ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

医学系研究での個人情報の授受

医学系研究で個人情報を授受する際は、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針第12の手続が必要となります。原則インフォームド・コンセントですが、オプトアウト(拒否)やその他の方法も認められています。

 

この倫理指針、かなり構成も複雑だし、記載ぶりに問題が見られます。

定義にきちんと書いてないことが、ちょろっとガイダンスに書いてあったりして、これ、本当に現場できちんと運用できるとはとても思えないような気が・・・

もうほんと、私、印刷した紙がボロボロになるまで倫理指針読み込みましたが、今日さらに新たな検討ポイントが見つかりました。

備忘として、ブログに書いておきます。

 

倫理指針では、医学系研究のためにカルテや検査結果などの情報や試料等を使う際に、原則としてインフォームド・コンセントを求めています。

で、以下の4つの場合ごとに、インフォームド・コンセント以外何が認められるか等が、複雑に書いてあります。

 

で、この「既存試料・情報」っていうのが何かというと、ものすごく簡単に言うと、

①研究前にあったもの+②研究実施後であっても別目的で持っているもの

がこれに当たります。

倫理指針第2(7)に定義があります。

(5) 研究に用いられる情報 研究対象者の診断及び治療を通じて得られた傷病名、投薬内容、検査又は測定の結果等、人の健康に関する情報その他の情報であって研究に用いられるもの(死者に係るものを含む。)をいう。

(6) 試料・情報 人体から取得された試料及び研究に用いられる情報をいう。

(7) 既存試料・情報 試料・情報のうち、次に掲げるいずれかに該当するものをいう。

① 研究計画書が作成されるまでに既に存在する試料・情報

② 研究計画書の作成以降に取得された試料・情報であって、取得の時点においては当該研究計画書の研究に用いられることを目的としていなかったもの

 

倫理指針本文にはこれしか書いてありません。

が、ガイダンス11ページを見てみると、

(5) 研究に用いられる情報も(6) 試料・情報も、対象者から直接取得されたかどうかを問わないのに、(7) 既存試料・情報だけ直接取得されたものをいう、とちょろっと書いてあるのです。

(5)の「研究対象者の診断及び治療を通じて得られた傷病名、投薬内容、検査又は測定の結果」には、診療録上に記録されるもの以外に、看護記録等に記載されるものも含まれる。また、研究対象者から取得された情報のほか、例えば、人口動態調査、国民健康・栄養調査、感染症発生動向調査等で公表されている人の健康に関連する事象に関する情報も含まれる

(7)の「既存試料・情報」について、「① 研究計画書が作成されるまでに既に存在する試料・情報」とは、当該研究の研究計画書が作成されるまでに既に研究対象者から直接取得された試料・情報が該当する。当該試料・情報を研究対象者から直接取得した経緯(どの機関で取得されたか、どのような目的で取得されたか等)は問わない。

また、「② 研究計画書の作成以降に取得された試料・情報であって、取得の時点においては当該研究計画書の研究に用いられることを目的としていなかったもの」とは、当該研究の研究計画書の作成以降に研究対象者から直接取得される試料・情報のうち、当該研究に用いることを目的として新たに研究対象者から直接取得する試料・情報を除いたものが該当する。

 「既存試料・情報」の対の概念(反対語)として、「新たに試料・情報を取得」という概念がありますが、それも取得が「直接」であることが必要と、ガイダンス88頁に書いてあります。

(1)の「新たに試料・情報を取得して研究を実施しようとする場合」とは、当該研究の実施の中で当該研究に用いるために試料・情報を研究対象者から直接取得する場合をいう。

インフォームド・コンセントとかは、直接取得したものじゃないと相手と対峙できないというか、同意もとれないよねっていう判断でこうなっているのかなとも思います。個人情報保護法の利用目的の明示みたいなイメージですかね。

しかし、「直接」取得かどうか、重要な要件なので、これガイダンスに書くんじゃなくて、倫理指針本文の定義のところに書いておくべきではないでしょうか。

「直接」取得でなければ、第12の1の手続は原則不要ということになるわけです。もっとも、研究計画書の作成とか倫理審査委員会付議とかは必要だから、まあそんなに手続が大幅に変わるものではないのかもしれませんが、少なくとも個人情報の授受・利用については、手続が結構違ってくると思うのです。

それ以外も、倫理指針、読んでいるとかなり気になるところがあります…。