ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

デジタルガバメントについてのコメント(東京都の動きを踏まえて)

デジタル手続法(旧、デジタルファースト法)は、結局、骨抜き感があるので、今後どのようにデジタルガバメントが進展していくかは、かなり不明ですが、自治体の方では、もしかすると結構進展するかもしれないなと思っているところです。

東京都の資料を見ていると、デジタルガバメントに力を入れる感が出ていて、結構びっくりというか、都で、力強く推進して一定の成果が出れば、他の自治体さんはそれに続くでしょうし、自治体側のデジタルガバメントが進めば、国民にとっては本当にメリットが大きいので、良いことだな、と。

この都政改革本部の資料が出る前に開催された、都政改革アドバイザリー会議で私が発言した内容もせっかくなので、ブログに貼り付けておきたいと思います。

 

○水町委員 デジタルしごと改革「ワンスオンリー」については、私も精力的に取り組んでいる分野ですので、都として取り組んでくださるとのこと、非常に嬉しく、素晴らしいことだと思っています。
 その点なんですけれども、3点お話ししたいことがあって、まず一点目なんですけれども、このデジタル改革というのは、東京都こそが非常に重要な役割を担えるというふうに思っています。
 というのも、霞が関、国の方でもデジタルファースト、デジタル手続、デジタルガバメントというのはやっているんですけれども、霞が関ですと、個人の方と直接触れ合うような手続が余りなくて、国税ハローワーク、年金、特許等、それぐらいで、企業とのやりとりは許認可も少ないということで、余り、実際個人にメリットが出るような行政手続が少ない。結局デジタルガバメント実現のためには自治体がデジタル化してくれないと、住民にとってメリットは出てこないのですけれども、基礎自治体さんもやる気があるところはデジタルガバメントをやっていらっしゃいますけれども、全国2,000ある地方公共団体が東京都の動きというのは必ず見ています。だから、これは都こそがほかの地方公共団体を牽引していく重要な役割を担っているというふうに思います。
 2点目なんですけれども、デジタルガバメントの場合は、対象手続をどうやって、対象の何をデジタル化するかという対象を選んでいくということが非常に重要だと感じています。
 この資料にも、都の行政手続は2,800存在していると書いてありますけれども、国でもこういうのを検討しているんですけれども、役所がやりがちなのは、この手続を全部洗い出すと。それぞれ目標値を設定して、進捗確認していくというのをやっていたんですけれども、そうするとまず洗い出す作業が膨大。その割には余り、生涯で一度しか使わない、下手したら一度も使わない手続をデジタル化しても、コスト倒れになってしまうのですね。それよりも、やっぱりインパクトのある分野を優先して選ぶということが重要で、役所は結構複雑な行政フローを検討しましょうとか、全部、今、例えば国だと相続ワンストップとかやっているんですけども、関係者が多過ぎて、全てを一から最後までデジタル化というのはなかなか難しい。そういう難しいことよりも、多分国民側にメリットがあるというのは、混んでいるところから解放してもらう。
例えば都庁に来る国民としてはパスポートの更新、免許証の更新。並んでいて、30分、1時間待つのが嫌だから、予約で早くできるようにしたいとか、家で簡単な処理はやって、都庁では短い時間でいいとか。そういうのとか、あとはシャンシャンを早く見たいとか、そういう、あとは博物館とか美術館とか、人気のイベントに並ばないとか、そういう何か余り難しいということよりは生活に密着したような、そういうのから取り組んだ方がいいかなというふうに思いました。
 あと、最後3点目ですけれども、岩本委員のプレゼンテーションにもございましたとおり、やはりこのSociety5.0との関わり合いというのも非常に重要だと思うんですね。
 情報政策はもう今、多数展開されていて、Society5.0という、もう都の方で検討されていると思いますけれども、それ以外にも例えばオープンデータであるとか、情報公開制度であるとか、都の方でかなり積極的に推進していらっしゃる。あと、AI、RPAもやっていらっしゃるということで、そういう情報政策全体の中でデジタル改革を進めていくという、別々にやっていくとなかなか効果が発揮できないところもありますので、局をまたいでいるのかもしれませんけれども、横断的にやっていくということが重要だと思います。
 以上です。

 

あと、アドバイザリー会議の前に、ブログで自分の意見をばーっと書いたものにもリンク貼っておきます。

cyberlawissues.hatenablog.com

 

今の時代、行政も医療も、これまでIT化があまり進んでこなかった分野のIT化がかなり注目されていて、こういうところがIT化して、国民にとって便利に使いやすくなっていくといいなと思っています。でも、国の政策だとやっぱり、国だとなかなか調整が難航して進みづらいというところがあります。で、今回のデジタル手続法、自治体は努力義務しかかかってないし、自治体のデジガバもあまり進まないんじゃないかとも心の奥底では思っていたところで、都も組織が大きいので、改革とか調整というのは本当はとても大変なはずですが、こんなデジタル改革がばーんと出てきていて、私としては本当にうれしいな、と。

やっぱり今の時代、みんな電車の中ではスマホを見ているし、小売りだって、スマホ以前とはずいぶんと違うようで、ネットで買い物が多数なされて、運送業者が悲鳴を上げているような時代に、役所だけ、役所に来て、待ってもらって、行政手続をやりましょうね、紙に書いてもらって、役所側で電子データ化しましょうね、なんて、本当に国民側も行政側もコストがかかりすぎていて、やっぱり改革すべきなのはそうなんですけど、これまで国の取組みとか見ていると、やっぱり調整が大変で、あと今日別記事をブログで書きましたけど、そういうこと踏まえると、なかなか昭和感を抜け出すのって大変なのかなって思っていたところ、都がこんなにどーんと行政デジタル化を打ち出してくださると、いやあ、すごいなと、期待したいなと、思うところです。

 

最後、本当にどうでもいい蛇足になりますが、去年ぐらいから都のお仕事させていただいていて、私、前にもブログで書いた気がしますが、アドバイザリー会議って、経営者の方多いし、私、あんまり立派なお部屋とか緊張しちゃって、なんかキツイなと思ったこともありましたが、こうやって、良い改革とか、良い取組とか、良い資料とか見させていただけると本当によかったなと思いました。緊張しているし場違いかもしれないけど、私は自分ができる範囲で意見を言いたいなと思って、でも私が意見言っても誰も聞いてないだろうなとか思っていたのですが、こんな風に、良い取組、良い資料を見せていただけると、良かったなと思う次第です。