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弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

『「天下り」がダメなら国家公務員の「現役出向」増加中』というニュースを読んで

朝日新聞の『「天下り」がダメなら…国家公務員の「現役出向」増加中』というニュースを読みました。

キャリア国家公務員(いわゆる官僚)は、同期で事務次官が出ると、一斉に退職するという話を聞きます。
キャリアの目標は事務次官になることであり、事務次官レースがここで完全に終了するので、同期で事務次官が出ると一斉に退職するのだ、的に言う人もいますが、そんなことはないそうです。「官僚たちの夏」でも、最近の財務省でも、同期で複数人事務次官も出ているので、やはりここはたとえ同期に事務次官が出ても、首を長くして待っているべきでは?なんて思ったりもしますが、そもそも人事は大体、同期に事務次官が出る年次になる前から、わかっているとかそういう感じですかね。民間企業でいえば、同期で社長になる人が出るころまで、自分が将来社長になるかどうかわからないということも、ないですかね。

結局は、公務員は年功序列が非常に強く残存していて、キャリア公務員だと、年次によって、どの程度の役職になれるかが決まっています。有能かどうかは、役職の高さではなく、ポスト(局、課など?さらにはそこにおけるポジション?)に影響するだけで、はっきりいえば、どんなに有能な人でもどんなに無能な人でも、入省何年で係長、何年で課長補佐、何年で企画官/室長というのが決まっていると。要は、何局何課のどのポジションの係長なのか、補佐なのか、企画官なのかが、人事上の関心マターであり、「自分がいつ補佐になれるかな?企画官になれるかな?」というのは、もう入省から何年というので決まっているので、関心マターでは全くないということだと思います。

この点、民間企業だと、誰もが係長にはなれたとしても、誰でも課長、部長、役員になれるわけではないので、人事上の関心マターとしては、「自分が次に課長になれるのか?部長になれるのか?」というところが強いようにも思います。これに対してキャリア公務員だと、誰でも課長+α級ぐらいになれるので、「自分が最終的に課長になれるのか?」と思う人は、あまりいないのではないかな、と。

で、話が長くなりましたが、そういう年功序列人事のために、課長級は入省何年から何年みたいなのが決まっていて、その上の審議官級もそういうのが決まっていて、さらにその上になれる人は一部でしょうから、入省から長年経つと、その人が行けるポストが少なくなって(もっと下の期の人にポストが割り当てられるので)、それでそのお尻が、同期が事務次官になった時だと。そうなるともう事務次官より下のポストは、すべてその下の期に割り当てられるので、自分が就くポストがないので、これまでは定年前だけれども、早期退職を慣行上していた、と。

それが、天下り禁止になってから、早期退職しても、次に行く先がないので、なかなか早期退職する人がいなくなって、定年まで省にいる人が増えた、と。で、省内にはポストがないので、出向が増えるというような話を聞きました。

民間の感覚からすると、年功序列をやめるか緩くして、入省何年でどうというのはやめればいいのではないかとも思いますが、官は官で、もう人事と評価制度が確立していて、特に不都合を感じていないので、民みたいな人事制度に変える必要性も特にないということなのかなと思います。

天下り規制については、でもそういっても、有能な方には、官を辞めた後もどんどん活躍してもらわないといけないだろうし、とはいえ、不正の温床になってはいけない、と。でも、民間も天下りというか、定年後に関連法人や取引先への移籍とかも多いと思うし、一方で最近は減ってきて、それ以外のセカンドキャリア支援みたいなのも増えてきていると思うので、もう少し民間のプラクティスを見たらどうなのかな、とは思います。あとは、キャリア公務員は、現役時代お給料が低くて、退職後に退職金や関連法人からのお給料をいっぱいもらって、生涯年収を一流企業の会社員並みにするということが多かったと思うので、キャリア公務員の現役時代のお給料を上げたらいいのではないかと。税金から給料が支払われるわけですが、裁判官だって検察官だって、キャリア公務員より給料は高いと思われるので、それを参考に引き上げる、と。ただ、特に年次が高くなればなるほど、給料が高くなるというのではおかしいので、やはり年功序列はもっと緩くして、ここに能力給をきちんと加えて評価する、と。優秀な人は現役時代も一流企業の優秀な人と同等かそれ以上の給料を保障して、優秀じゃない人も一流企業の優秀じゃない人と同等かそれ以上の給料は保障する。但し、不正防止のため、退官後の職業には規制をかける、と。その規制に対する対価として、一流企業より少し高いようなお給料体系にしてはどうかと思います。どんなに優秀な人でも、退官後に畑違いのジャンルに行って活躍しろというのは、結構大変なように思うので、その部分は、不正の温床にならないよう維持しつつ、そういうある意味、労働者にとっては公務員になることでペナルティがあるわけだから、その部分を現役時代の給料で保障すれば、いいのではと思うのですが、今の時代、公務員の給料引き上げって、世論が是としなそうではありますが、でも、本当は、優秀な人材に官僚になってもらわないと困るわけで、そこを「お金につられるような人はだめだ」なんて言ったところで、大学3年の就職活動の時に、一流企業にはいれば、官僚になるより生涯年収が倍違うとすれば、それは一流企業に入るという選択肢をする人も絶対にいるわけで、きれいごとですませるより、公務員の給料の見直しをした方が良いように思うのですが。でも、公務員給料って、すごく前時代的で、給料は低いけど、かなりの年次まで残業代が出るので、残業する必要がないのに残業して残業代を稼いでいることが疑われる人もいるように思うし、あとは官舎とか、あとは公務員共済の保険料が安いとか給付が厚いとか、なぜな手当があるとか、そういうのを全部全体的に見て、民間との待遇差っていうのを考えればいいと思うのですが、あまりこういう考え方は、民間人にも公務員にも受けない案かな、とは思います。