ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

特定給付金等の迅速かつ確実な給付のための給付名簿等の作成等に関する法律案

 

1.特定給付金等の迅速かつ確実な給付のための給付名簿等の作成等に関する法律案

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g20105019.htm

  • 2020年6月8日自民・公明・維新の共同提案
  • 議員立法

 

マイナンバー法別表第一に名簿関連を追加(行政機関等の長*1内閣総理大臣

マイナンバー法別表第二改正

  • 別表第二の30 社会福祉協議会による貸し付けに伴う情報照会について、情報提供者に社共と口座情報を管理する内閣総理大臣を追加(市町村長分はもともと入っていないか?わかりづらい改正方法。)
  • 別表第二の79 厚生労働大臣による雇用保険法関連情報照会について、情報提供者に市町村長の住民税情報と、口座情報を管理する内閣総理大臣を追加
  • 別表第二の96 都道府県知事による被災者生活再建支援法による被災者生活再建支援金の支給に関する事務に伴う情報照会について、口座情報を管理する内閣総理大臣を追加
  • 別表第二の121として新設 名簿を作成する行政機関等の長による情報照会について、情報提供者として市町村長の住民税情報と、口座情報を管理する内閣総理大臣を追加

 

2.今後 閣法提出予定

  • 議員立法では、振込口座情報の登録は「個人の申出」に基づくが、振込口座登録が一部の方にとどまるのであれば、登録してくださらない方には、別途、口座情報を申告していただかなければならなくなり、結局、緊急時の給付金事務の簡素化が限定的。
  •   また、振込口座情報を提供する給付金は、「緊急時又はそれに類する給付金」に限定。
  • 世帯単位ではなく、個人単位でも、景気対策や福祉目的など多様な給付を行うため、全ての国民に、「行政からの様々な給付を受けるために利用する一生ものの口座情報」を、1口座のみ、マイナンバーを付番して登録する制度に発展させ、「プッシュ型の迅速な給付」や「行政コストの削減」に資する目的。
  • 更に、希望する方に限定する形だが、相続時における被相続人の口座の所在の確認や、災害時に自らの口座の所在を確認できるようにするため、口座が所在する金融機関名の確認のためにマイナンバーを活用できるようにする。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02000921.html

 

 3.法案の課題

マイナンバーは使えるように法定 ←これは評価できる


しかし、今回の特別定額給付金口座情報は引き継がれない?

  • 基本、本人が別途申請する方式だが、平時に口座情報を申請する人がどれ位いるのか?
  • 但し、税務署、年金、児童手当・児童扶養手当の口座情報については、「本人同意」の上、内閣府が収集可能。
  • 本人同意を取得する方法をどう現実的に実装するか。申請書に規約的に記載しておくだけか?
  • 法律に基づき、かつ給付目的なのに、本人同意を取るのは、実効的なのか?
  • 各団体からの収集を情報提供ネットワークシステムでやる想定? 今の同システムの状況を踏まえて、それが現実的なのか? 
  • 内閣府令に規定すれば引き継げなくはないが、どうやって同意を取るか?

口座の鮮度維持ができるスキームか疑問

  • 10年20年経つと休眠口座になる可能性も。新しい情報をアップデートできる仕掛けづくりが必要。更新する人は少ないのでは? 
  • Yahoo!ウォレットとかは支払・受取の都度、登録できる。
  • 銀行の合併、支店統廃合時は、一律変換処理する?

世帯問題

  • 個人単位っぽく見えるが、世帯単位?個人単位?内閣府令で決められる?
  • 世帯構成が変わる可能性。例えば、今、親と一緒の世帯に入っている子が結婚して世帯主になったり、別の世帯の世帯員になったりすると、今の親という世帯主の口座には振り込めない。今夫婦の家庭が離婚しても世帯主が変わる。