ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

雇用保険関係のマイナンバーの取扱変更

「雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A」が更新されました。

1.主な変更

  • 雇用保険関係で会社が従業員のマイナンバーを記載することが「努力義務」から「義務」へ変更
    • 努力義務というのはおかしいなと元々思っていて、日本法令さんのビジネスガイドに原稿を書く際に努力義務ではなく義務と解すべきと思い、厚生労働省に照会をかけたら、Q&Aを更新するといっていましたので、やはりそうかという印象です。
  • 雇用継続給付(高年齢雇用継続給付、育児休業給付及び介護休業給付)について、労使協定を締結して事業主が申請書を提出する場合は、個人番号関係事務実施者ではなく、本人の代理人
  • 在職者の個人番号の届出は、雇用継続給付の申請の際に限る
  • 本人確認方法は国税庁とパラレルに
  • 手続書面は普通郵便でも受理するが、郵送で届出を行う場合は、できるだけ、追跡可能な書留郵便等による方法での届出を行うようにとのこと


2.会社が代理人になる件

  • 雇用継続給付は、次のとおり(雇用保険法10条6項)
    • 高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金(第六節第一款において「高年齢雇用継続給付」という。)
    • 育児休業給付金
    • 介護休業給付金
  • 雇用継続給付の申請者は被保険者か事業主
    • 条文の規定上は、被保険者原則とも読める。高年齢雇用継続給付金について雇用保険法施行規則101条の5などでは、「被保険者」が主語。
      • (高年齢雇用継続基本給付金の支給申請手続)
      • 第百一条の五  被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款において同じ。)は、初めて高年齢雇用継続基本給付金の支給を受けようとするときは、支給対象月の初日から起算して四箇月以内に、高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書(様式第三十三号の三。ただし、公共職業安定所長が必要があると認めるときは、高年齢雇用継続給付支給申請書(様式第三十三号の三の二)をもつて代えることができる。第三項、第四項、第百一条の七及び第百一条の八において同じ。)に雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書(様式第三十三号の四。以下「六十歳到達時等賃金証明書」という。)、労働者名簿、賃金台帳その他の被保険者の年齢、被保険者が雇用されていることの事実、賃金の支払状況及び賃金の額を証明することができる書類を添えてその事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない。
    • もっとも、労使協定で、事業主が申請できるし(雇用保険施行規則101条の8)、事業主は助力する義務がある(雇用保険施行規則101条の9)。
      • (支給申請手続の代理)
      • 第百一条の八  事業主は、当該事業所の労働者の過半数で組織する労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者。以下「労働組合等」という。)との間に書面による協定があるときは、被保険者に代わつて第百一条の五第一項及び前条第一項の規定による高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書並びに第百一条の五第六項(前条第二項の規定により準用する場合を含む。)の規定による高年齢雇用継続給付支給申請書の提出をすることができる。
      • (事業主の助力等)
      • 第百一条の九  高年齢雇用継続給付を受けることができる者が、自ら高年齢雇用継続給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
  • 確かに、この事業主が、「個人番号関係事務実施者」か「代理人」かの解釈は、文字面だけを見ると、「関係事務」とも考えられる。しかし、申請者はあくまで被保険者で、労使協定によって可能になっている。労使協定によって、委任していると考えるのが自然なので、これは「代理人」が正しいと考えるべき。

注)弁護士は雇用保険手続を代理するわけではないので、実際の手続自体はやったことがありません。法律を見て、解釈を考えているので、その点ご了承ください。