口でコンシェルジュ的な感じで出す*3。役所だと縦割りで、「〇〇制度はわかりません。どこどこに行って聞いてきてください」になりがちだけど、公務員支援のバックでの使い方として、病気になったときに関連するサービスはこれ、みたいにシステム側で表示する。その際、本人同意があれば、世帯構成、所得額、障がいの程度などの情報を連携することで、さらに細かく受けられる給付・サービスがわかるようにするとか。民間サービスも連携しておいて、たとえば損害保険に入っていても、メインの保険じゃないと、いつどういうときに給付が受けられるのかわからなくなっちゃう(例えば、家財を壊した場合の保険などが、自動車保険とか火災保険とかにくっついていたりするが、どれに何がくっついているのかわからなくなっちゃう)ので、自分が入っている保険も登録しておくと、それも見られるとか。でも自分が入っている保険を、関係ない人に見られたくはないだろうから、そこはその目的でしか情報を使えないようにする契約上の縛りを必ずかけるとか。

 

防災・災害対策では、予め自分や家族の住所とか勤務地とかを登録するか役所が持っている情報からひっぱってくれば、給水・給油・充電・食べ物配布・簡易トイレ配布など、支援サービスがどこにあるか、停電とかの復旧状況・河川の水位を表示するとか。まあこれは住所登録よりも、GISで実現するのか。

まずは緊急時の対応をどう支援できるか考えて、その後ライフラインは確保した後のこととしては、被災者支援メニューを一覧で表示して、申請とか面倒くさいことなくほぼ自動で給付・サービスを受けられるようにするとか。お金とおうちと仕事と教育と介護とペットとか、その周りのことを迅速に支援できるようなメニューとしてどういうものがあるのかを明らかにして、罹災証明書とかも、マイナンバーと紐づけておいて、いちいち添付しないで良いとか。

 

あとは、物資の配給みたいな話もあるのか。コロナ初期のマスク不足とかトイレットペーパー不足みたいな話。戦争時に食べ物の配給とかしていたと思うけど、物資が不足する中、どう公平に配布するかというのを、マイナンバーで実現するとか。

 

結局、マイナンバーは無事導入することが目的になってしまっていて、各業務の中でどう使うかは、所管官庁や自治体に任されている。お役所の縦割りだから、導入は導入で、各業務は各業務所管って、それはそうなんだけど、各業務の中でマイナンバーはあんまり使いたがらないし(一部、例外はあるが)、縦割り打破ができるツールなのに(税と社会保障を一体的に捉える等)、あまり誰もやろうとしていない。結局、マイナンバー所管の、旧内閣官房としては、マイナンバーの導入が目的で、マイナンバーの使われ方という意味で言うと、個人情報保護・マイナンバーの悪用防止がテーゼであった。マイナンバーの活用というのは、どこがどう責任をもってやっていくのか。今はデジタル庁ということか。ただ、各事務があって、っていうことは変わらないので、やっぱり各府省庁に物を言える立場のところが、各省庁と横断的にやっていくしかないのでは。

 

4.法律面

 

別表第一・第二がガチガチすぎる。行政官が見てもわからないので、法律による理想・趣旨・限定の意味がなくなってしまっている。それなのに国民には怖いと言われる。

別表第一・第二を改善して、それよりも、マイナンバーで何がわかるのかを具体的に説明する、マイナンバーカードをかざすたびに、これを参照しますみたいに、画面表示したほうが、効果的なのでは。

 

あと本人確認と、マイナンバー送付のやり方が悪い。これは、施行規則とか運用の問題か。

 

あと悪かったのは、マイナンバーを他人に教える方法を民間任せにしたところ。各社がさまざまな方法で取得していて、提供行為が面倒くさいし、マイナンバーを書かせたうえでカードのコピーを貼りつけさせる書式、あれ誰考えたの?意味不明だし無駄だし、やめてほしい。記載したマイナンバーとマイナンバーカードのマイナンバー間違ってたらどうするの?なんで糊で貼るの?マイナンバーを教える方法をマイナポでやればよかったんだよ。みんなが使うサービスはある意味公共的部分ともいえるから、官で用意すればよかったのに。

*1:電気・ガスは民営ではありますが…

*2:もっとも、住基カードは既に廃止されているので、今更住基カードというわけにはいかないので、マイナンバーカードとなるか。

*3:ちなみに私は市区町村窓口で、ある手続について聞いたら、「家帰って、Webサイトを見てください」と言われたことがあった。窓口職員の勉強が足りなくて住民に説明ができないのだろうか。そうすると窓口職員のスキルに寄ることなく、窓口職員を手助けするツールが必要なのではないか。そうするとオンラインでも対面でも使えるようなシステムがあると、窓口職員の補助というか、窓口職員の教育にも使える。本当にどうでもいい話だが、公務員だと確かにこういう人いるが、民間でもいないわけじゃなくて、保険の営業の人が私の家にやってきたが、営業の人は保険の説明がなぜかあまりできず、結局パンフレット見た方が早いことがあった。この場合、パンフレットが有効なツールとなっている。そういうパンフレットとかシステムとか、職員を補佐というか指導するというかそういうツールが必要なのではないか