ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

デジタルファースト/デジタルガバメント実現のために重要な観点についての意見

デジタルファースト/デジタルガバメントを実現するために、何が重要になってくるかについて意見を述べたいと思います。

デジタル手続法や政府資料を見ていたり、自治体の方とお話ししていると、結構「総花」的な印象を受けるのですが、私としては「総花」的な政策よりも、「集中」的な政策の方が、この分野は向いていると思うのです。

近々、会議等で発言するかと思いますが、その整理も込めて、ブログに書いておきたいと思います。

 

1.インパクトのある分野/手続を狙う!

  • デジタル化に向けた取り組み分野を、まずは選ぶことが重要だと思います。
  • 「うわ、これは便利!」と国民・市民・企業に感じてもらう取組から進めるべきだと思います。
  • そういう観点からは、以下のようなから取り組むと良いかなと思うのです。
  • 待たされてうんざりするもの(待ち時間が長い:パスポート更新、免許更新、マイナンバーカードの受け取り、美術館・博物館・動物園などの人気イベント、確定申告等)
    ←待たされるイライラ・無駄感からの解放、国民・市民と役人の窓口トラブル減少にもつながる?
  • 手続の回数が多いもの(毎年やらなければならない手続等:例えば現況届等、よくやるもの:健康保険・年金の手続、住民票、税関連、保育・子ども関連、健診等)←便利だと感じる回数が多くなる
  • 面倒くさいもの(書く書類が多い、用意する添付書類が多い、毎年似たようなことを繰り返し書かされるもの等、例えば役所の入館申請とか、業関係のものとか)←紙よりデジタルの方が圧倒的に便利なもの
  • 興味のあるもの・意識の高いもの(東京オリンピックの状況、特殊詐欺の件数、混雑状況、治安上危ない場所、交通上危ない場所、トイレの場所、喫煙所の場所、かわいい動物、かわいいゆるキャラ、一日署長系等)
    ←情報が簡単に入手できるとみんなうれしいし、SNSでシェアされて普及啓発にもなり得る
  • 業務効率化(デジタル化によって、大幅に業務効率化・省力化・迅速化するもの)
    ←公務員側のやる気につながる。公務員側の業務効率化のために国民・市民に負担をかけるのはよくないものの、国税庁e-Taxのためのカードリーダーの購入代金を税額補助したことがあったような気がしますが、そういう措置も考えられるし、公務員側の業務効率化はひいては、国民の税金の効率的な使い方にもなるわけで、良いと思う。

 

  • 処理時間を推計したり、手続の手間・負荷を想定したり、興味分野をWebへのアクセス数・Twitterつぶやき数・検索キーワードトレンド等から調査したりして、取り組む分野を検討していくと良いかなと思います。
  • それが、霞が関の考え方だと、各省で持っている行政手続を洗い出して、毎年目標値を決めて、のぺーっとデジタル化を推し進めましょう、みたいになってしまって、それだと、デジタル化にかかるコストに見合う効果が出ないように思うのですよね。
  • あとあれですね、実現が難しそうな分野を横断的に取り組もうとするのは、辞めた方がいいですね。ワンストップ相続とかって、全部をデジタル化するのは困難を極めるから、そんなことより、できる範囲で、効果のある範囲から進めていく(死亡証明を電子的にも行えるようにするとかですかね?あとは法律の根拠が必要ですが、死亡時に保険金の受取人に連絡が行くとか、死亡時に相続財産を隠しているという疑惑・紛争を解決できるよう、被相続人の財産を全照会できるようにするとか。まあこの辺りも実現は困難かもしれませんが。)と良いと思います。

 

  • なんか、小難しい行政手続を洗い出したり、行政手続の詳細フローを検討するのに、すごい時間を使って、体力を消耗しがちなのが役所文化ですが、それよりも、もっとインパクトのある、例えばシャンシャンのかわいい写真・動画をいっぱい見せてくれるとか、ゆるキャラがお誕生日を祝ってくれる動画を作ってくれるとか、並ばないでネット予約で入れるようにするとか、普通に個人の生活に密着するようなデジタル化がいいなと思います。
  • 特に、国は、国民と直接触れ合う行政手続が、税・社会保障ぐらい、あとは業関係の特許とか、あとは許認可かなとも思いますが、国立研究所・国立博物館とかも、結構今攻めてますよね。面白い画像・動画とかありそうだし、国立の人気施設とかもあるんじゃないですかね。そういう文化面からのアプローチも良いかなと思いました。

2.BPR

  • だいぶ1を長く書いて燃え尽きましたので、2は軽く。
  • 今ある複雑な業務フローを、そのままデジタル化しようとするのが、ありがちです。これは民間のシステム化でもありがちですが、それだと大して業務効率化はしません。無駄なフローは大幅にカットする、業務フローを変えるっていうことをしないと、ただデジタル化しただけで、業務改善になるわけではない、これは本当に大事だと思います。
  • 国とか自治体のコンサル業者とか、ベンダーさんって、あんま、この辺をやらないというか、顧客である国や自治体がBPR嫌がるからってところがあるのかなとも思います。
  • ただ、BPRという名のもとに、すべてをシステムに合わせて、業務をITに合わせていくっていう、そういうのだとだめだと思います。省庁の資料でそういう記述をこの前みましたが、それって、民間で良く失敗するパターンです。IT業界もちゃんとアドバイスすべきだと思いました。やっぱりあくまでメインは業務で、でも本来の業務の中で、不要な処理があったり、省ける処理があったり、本来の目標と離れた慣行があったりします。それをBPRするっていうのが重要であって、まあ確かに、カスタマイズしないでパッケージそのまま導入して業務すれば、そりゃ一番安上がりですけど、それだと結局シャドーIT化しちゃったりして、要はITじゃまかないきれない業務処理が残っちゃって、その部分を紙でやったり、ユーザが自分でプログラム書いたり、外部の無料クラウド使ったりして、セキュリティ上問題になったり、職員異動・退職時に引き継げなかったりして業務継続性がなかったりとか、問題が出てきますんで、人間や業務がすべてITに合わせればいいっていうわけでもなくて、BPRとか業務の要件定義のところは、本当はすごく難しいと思います。

 

3.類似政策の統合・整理

  • あと、デジタルファーストだけで進めていくのもナンセンスです。デジタルファーストというかデジタル手続というかデジタルガバメントだけじゃなくて、オープンデータとか非識別加工情報とかSociety5.0とか情報公開請求とか、あと何でしたっけ、公的データ提供要請制度とか?、そういったことも含めて、統合的にやっていくべきで、変に似たような政策がいっぱい乱立していても意味ない(=作業の重複、方針の乖離・矛盾等)ので、デジタル時代の行政という大きなくくりでくくって、目指すべきゴールのためにどういう政策を打っていくのかっていう、政策マッピングみたいなのをやっていくといいなと思います。
  • 今、私の方で、情報関連の政策マッピングパワポを作成途上ですが、頭の中では良い資料のイメージができていたのに、いざ書いてみると、意外とパッとしないという残念な状況ですが、機会を見て、私の方でも引き続き取り組んでいきたいと思ってます。

 

まだ書きたいことがある気もしますが、長くなったので、今日はいったんこれで終わります。