ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

五泉市、マイナンバー対応条例否決

日弁連で教えていただきました。
新潟県五泉市で、マイナンバーに伴う個人情報保護条例改正、利活用条例を提出していたところ、9月7日に委員会で否決されたとのことです(新潟日報9月8日付記事)。本会議は9月18日とのこと。

新潟日報の記事だけ見ると、個人情報保護条例改正も否決されたのかどうか定かではありません。五泉市議会議事録を見ようと思ったところ、9月議会の議事録はまだ検索できないようでした。個人情報保護条例改正も否決されてしまうと、これは番号法に基づく義務なので難しいものがありますよね・・・

こういうことも踏まえると、またすべての団体で個人情報保護条例改正が発生するというのも非効率的なので、本来であれば、条例ではなく法律で対応すべきなのではないかと思います。

地方分権はもちろん大事だと思いますが、地方分権=条例策定義務というわけではないはずです。
法律の許容する範囲の横出し条例・上乗せ条例はどんどん活用いただいて、地方ごとの特性を出していくべきだと思いますが、全国一律のものは、法律化すべきではないのかなと個人的には思います。

行政機関個人情報保護法と同じものを地方公共団体にも適用として、地方公共団体の個人情報保護条例は、上乗せ・横出し条例とするとよいのではないかと思うのですが、どうなのでしょうか。

さらにいえば、行政機関個人情報保護法もやめて、官特有の義務を設けるのであれば、個人情報保護法の中で章を分けるなどして、規定するとわかりやすいかと思います。

五泉市の改正案を見てみたところ、利活用条例は、最低限の庁内連携(番号法別表第二相当)と、19条9号条例として市長と教育委員会の子育て関連事務のための情報提供ですね。庁内連携も19条9号ももっと数がある団体の方が多いように思いますが、最低限の庁内連携もできないとなると、全部住民に添付書類を用意してもらうということになるのですか。こういうことを考えると、庁内連携も、番号法改正時に法律に盛り込むべき事項のように思います。


<<H27.9.24追記>>
上記では感想だけ書いてしまったので、前提事実を記載しておきたいと思います。

個人情報保護条例改正が議会で認められないと、どうなるのでしょうか。マイナンバーを利用したり情報連携したり付番したりする番号法自体は、国会で成立して、施行されていますので、マイナンバー制度の導入を止めることはできません。これに対し個人情報保護条例改正は、行政機関等であれば番号法で規律されている、マイナンバーの取扱いの厳しい規制・保護措置を行うものです。これが認められないと、保護レベルが不十分なまま、マイナンバーを利用したり情報連携したりしないといけなくなります。具体的には、目的外利用が認められる範囲が広いまま、マイナンバーを利用できてしまうことになるかと思います。もっとも、番号法上、条例改正義務が課せられているので、条例改正を行わないこと自体が違法であると評価されうるものであると思います。

これに対して、利活用条例は、制定する義務は法律上ありません。なので、これは制定しなくてもよいわけですし、マイナンバーの取扱いに関する厳しい規制を規定する条例でもありません。しかし、利活用条例が議会で認められないと、マイナンバーによる住民利便性が下がってしまうことが考えられます。マイナンバーによる他自治体などとの情報連携自体は、国会で成立した番号法に基づき可能ですが、利活用条例が認められないと、その自治体内での庁内連携がほとんどできません。そうすると、マイナンバー制度によって、行政手続が簡易化するというメリットを、その自治体では享受できないということになってしまい、行政手続の際、住民に個別に添付書類を取得・用意してもらわなければならない場面がかなり多くなるということになってしまいます。

<<H27.10.7追記>>
委員会で否決されたものの、本会議では原案通り可決に転じたとのことです→私のブログ