https://www.ppc.go.jp/files/pdf/190826_houdou.pdf
個人情報保護委員会から、指導だけじゃなくて勧告が8月26日付けで出ていますね。
20条と23条違反ですね。まあ、実際、行政庁が勧告出すとしたら、20条と23条違反が穏当かなと思いますね。
行政側がこれらの条項を選んだ理由はわかりますし、穏当だとは思いますが、問題の本質的には、以下かなという印象です(まだ深く検討していないので、印象的な感想にとどまります)。AI云々、プロファイリング云々というよりも、そんな難しい話ではないように思うので、今後の個人情報保護の講演とかの際の、わかりやすい具体例・参考例になりそうな感じですね。
- 「内定を辞退するかもしれない学生 対 確実に採用したい企業」という利害が対立する関係性を媒介するエージェントであるにもかかわらず、企業側に一方的に有利で、学生側に一方的に不利な行為をしているという、利益相反的な観点
(しかし、広告モデルのようなもの、BtoBtoCモデルのようなものの場合、消費者と企業側の間に入るエージェントは、結局消費者側からはお金を取らないため、お金を取る先である企業側に有利な行為をしがちという、ビジネスモデルに内在する倫理違反行為のような気もする。
また、そもそも、めったにその行為をしない消費者と、その行為をビジネスにしている企業を媒介する時点で、情報格差がひどくて、例えば葬式ビジネス、結婚式ビジネスだと、相場観がわからない、こんなところでケチっていると思われたくない等の消費者側の気持ちから、ぼったくりが横行する可能性もある。その点、学生の就活というのは、基本的には初めての行為であって、学生側と採用側では情報格差がありうる話。今は市況がいいのでよいが、これで市況が悪いと、採用側のひとり勝ちっぽくもなる。この点、中途採用の場合は、何回か転職活動をする人もいるし、ビジネスマン同士なので、そこまでの情報格差はないというか、消費者側(採用される側=労働者側)が逆に情報格差を理解して転職活動に臨んでいるとも考えられる。ただし、中途採用でも、今回のリクナビみたいな話はありうるので、やはり、BtoBtoCモデルが潜在的に有する反倫理的リスクともいえるのではないか) - AIのインプットデータについて、氏名や生年月日を削除すれば良いのかといった、細かい論点よりも、プロセス全体を見たときに、「これはまずい」という法感覚を醸成することが大事
(個々の細かいプロセスを切り出して法適用を考えだすと、全体が見えなくなる可能性があるし、逆に全体的に違法であれば、細かいプロセスの適法性を考えなくてもいいのではないかとすら思う)
企業側の法律相談を受ける弁護士の立場から言うと、企業側は、弁護士に相談する内容を選んでいるのが実態である。今回のケースがどうだったかはわからないが、AIのインプットデータに対する個人情報保護法の問題だけを、例えば弁護士に聞いたとしたら、それは個人情報保護法上適法に処理できる可能性はある。しかし今回で聞くべきは、まず全体像の説明をしたうえで、個々のプロセスの法解釈・判断(特に同意取得や説明文等)を聞くべきである。
ある意味、全部を説明して、全体的に相談する企業であれば良いが、そうではなく、場面を切り出して相談内容を切り出す会社さんの場合、せっかく弁護士に相談していたとしても、相談すべきところを相談せずにいる可能性もある。確信犯的に、「ここは弁護士に相談してもOKが出なそうだから、相談するのをやめよう」と考える企業はそんなに多くは無くて、それよりも、相談対象の切り分けがただ単に不適切な企業さんもそこそこいる。であれば、全体的に相談した方が良いが、弁護士へ支払う相談料を抑える等の目的や、あとはどこが問題なのかの把握がずれている等の理由から、相談対象が適切に切り出せない場合もあるので、この辺は十分注意が必要であろう、弁護士そして企業さん側ともに。弁護士としても、相談対象のみではなく、全体像をきちんとヒアリングするように努めるべきであろう。ただ悩ましいのは、「この相談の場合、AだけじゃなくてBも検討すべき」とこちらが思って言ったとしても、「いえ今回はAの部分の解釈だけで結構です」と言われてしまうと、Bに触れることは、その会社から相談を受けた立場としては越権的ではないかとも思われ、微妙である。Bが明らかな違法行為であれば触れるが、詳しい話を聞かないとわからない場合は、こういう場合どうすべきかが難しい。