ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

GDPR日本語仮訳の要修正点

個人情報保護委員会が公表しているGDPR日本語仮訳の要修正点のまとめです。

 

私の意図としては、特に「ここが間違っているぞ」とか言いたいとかそういうつもりではなくて、あの大量のGDPRドキュメントを個人情報保護委員会が仮訳を公表していることについて、大変感謝しています。個人情報保護委員会の注記にもある通り、あくまで仮訳ですので、読みながら気づいた点を備忘として書き留めるという趣旨です。

訳に気づき次第、適宜更新していく予定です。

 

GDPR28条2項(d) 処理者Processorに関する規定

(d) respects the conditions referred to in paragraphs 2 and 4 for engaging another processor;

(d) 別の処理者を業務に従事させるために、第2項及び第4項に規定する要件を尊重すること。

28条2・4項は義務なので、「要件を尊重すること」だとおかしいかと思います。respect the conditionsになってますけど、これは「 別の処理者を業務に従事させる場合は、第2項及び第4項に規定する要件を遵守すること」が正しい訳かと思います。

 

GDPR28条3項 処理者Processorに関する規定

With regard to point (h) of the first subparagraph, the processor shall immediately inform the controller if, in its opinion, an instruction infringes this Regulation or other Union or Member State data protection provisions.

第1副項(h)に関し、処理者は、その見解において、指示が本規則又はその他のEU又は加盟国のデータ保護の条項に違反する場合、直ちに、そのことを管理者に通知するものとする。

 確かに「point (h) of the first subparagraph」とは書いてあるものの、これは第3項(この項)の柱書とHの双方を指していると思うので、「第1副項(h)に関し」は、「本項(h)に関し」とかにした方がよいのかなと思います。

 

 プロファイリングガイドライン33ページ

Nevertheless, the data subject has the right, taking into account the purpose of the processing, to provide a supplementary statement. In the above scenario, this could be based, for example, on a more advanced medical computer system (and statistical model) factoring in additional data and carrying out more detailed examinations than the one at the local surgery with more limited capabilities.
しかし、データ主体は、取扱いの目的を考慮して、補完的なステートメントを提供する権利を持つ。上記のシナリオでは、これは、例えば、追加データを考慮しより詳細な検査を実施する、限定的な設備しかもたない地方の医院より高度な、医療コンピュータ・システム(及び統計モデル)を根拠とすることができる。

 this could be basedを「根拠とすることができる」と訳すのは、この文脈では不自然な気がします。そんなに英語に詳しいわけではないので自信が全くありませんが、この場合、地方の限定的な設備しか持たない医院よりも、すごいシステムに基づくものである、とか、妥当するものであるとか、そういう意味なのではないかと感じました。