ITをめぐる法律問題について考える

弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

川越市で講演しました


7月8日(水)に川越市で講演をしました。
川越市の幹部職員・一般職員向け研修としての講演でした。

講演の数が増えると実感するのですが、やはり実例が大事だなと思います。
番号制度の効果として、社会保障の充実などを挙げるのですが、抽象的に社会保障の充実と述べるだけではなくて、具体的に窓口業務や一般来庁者の負担等を踏まえて、それが番号制度によってどう変わるのかという話をする方が、わかりやすいかなと思います。

例えば、マイナンバーによって、今よりもきめ細かい社会保障給付が行え、また国民からの申請を行政がただ待つだけではなく、行政の側から積極的に国民にアプローチしていく、案内していくということが可能になるとよく説明していますが、より具体的に述べるとすると、

例えば、失業した方というのは、ものすごく気分がふさいでいるということが考えられます。そんな中、失業等給付を受けようと市役所に行ってみたら、ハローワークに行けと言われたり、かといって、保険料の減免はどこどこだと言われたりすると、なんでそんななんだとお思いになることもあるかと思います。

一方、それを受ける自治体職員にしてみても、制度がそうなっているので、市役所がハローワーク等への手続を代行するということは今は難しい場合が多いわけであり、そういう案内にならざるを得ないところもあるのかなと思います。

本来であれば、インターネットや広報誌・パンフレット等で、失業の際の行政サービスの一覧などがわかり、それによって全体像を概観できる形になっているとよいと思います。そして、自分が受けたいサービスの受け方がさらにわかりやすく説明されているとよいかと思います。

縦割り行政だと、なかなか個人の立場に立った説明が難しく、〇サービスはそれを所管している〇省で、別サービスは市でといったような形になってしまいがちですが、国のホームページなどでも制度横断的に、受け手である個人の立場に立って見やすいような政策・サービスの説明というのが努力されてはいると思います。

それが、マイナポータルを活用すれば、もっと、受け手である国民が欲する情報を適宜表示することができると思うのです。例えば、失業した方が受けられる可能性のあるサービス一覧を表示して、そこから支給要件に関する自分の状況を入力等していくと、さらに正確にサービス一覧が出てくるとか、あとはサービスの詳細な要件とかが、今の国や自治体のHPのように硬い文章というよりは、YesNoなどで選択していくとわかるようになるとか、もっと正確な「私向けのお知らせ」「私が受けられるサービス」がわかるようになると思うのです。

市役所のHPだと、ゴミの出し方とか福祉サービスとか市役所へのアクセスとか例規集とかさまざまな情報が掲載されているわけですが、ログイン制のマイナポータルであれば、ログインした人への画面のカスタマイズができるので、自分向けのお知らせを、前面に受け取ることができるようになるのではないかと思います。子育て世帯には乳幼児関連サービスなど、お年寄りには健康関連サービスなど、そういったものが前面に出てきたり、お知らせが表示されるようになったり、できるようになるのではないかと思うのです。

また、お知らせを受け取るだけではなく、ネットから行政サービスの申請・相談予約などもできるようになると便利だと思います。

もっとも、ログインしている方ごとにカスタマイズして情報を出し分けることは、その情報を受け取る方から見ると、国にそんなことをお節介されたくない、気持ち悪い、受けたくないお知らせを受け取りたくない、受けたくないサービスを押し売りされたくないなどといった、マイナスの感情を持つことも考えられるわけで、本人の同意を必ず要することは前提だと思いますが、それだけではなく、実際の制度設計にはもっときめ細やかな配慮というものも必要だと思います。

なんだかまとまりがつかなくなってきましたが、社会保障の充実、プッシュ型行政という説明だけではなく、もっと具体的に考えると、より良い未来につながる可能性がもっともっと考えられるし、でも反面難しい問題もあるし、制度設計は難しいとは思うのですが、せっかくマイナンバー、マイナポータルができるわけですから、一人一人が住みやすい社会となるべく、受け手である国民から見た使いやすさ、利便性、又はユーザビリティを考えていくべきだと思います。