ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

埼玉県主催の会で講演しました(マイナンバー制度の主眼・基礎)

5月31日に、「なにがどうなる?マイナンバー!〜賢い消費者としてマイナンバー制度の基本を学ぼう〜」と題する講演を行いました。

埼玉県が主催されて、消費者月間記念講演会として開催されました。

会場の座席数を上回る参加希望をいただいたとのことで、ありがとうございました。
来場者の方としては、消費者の方が多いようにお見受けしました。

昨年は、「消費者向け講演」と依頼されて講演にいっても、会場の多くが、民間企業のご担当者であったり、自治体職員であったりということも多かったですが、今年からは消費者の方にも、講演に来ていただけるようで、ありがたく思います。

ご担当者が正しい番号法の理解をされることは大変重要ですが、一般消費者としても、正しいマイナンバー制度の理解を行うことは大変重要だと思います。マイナンバーに関しては、噂、都市伝説の類が非常におおく、正しい理解があまり得られていないように思いますが、制度の基本は、「不正の是正、IT化による行政サービスの進歩」を目指したものだといえます。

税務分野では、「副業がばれる」「水商売がばれる」「預金が丸裸に」などといった点が多く報道されていましたが、番号制度の主眼は、税務署の不正摘発能力の向上・省力化であると考えます。税務署に入ってくる情報(誰にいくら支払ったかという情報)が、これまでは、「氏名、住所」で対象者を特定していたため、最悪は架空名義、そこまでいかなくても、氏名・住所の変更(結婚、養子、引っ越し)、氏名のゆらぎ(戸籍名と屋号・旧姓・通称、斉藤と斎藤等)、住所のゆらぎ(住民票住所と事務所住所等)があり、なかなか効率的に、誰がいくら受領しているかをコンピュータ処理することは難しいと考えられていたところ、「氏名、住所」ではなく「マイナンバー」で管理することで、「1番さんに支払われた額」などと、コンピュータ処理で迅速に確認できるようにする、ということが主眼に思います。したがって、脱税をしていない人には、税務署に今以上の情報を掴まれるものではないと思います。

また、「マイナンバーで便利になる」とよく言われますが、実際はそんなには便利にならないと思います。ある意味、「マイナンバーで便利になる」は、洗剤のCMの「驚きの洗浄力!」みたいなものかと思い、そんなには日常生活を楽にしてくれる圧倒的な便利さにはならないのではないかと思うところです。例えば、「Suica」は便利ですが、マイナンバーはそういう手軽な便利さを実感させてくれるかというと、一気にそこまではなかなか難しく、将来的には「マイナンバーさえあれば市役所に行かないでなんでもできる」、「マイナンバーカードさえあれば、便利」というところまでを目指しているとは思いますが、そこまで急に、来年中に完了できるかというと、なかなか難しいところがあるかと思います。

便利になるというよりも、IT化によって、より良い行政サービスを図り、今、市役所や国が持っている情報で活用されていない情報があるので、それを活用すれば、今、本当は行政サービスを受けられた、給付を受けられたのに、受けていない方、こういう方に適切なサービスを届けられたり、または今は行政サービスの対象外の方に適切なサービスを新設したりっていう、そういうこともできるし、国民にしてみれば、市役所にいかなくてもWebで手続ができたり、カードでネットオークションの本人確認ができたりとか、そういう利便性があるということで、
何か実生活にものすごく画期的な便利さを与えるというよりは、社会的基盤というか、たとえるなら、ファミレスで注文を取るときに手書き伝票ではなく、ピッピやる手持ちの機械を導入したことで、客にとっては画期的な利便性が!ということはないけれども、注文ミスが減ったり、調理場との連携が早く正確になったり、お会計処理も早く正確になったりして、ファミレスも客もよかったね、みたいな感じというか、何とも説明が難しいですが、そういうものだと考えます。

長くなってきたので、制度についてはこのあたりにして、、、あと、今回の講演は本当に担当者の方がすばらしかったです。
熱心、丁寧で、仕事に対する熱意、誠意がすばらしいというか、とてもスムーズに講演準備ができ、少しの間ではありますが、お仕事をさせていただき、大変良かったです。どうもお世話になりました。