ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

霞が関の働き方改革

news.yahoo.co.jp

 

「労働時間のばらつきが大きく、一部の人材に頼る働き方になっている。業務が属人化し、緊急時の対応力が弱くなっている」

 

 霞が関で働いていた時に、まさにこれをすごく感じました。

 

民間だと、従業者の平均的レベルを上げようとする努力を基本的にはしているように思いますが、霞が関だと、優秀層・真面目な層にだけ仕事をさせて、仕事を全くしない人や人の邪魔をする人がいても、特に気にしないというか、当たり前の光景になっていて、

要は、誰がどの仕事をいつまでにするという仕事のアサインやスケジュール感が極めて曖昧だったりするように感じました。あくまで私は霞が関全てを見たわけではないし、私個人の感じ方の問題かもしれません。

誰が何をいつまでにやって、その進捗状況がどうかというのを、把握している人が極めて少ないように感じました。なので、優秀層・真面目な層がすべての仕事を巻き取ってやるしかない的な。

 

あとは、夜遅くや土日も出勤して椅子には座っているものの、特にやっている仕事はないという「つきあい残業」もあるように感じました。「待機残業」なら、今やる仕事はないものの、仕事が発生するかもしれないので待機するという意味でわからなくはありませんが、そうではなくて、周りが遅くまで働いているから、自分は特にやる仕事はないものの遅くまで残る的な習慣が、まあこれは民間でももちろんある話ですが、霞が関の方が強いように感じました。

 

あとは研修とかも私がいたところではなかったし、キャリアプラン的な話も、各省なら考えてくれるのかもしれませんが、なく、今の時代は、専門性なくして仕事をするのが難しいことも多いのですが、とくに専門性を育成することはないので、新しい移動先に行っても、何をすればいいかわからないが、そのままそこで1年2年過ごして、次の移動先に行っても、何をすればいいかがよくわからないというのを繰り返してしまって、結局10年20年経っても、特にスキルが獲得できていないというようなことも、あり得るように感じました。

個人の興味・志向・適正などからキャリアプランを考えて、核となる業務領域を形成できるような異動プランをやっていかないと、組織としての人材育成としては、あまり望ましくはないのかなとも感じました。各省のことはわからないので、ちゃんとキャリアプランを検討して、で、研修とかも充実しているのかもしれないので、なんともいえない、ただの自分の思っただけの話ですが。

 

ただ、霞が関で、なんで、個人の育成とか、あとはだれがどの仕事をいつまでにやるというタスク管理をあまりやらずにいてもなんとかなっているかというと、優秀層・まじめな層というのが、結構分厚いのです。これは、私の感覚的には、たぶん、人材の2割ぐらいは優秀層・まじめ層なのではないかと思いました。これってすごいことで、2-6-2の法則だったら確かに2割優秀でも当然かもしれませんが、そういう意味の優秀というよりも、さらに秀でていて、本当にものすごく優秀な人というのが、一定の割合で必ずいるわけです。で、その人たちは、タスク管理やスケジュール管理しなくても、自律的に勝手に、あるべき姿の仕事のために、一生懸命働いてくれるし、教育しなくても、キャリアプランを考えなくても、あまりに真面目に勉強して仕事するあまり、配置されて2か月ぐらい経てば、かなりの知識を持っていて、専門性まで持ってしまうので、そういう人を、1・2年スパンで異動させていくと、異動先の各所で、ジャンルの異なる仕事であっても、知識をすぐに獲得して、優秀な仕事をしてくれて、様々な部署で様々な仕事をしていく過程で、さらに知識も複合化し、広がりを持ち、ますます優秀になっていくという、好スパイラルになっていくわけです。そしてこういう層がそれなりに厚いので、これらの人たちだけで仕事が回ってしまうということも、理由としてあるのではないかと思うのです。しつこいようですが、これはあくまで私個人が感じたことだけなので、各省を見たわけではないので、わからないのですが。

 

ただ、こういう層も、昔より疲弊しているようです。昔のこういう優秀層はそれなりに生活に余裕をもって仕事ができたようなのですが、今は、時代のスピードが速くて、政策のスピードが速くて、みたいな話を、OBの方から聞いたことがあります。優秀層もアップアップで必死で仕事をするしかなくて、で、霞が関全体が疲弊しているのではないか、とも思います。

 

なので、以下が良いのではないかと個人的には思います。

・誰がどの仕事をいつまでにやるのかというタスク管理を行う。

・優秀層にだけ任せきりにするのではなく、人材の平均的レベルの向上を目指して、教育・キャリアプラン形成等を行っていき、仕事がないか急がないときは早帰りを促す(ただ基本給が安い人については残業代がないと困るという人もいるかもしれないので、その検討も同時に行う)。

・他人の仕事を邪魔したり、ハラスメントがひどかったり、言葉遣いや身なりが社会人としての基礎レベルに達していない人材については、きちんと教育をして、改善を促していく(こういう方たちによるハラスメントが、他の人にとって心を病む原因にもなるので)

・仕事を見直して、総花的網羅的政策は、組織疲弊にもつながり得るので、政策を絞るなどの検討をする

・優秀層に、組織として、どういうあり方が望ましいか、ヒアリングする

・OB層に、今の時代に即した組織の在り方はどういう姿が望ましいか、ヒアリングする

・議員との付き合い方を見直す。記事にあるようなレク・議員対応・国会対応については、前々日17時に締め切ったり、質問時間に見合う質問数にとどめるなどのルール制定が必要ではないか。そのためには政治主導が必須。